晩春 [DVD]

松竹2005-08-27 - 松竹 価格 ¥ 3,589
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晩春 [DVD]

松竹

価格(new/used): 3,589 円 / 2,600 円 より
発売日: (2005-08-27) アマゾン売上ランキング: 56592 位
DVD / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 5件

偏った見方?
ボク自身が凡人だからこそ普通でないものに憧れるのか、はたまた普段はストレートを装いながらも
自身の奥底に隠した倒錯性が共鳴するのか(笑)、“フィクションにおける倒錯”を見るのが好きである。
“淡々”や“静”と表現されることの多い小津作品だが、本作の抑えられた激情にはもの凄く倒錯したものを感じる。
それは娘(原節子)の、実父(笠智衆)への思慕や嫉妬の感情だからだ。
と言っても、その感情が一線を越えたり、あられもなく表現されることは、もちろんない。
だが、その炎は静かに揺れ、ときには激しく燃える。
そんなオンナ(ここでは女性とは書きたくない!)を演じる原節子は、軽やかに、淑やかに、そして妖しく輝いている。
小津監督は素晴らしい作品をたくさん残しているが、静かに激しい本作が一番好きである。
格調高い
戦後の混乱期に圧倒的な日本的美をたたえた名画として有名です。
起伏が無く淡々と進行するとよく言われる小津映画ですが、その中には時々はっとするような印象的な「動」のシーンがあるのです。
本作品では財布を拾った杉村春子が駆け出すところ、また結婚式のあと喜多川での出戻りアヤちゃんの感極まった行動がとても効果的に描かれています。
その他内容については今更申すまでもありません。
湛えられた美
 「小津の映画で何が一番か?」という問い合わせには いささか答えがたいし その質問自体にもあまり意味が無いと思う、とは「麦秋」のレビューにも書いた通りである。「何が一番好きか?」という質問であれば「麦秋」と答えることにしているが 本作はどうか。

「小津の映画で何が一番 美を湛えているか」
これこそが本作に最もふさわしい問いかけであると思う。

 何が美しいかというと まず原節子であるが 数ある小津の出演作の中でも原節子が最も美しいのは本作であると断言したい。特に花嫁衣裳で両手をついて 笠智衆に挨拶する場面は神々しいとしか言いようが無い。
 但し 本作の美は 美人の原節子だけではない。鎌倉、京都の風物の美しさも群を抜いている。清水寺がかように美しく かつ 楽しげに描かれている例を小生は知らない。ましてや 鶴岡八幡宮前で杉村春子が財布を拾う場面。つい 杉村のコミカルな言動に笑ってしまうが よく見ると八幡宮の舞台と階段が実に美しい。
 その他 全ての人が讃える 寝室の壺の映像などいくらでもある。実に美しい映画であると言えると思う。

 それにしても 白黒映画というのは ある意味ではカラー映画より遥に美しい映像を作りやすいような気がしてくる。観ている者に色の想像を掻き立てて 各自が「自分の美の基準」で 映像を見るからだ というのは言いすぎだろうか?
 

小津作品の金字塔
 小津作品の系譜には、この「晩春」以前と「晩春」以後がある、と言っても過言ではない、昭和24年製作の金字塔。そしてこれ以降の作品の多くに「変奏曲」として奏でられるさまざまなパターンを確立する。

そのパターンとは、
1.鎌倉または東京山の手の「中の上」の人々が主人公になり、生活苦にあえぐ人々は主人公にはならなくなる。
2.適齢期を迎えても嫁に行かない娘をかかえる家族の悩みが重要なモチーフとなる。
3.原節子を初めて起用。結果は大成功。以後小津組の常連となる。
4.笠智衆の「上品なフケ役」が確立する。
5.文学座のエース、杉村春子が初登場して円熟の演技を見せ、以後新劇系の芸達者たちが次々と登場する(中村伸郎、東山千栄子、東野英治郎etc)。
6.それと同時にそれまで小津組の常連だった、吉川満子、飯田蝶子、坂本武といったひとたち は出演しなくなる。

といったところです。ちなみに小津監督が原節子を見初めたのが、山中貞雄の「河内山宗俊」だそうですから、小津作品に出演にこぎつけるまで戦争をはさんで10年余り。この作品での彼女の輝くばかりの美しさを見れば、待った甲斐はあるというものです。
拾ったがま口は交番に届けましょう!
昭和24年(1949)作品、白黒映画、

現在では小津の代名詞的な素材であり後に繰り返し作品化される「嫁ぎ遅れそうな娘と家族」物語の第1作、資料によればこの年の松竹映画44本のなかで配給収入第9位、松竹の年間配給収入1位となった作品もある小津にしては中ヒットだったらしい、もっとも翌年の映画賞は軒並み受賞したことを忘れてはならない、東宝・大映などの作品を合計すれば本作以上にヒットした映画が数十本存在したことになり少々驚いてしまうのは評者ひとりではないだろう、

製作時、小津は46歳、すでに監督歴は20年を超える大ベテランであった、
再見すると、小津映画=静かな映画という定着した図式を裏切るような意外なほどにエネルギッシュな場面が多いことに気付かされる、とりわけ注目すべきは原節子の迫力である、劇中盤、父の再婚話がもちあがってから自身の見合いが済むまでの原の鬼気迫る迫力は一種のホラー映画の域にあるとおもう、昭和20年代の30才前の娘(現在であれば当然30代に該当しよう)の過剰な父親への執着を考慮すればなおさら恐ろしさが増す、

ジョージ・ルーカスが小津を「スローガイは嫌い」と評したと言うが、ルーカスが慕う黒澤明はアクション映画の演出にかけては世界一としても、小津が本作の原節子で成しえた演技者個人の迫力をフィルムに写し取るようなことを黒澤は唯の1シーンも撮影していないことは指摘しておかねばならない、同じく原の代表作である黒澤作品「白痴」での演技と本作を比較することを多くの映画ファンに奨めたい、