秋刀魚の味

松竹2005-08-27 - 松竹 価格 ¥ 2,704
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秋刀魚の味

松竹

価格(new/used): 2,704 円 / 4,380 円 より
発売日: (2005-08-27) アマゾン売上ランキング: 47610 位
DVD / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 8件

もう少し生きて貰って昭和後期あたりも撮って貰いたかった
主演の岩下志麻の美しさに魅せられて思わず見てしまった小津安二郎の遺作。テーマは婚期を迎えた娘と父の微妙な関係を描いており、晩春と麦秋が入り混じった様な作品。
背景は戦後の高度経済成長時代にさしかかった辺りであり、団地から出勤するサラリーマンの姿やオフィスの窓から見える強大な煙突から吐き出される煙が象徴的だ。
小津映画で一番気持ちの良い印象を与えてくれるのは言葉使いではないだろうか。特に挨拶や日常親子で交わされる会話など生活の最低限の規範が描かれていると感じる。
物質的に豊かになった現代、引き換えに失われたものを小津の映画に中に見つけることが出来る様な気がする。
異邦人のようにくどくどと祈るな。言葉数が多ければ聞き入れられるものではない。
昨今の日本のドキュメンタリー、たとえ非常に良質なものでさえ、
今まさに感極まって泣きそうだというときには
カメラはそれにあわせてアップになるのが常套手段でしょう。
ましてやドラマや映画となれば
盛り上げることができそうなシーンには浅ましいほどの勢いで食い付くものです。

それに対してこの映画。

例えば吉田輝雄が飲み屋で佐田啓二に
妹(岩下志摩)との結婚の可能性を聞かれる場面。
実はかなりの悲劇なのではないのでしょうか?

「ちぇっ、もっと早く言ってくれればいいのに、ほんとだよ全く」
と言いながら、吉田は「おーい、ビールもう一本」と叫ぶ。

こんなにすっとぼけたことを、わざとらしくもなく、ごく自然に撮るなんて。。。

例えば雰囲気は全然違うけどスウェーデンのベルイマンの映画を
初めてみたときは、人と人の葛藤のシーンの激しさ(たとえば夫婦喧嘩のシーン)に
ビックリしたものでしたが、この映画を初めてみたとき(小津の映画を初めてみたときでもあります)
逆の意味で唖然としました。

それと、こんな台詞も台詞まわしももう現在のような「美しい日本」(ケッ!)
ではとうてい無理でしょうね。
丁寧な映画
いい映画です。見れば見るほどいい映画だな〜と思わせる。細かいところが実に丁寧につくってある。ちょっとした台詞のない街のネオンだけの風景が構図色彩一幅の絵、またはポスターのようなレトロな感覚。

勿論台詞は全て暗記に耐えられる素晴らしい詩になっている。主人公の長男がゴルフのクラブを友達に借りて、欲しそうにいう台詞「いいんだ。これ、いいんだ。」横目で心配そうに、そして拗ねたように可愛らしく眺める新妻・岡田茉莉子が「あんた、買うの?(間)・・あたしだって買っちゃうから。(間)・・白いハンドバック。」

二年程前、ハーヴァード大学で篠田監督がこの映画とご自身の新作の解説をなさっていました。奥様の岩下志摩さんが、小津監督がなくなられた時、何か感じた。今先生になにかあったみたい。とかけつけられた。という話。

アメリカでの小津映画の評価は高いです。そこには「見る日本」があるだけではない。「感じる日本」、そして「つくる日本」があります。映画をつくる人々にとって真似の出来ない手法、手わざがあります。多分それはテクニックではなくて、小津らしい江戸っ子らしい心意気なんだと思います。
平凡だけど味のある秋刀魚のような映画
娘の結婚というありきたりな題材なのに最後まで
飽きさせない映画だった。
ほろっとくるところもあり、セリフにジーンと
するところもあり、もちろん笑いもあり、本当に楽しい映画。
出演している人、どの役にも味があって良い。
特に、末っ子の高校生か大学生の男の子が良い味出てた。

まず、何より出てくる女優さんがみんな本当に綺麗。
笠智衆さん演じる穏やかなお父さんが、本当に素敵。
娘の結婚式の夜の情景は、私は自分が娘だから逆の立場だったけど、
父親の悲しみと寂しさがすごく伝わってきて切なかった。
それでも一生一緒にいるわけにはいかないし、その別れも
喜ばなくちゃいけない、乗り越えていかなくちゃいけないもの
なんだよなぁって、最後笠さんの切ない背中を見ながら思った。
「晩春」と見比べよう
似たようなモチーフを繰り返し追究した小津監督ですが、本作では特に「晩春」との相似が強いと言えるのではないでしょうか。
妻をなくした男の娘の結婚問題であること、娘が心を寄せていた(結婚すると思われていた)相手の男性にはもう決まった縁があった、ヒロインの花嫁姿のお披露目、等々。
一見同じことの繰り返しである両者を見比べることによって、年代を経て小津監督の表現手法や関心のあり方の変化を味わうことが出来ます。変わった部分と変わらない部分。
しかし結局のところ、どちらの映画も妻を亡くしまた娘を送り出す老年の男の悲哀が第一のテーマであろうかと思います。神々しささえ感じられる笠さんの存在感が圧倒的なのです。