東京暮色 [DVD]

松竹2005-08-27 - 松竹 価格 ¥ 2,199
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東京暮色 [DVD]

松竹

価格(new/used): 2,199 円 / 2,555 円 より
発売日: (2005-08-27) アマゾン売上ランキング: 81160 位
DVD / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 6件

珍しく徹底的に暗いホームドラマ
 男手ひとつで育てられた超美人姉妹に原節子と有馬稲子。淡々とした父親はもちろん笠智衆。現実にこんな親子がいたら、それはそれは幸せそうなもんだが、この映画では親子三人がそれぞれの立場で直面する「家庭」「親子」の難しさが扱われる。

 小津映画の多くは「ホームドラマ」として展開するが、その多くの場合、「家族」「親子」という要素は作品に温かみを与えるものである。しかし、この作品は他の作品と較べると「家族」の問題をストレートに扱っている分、非常にギクシャクしているし、ストーリーも重い。いつものほのぼのした小津ホームシネマを期待すると裏切られるので注意。

 重層的で良く練られた脚本、親子役3人と山田五十鈴(再会した母役)のハマった演技が見事な、悲しいホームドラマ。出戻っていた長女の終盤のエピソードなどは全く救いがない訳ではないが、それは「救い」というよりも、前を向いて生きる悲壮な「決意」のようなものだ。
なんとも不思議な後味
小津作品の中ではもっとも批評家受けが悪かった作品ですが、根強いファンがいて、名画座などではくり返し上映されていたという作品。 全体的に独特の暗さが漂っています。 さらに言えば、この作品には所々ちぐはぐな印象を与える要素が何の前触れもなくポンポンと飛び出してきます。 例えば、あのなんだかほんわかと明るいテーマ音楽。 杉村春子や藤原釜足の喜劇的演技。 これらはどうもミスマッチです。 何か新境地を開拓しようとしている時に、これまでの小津流を一部挿入して、外してしまっているという印象が拭えません。

にもかかわらず、この作品には独特の後味があります。 両親の過去に何があったのか、なぜ母親は家を飛び出したのかはっきり語られていないのですが、だからこそ、それぞれの登場人物たちが何か業のようなものを背負って生きていることが浮き彫りになっています。 ミスマッチの要素を削除して、ラストも無理やりあのような纏めかたにしなければ、確かに新境地を開けたのではないかと思えます。 ほとんどの観客が小津に期待するのは調和の取れた端正な世界なのですが、本人はそれを時々突き崩したいという衝動があったのではないでしょうか。遡ること10年前にも、“風の中の雌鶏”で、それをやっています。

それにしても有馬稲子の彼氏のオカマの様な話し方、警察署にいた下着ドロの女のような声、これらは一体何を意味していたのでしょう? 
悲劇の横で・・・
山田五十鈴の演じる母は、有馬稲子の次女から息子が死んだと聞いても、それほどショックを受けるわけでもなく、能天気だな。そういう神経だからこそ、子供置いて駆け落ちできるんだろうけど。

麻雀してる男友達も、妊娠騒動は深刻なのに面白そうに話してる。有馬が瀕死でも珍々軒のオヤジはヘラヘラ自分のことを話すばかり。生き別れた母とか、堕胎とかより、こういう他人の不幸は他人事というような非情な世間を描きたかったのだろうか?
小津映画ではもっとも暗い映画。山田五十鈴の名演技が光る。
小津映画は殆ど好きだが、この映画を見るとき躊躇する時がある。それくらい、小津映画には珍しく最期まで「暗さ」がつきまとうからだ。物語としてはシンプルだが、当時の時代感覚で子供を捨て、男と駆け落ちするなんて弁解の余地もなく、残された子供が恨むのは当然、そうした母と娘が偶然再会する。長女(原節子)はともかく、ろくに顔も知らない妹(有馬稲子)は絶対に許せない。和解することもなく、映画は悲劇的な結末を迎える。私は無声映画時代の数本をのぞき、小津作品はほとんどDVDで持っているが、この映画を見るときはエネルギーがいる。とにかく、小津映画には無駄な台詞というものがない。だから、俳優が上手いとリアリティやその存在感がいやがうえにも増す。この映画ではまず子供を捨てた母親を演じた山田五十鈴。本当に上手い。ついで有馬稲子も熱演だった。かって、小津監督はあなたの映画で俳優として4番バッターは誰ですかと記者にきかれた時、即座に、「杉村春子」と答えたらしい。山田五十鈴はこの映画の4番バッターだと思う。
有馬稲子はけっして笑わない
最初小津安二郎は、この作品の主演には岸恵子を想定して、シナリオを書き進めていたらしい。ところが、岸があのフランス人の映画監督と結婚することになって、それが不可能になったため主演は有馬稲子になってしまった。これに大いに落胆した小津はフランスに赴く寸前の岸に会って、泣きをいれたそうだ(笑)。

でもねえ、有馬さんの名誉のためにひとこと言わせてもらうと、有馬さんはハマリ役です。いまとなっては彼女以外のひとがこの役を演じることなど想像もできません。映画の最初から終わりまで、絶望の淵をさ迷い歩く彼女はただの一度も笑うことはありません。その絶望は、最初は自分を孕ませた無責任な男に、次に自分を捨てた母親に対して向けられ、どんどん深化してついには最悪の事態を迎えます。

その母親役の山田五十鈴が素晴らしい演技をみせる。有馬が自分の娘であることを知って何度か対話を試みるが、全く相手にされないし、彼女が死んだことを知って、近所の居酒屋でお酒を飲む場面の名演技は、まさに彼女の独壇場ですね。

他にも夫のDVに悩み、実家に帰る原節子や、相変わらずシブイ中村伸郎、やっぱり早世が惜しまれる高橋貞二、小津作品には珍しい藤原釜足など、見所多いです。そして必見です。