川島雄三作品。これは素晴らしい。1957年の作品だが全く色褪せていない。傑作。全く「もたれず」3回も観てしまいました。幕末の品川の遊廓「相模屋」を舞台に、居残り佐平次、高杉晋作、女郎たちの様々なストーリーが展開される。
居残りというのは遊廓の勘定が支払えない時に客がやったそうです.文字通り部屋に居残って篭城すること。居残りは「下下の下下(げげのげげ)」と廓では嫌われた。
フランキー堺が本当に素晴らしい。僕自身これほどまでとは思わなかった。佐平次のクレーバな所、ピカロな所、江戸っ子なところ、そして動きの素晴らしさ。運動量の多さ(カメラは縦横無尽にそれを追う)。着物を着る仕草。どれもがピタッと決まっている。芸者を揚げているときに、芸者から太鼓のバチをうばって、それをクルクル回す(このあたりはジャズドラマーらしい)。台詞回しに少し落語家口調が入っていたりする。
全体的に明るい映画だが、佐平次が結核を病んでいて、それが映画に陰影(とうか凄味)を与えている。
板頭(その廓で最も人気のある芸者)のおそめを演じた左幸子は野太い声が「品川女郎」を演じるのに適しており、絶品である。「青べか物語」、「飢餓海峡」での演技は、本作でのアクトが踏み台になっているのだろう。この人元々体育の先生だったそうだ。
他にも「相模屋」主人の金子信雄、その妻山岡久乃(川島作品の山岡は絶品である)、若旦那徳三郎に若い(!)梅野泰靖(芦川との風呂場でのシーンが素晴らしい。特に第一声が。ラヂオの時間では千本のっこのマネージャー役)、小沢昭一(若旦那への第一声が素晴らしい)、殿山泰司(太った殿山ははじめてみた)、岡田真澄、芦川いずみ(可憐)、高杉役の石原裕次郎、小林旭(台詞がわかんない)、二谷英明、菅井きん(上手い)、杢兵衛大尽役の市村俊幸(これは凄い)、南田洋子(きれい)など豪華な役者陣が脇を添えていて、アンサンブルも強力だが、それでもフランキーの素晴らしさが群を抜いている。これは本当に凄いと思った。
役者陣は時折芝居がかった口調をするがそれが上手い。三味線の合いの手が入るところはタイミングが絶妙。この「呼吸」は今出来ないだろう。
脚本は落語から着想をえている。いくつもの噺(4つか5つ)を使っており、それらのエピソードの集積からこの作品は出来上がっている。佐平次がそれらのエピソードにからみつつ進行する。どのエピソードも非常に良く出来ている。落語から上手く「頂いている」という感じ。
物語の最初の方に57年当時の品川が映る。それから、幕末の品川に変る。こういう手法は後の「青べか物語」でも使われている。遊郭という室内を主な舞台にしているが、後年の大傑作「しとやかな獣」も団地の一室が舞台だ。
それからカメラが下から上へ上がる動きをする時、やけに気持ちいい感触を受けた