フェリーニ!
この作品はどう見ても、ミハルコフのフェリーニに対するオマージュとしか思えない。温泉地でのゴージャスな白い色の演出、どこかつくりものめいた庭園の、ロシアの風景描写、あちこちに挿入される失笑ネタなどなど。 だからこそ、だからこそ、マストロヤンニなんですよ。そしてマストロヤンニは彼の俳優生命に華開かせてくれたフェリーニを思いつつ、その方法論と美学を最大限に謳いあげるがごとくの演技を見せてくれているみたい。ひとつひとつの表情のなんて豊かなこと!60年代ヌーベルヴァーグの頃とちっとも変わっていないように思えましたわ。
ドラマとしての原作はチェホフの短編小説ですが、こちらの方では男の心理の方に重点がおかれていて、女性の方がいかにも小さく、か弱く描かれています。でも私が一番感動したセリフ「あなたを愛してはいません。でも貞節は守ります。」というきっぱりしたのは原作にはなかった。これは決めどころで2回も使われるセリフなんだけどなあ。女性キャラはミハルコフの創作に近いのかもしれません。そしてその女がただ独り愛したはずのマストロヤンニは彼女を裏切った。哀しい現実の空回りがほんっとうに綺麗な光景の中で綴られていくのです。必見!!