悪い奴ほどよく眠る

東宝ビデオ2003-02-21 - 東宝ビデオ 価格 ¥ 5,351
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悪い奴ほどよく眠る

東宝ビデオ

価格(new/used): 5,351 円 / 5,199 円 より
発売日: (2003-02-21) アマゾン売上ランキング: 6673 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 11件

汚職や腐敗を扱った映画としては、ストレートすぎるきらいもあるが、脚本の巧さと演出力で一気に見せる
 この映画に★5個の評価を与えるかどうかは悩むところである。これほどストレートに役人の汚職や役人を描くのは単純すぎるのではないだろうか、あるいは香川京子への三船の愛情は描かない方が(あるいは逆にもっとドラマの主軸の展開に絡ませても)よかったのではないだろうか、最後の場面で巨悪が姿を見せずに終わってしまうのは消化不良ではないだろうか、といった疑問の数々が常に頭をよぎるのも事実である。しかし、それでも何回も繰り返し見てしまう脚本の上手さと演出のダイナミズムに圧倒される。コッポラがこの映画が大のお気に入りというのも頷ける。一般的には黒澤明の失敗作(それでも普通の監督にはとてもこのレベルの映画は作れない)と評されることが多いが、生き物の記録」といい、この「悪い奴ほどよく眠る」といい何かに憑かれたような黒澤の演出力には脱帽する他ない。
あの電話は誰からかかって来たのか?
 私の知人で、政界に詳しい人が、私に、こんな事を言った。−−「政界って、本当に人が死ぬからね。『悪い奴ほどよく眠る』みたいな事が本当に有るからね。」−−恐ろしい話である。逆に言へば、この人のこの言葉の中に引き合いとして名が挙がる所が、この映画(『悪い奴ほどよく眠る』)の凄さであろう。
 オーソン・ウェルズは、或る日本人に、「黒澤明には、ハムレットの映画が有っただろう。」と言った事が有ると言ふ。この映画を指して居る事は間違いの無い事と思はれるが、興味深い見方である。又、ジャーナリストの江川紹子さんは、以前、自身のHPで、この映画(『悪い奴ほどよく眠る』)の結末で、主人公の新妻が、主人公の居場所を敵に教えてしまふ展開が、プッチーニのオペラ『トスカ』に似て居る事を指摘して居たが、これも、興味深い指摘である。オーソン・ウェルズも、江川さんも、興味深い事に気が付いて居る。
 ところで、最後のあの電話は、誰からかかって来たのだろうか?

(西岡昌紀・内科医)
いつの日のどの世界でも悪い奴こそ、よく眠る
善と悪、どのそしていつの時代の社会にもある、悪い=巧みな奴。癒着、共謀、自己保全、策略、得意な奴はいつの日にもいるものだ。政治にしてもローマ時代からすでに腐敗との共存共栄関係だった。悪い奴は時代が変わろうが、結局なくなりはしないのだし、いつも善と悪は隣り合わせにあるものなのだろう。しかし、本作品の結末は悲しいすぎるものだ。これが宿命なのか。黒沢の世界観とはこれなのか。それとも、善とは追い求めることであり、いつもほんの少しの距離で手の届かないものなのだろうか。または、それに向けて手を伸ばそうとする営みが、善そのものなのだろうか。明らかなのは、悪があるから善があり、善があるから悪があることではないか。
この映画の素晴らしいのは、エッジが立ちすぎるほどの登場人物の”立ち方”や、突き刺さるようなストーリー、迫真の描写と息を飲む展開であろう。画像の質やら映画自体が古いことなど、全く評価の圏外になってしまう。すぐれたコンテンツは画像の質ではない事の証明だ。まさに時代を超えて視聴されるべき映画で、ハリウッドの本場、アメリカでは評価が抜群に高いのであるが、日本ではなぜか過小評価にとどまっている。残念だが、宣伝広告の有無が日本の消費者の評価に影響を与えているのは、疑いがないだろう。広告に踊らされず、本当の価値のある作品を評価する風潮が高まり、本物の作品ほどよく眠る、ことがないことを願いたいものだ。
巨大すぎる悪
この映画には悪という存在がとても忠実に表現されています。巨大な企業のトップに君臨する男は、まるでそれがひとつの仕事かの様に、自分にとって不利な者たちを次から次へと死に追い詰める。しかもそれを自分の部下にやらせ遠回しにプレッシャーをかけて、確実に実行させる。この映画を見るとまるで善良な人間は上へはいけないのかと、錯覚してしまいます。「悪い事をして夜眠れなくなるのは、まだ半端な悪だからだよ」と悪を悪と認識しなくなった時、人はぐっすり眠っていくのでしょうか
凄い!
 今、自分の中で黒澤さんブームが起こっていますが、これも上位に挙げていい作品だと思います。これは、驚きました。監督さんがこんな映画も創られていたとは。日本映画にこんな凄い人がいたんですね。いや~声にもなりません。魂消た。これが芸術作品、離れ業…、形容しがたい。
 まず、その演出力です。監督も出演人も玄人の域に達したのか、その演技が流れるほど完璧です。カメラも計算されつくしたようで…、当時かなり余裕たっぷりに撮ったと思います。完璧です。振り返れば、これだけのものが創れるのも黒澤監督の黄金期。この創りのよさはなるほどなぁ~と妙に感心してしまう。
 このような黒幕を暴くような映画は過去にもありますし、ストーリーにそれ程驚かされることはありませんでしたが、これほどのテーマにしてぎこちなさが全くない。自然に撮影して、こうなったよ、というか全身の力が抜けてくるような感じがします。これは相当の力がないと描ける代物ではありませんね。
 人間、嫌な者でどこか変なとこを突きたくなるのも心情。しかし、この映画には見当たらない。完璧だ。
 こんな映画、ハリウッドでありましたか?いえ、この手の話によるものは多い。しかし、この演出力には到底及ばない代物ですよ。こんな凄いものを観てしまうと、ハリウッドの所謂告発物と呼ばれる作品が、オーケストラの大音量ばかりに頼っているちんけな代物にしか思えなくなるぐらい完璧です。
 現代の作家やジャーナリズムが少なくとも黒澤映画の影響を受けているとここで確信するほど。黒澤さんの作品って、『七人の侍』『用心棒』『生きる』が代表的ですが、こんな地味目の作品も、こうも淡々と描かれているとは、開いた口が塞がらない(サスペンス物は本来地味だが)。もしかしたら、駄作がないのではないか?全く持って奥が深すぎる。しばらく考えてしまいますね。
 誰しも持つ皮肉な運命の恐ろしさ。これは第1級のサスペンス。誰が本当に悪いんですか?