テオ・アンゲロプロス全集 I~IV DV...

紀伊國屋書店2004-06-19 - 紀伊國屋書店 価格 ¥ 11,500
home書籍CDDVDゲームソフトウェア家電キッチンおもちゃ・趣味
テオ・アンゲロプロス全集 I~IV DVD-BOX II

紀伊國屋書店

価格(new/used): 11,500 円 / 13,000 円 より
発売日: (2004-06-19) アマゾン売上ランキング: 3869 位
DVD / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 2件

幻のフィルム
ユリシーズの瞳。それは幻のフィルムを求めての旅。そしてフィルムは希求としての始まりの世界、つまりはこの世界の再誕を錯覚させる虚構としての20世紀の開始であるのかもしれない。かつて故郷を逃れたひとりの旅人は長いときを隔てて帰還する。変り果てた土地。開始される遡行と探索。凍てつくバルカン半島は悲痛である。ひとも建物も河もすべてが閉ざされている。あらゆる外界が静かな拒絶をもって、あるいは無視を装うかのように他者の眼差しでそこに佇む。歴史の夢が、記憶が、そして祈りがゆるやかに交錯する。民族、宗教、イデオロギー。ひとは多くの衣を纏っては次々と脱ぎ捨てていく。希望はいまだ宙吊りのまま冬景色のなかで凍結している。そのフィルムに果たして写っていたのは、原初の光であるのか、わたしたちは未だその答えを見出せないまま映画を観終わらねばならないのである。
アンゲロプロス抒情作の最高傑作
これはアンゲロプロスの抒情作が揃った「人類の至宝」的DVD─BOXです。国境三部作と謳われていますが、アンゲロプロス自身が連作を意識していたわけではないでしょう。それに、映画そのものを観るのに国境という概念に囚われる必要もないと思います。もちろんそれが主題の一つでもあるわけですが、往年の傑作『旅芸人の記録』などの叙事詩を歴史的に(文献学的に)読み解くのとは違って、ここには映画の快楽があります。エレニ・カラインドルーの哀しい旋律の音楽が何度も何度も反復され、映像それ自体が哀しい旋律になってしまったかのように切なく、痛々しい、凍りついてしまった風景が延々と長廻しされます。作家としては、あるいはこういう安直な技法は堕落なのかもしれませんが、ここには人間の「魂」の普遍的な形がはっきりと刻印されています。特に『こうのとり、たちずさんで』は、個人的にはアンゲロプロス抒情作の最高傑作だと思っています。カンヌで「無冠の帝王」と称えられたこの作品は、国境の河をはさんでの結婚式のシーンが有名ですが(こう言うと「ああ、あの映画か」と分かる人も多いそうです)何と、日本では劇場で公開されただけで、ビデオ化さえしませんでした。マルチェロ・マストロヤンニとジャンヌ・モローの三十年ぶりの共演という商業上の「事件」があったにもかかわらず、です。実は、僕はこのBOXを注文して買いはしたのですが、未だ観ていません。というのも、現在海外に滞在しているからです。僕にとっての「国境」は、案外こういうところに存在しているのかもしれません。