野いちご

ハピネット・ピクチャーズ2001-07-25 - ハピネット・ピクチ... 価格 ¥ 14,800
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野いちご

ハピネット・ピクチャーズ

価格(new/used): 14,800 円 / 6,500 円 より
発売日: (2001-07-25) アマゾン売上ランキング: 39483 位
DVD / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 9件

secluded.
老人が人生を回想する場面が続くせいか、
すぐに「永遠と一日」を思い出したのだが、
完成度はこちらがはるかに上。
非現実のイメージを次々と繰り出すもっとも安易な手法といえば
やはり回想ということになるだろうが、
繰り出される回想的な場面それぞれの強度、喚起力の高さは他に類を見ない。
また軸となる年老いた主人公の悲しみに向けられたベルイマンの視線の厳格さは
この映画を特別なものにしている。
物語が終盤にさしかかった頃、弟の嫁が主人公に向かって
主人公の一族への絶望感を語る場面は圧巻で、
鑑賞者は、この男の抱えているらしい孤独や自己嫌悪が
成功者にありがちなナルシスティックな憂鬱の類とは異なり、
ひじょうに根源的で救いのない種類のものであることをはっきりと気づかされる。
その瞬間、鑑賞者はすべてから隔離された悲しみの核を見ることが出来る。

またこの映画は信頼について語っており、
世界に心を預けるとはどういうことなのかを問うている。
開かれた心を持たない悲しみを、主人公の弟は自覚的かつ直接的に語り、
対照的に、主人公は、それについてはほぼ無自覚のまま、
認識の死角から沸々とわきあがる不吉なイメージに翻弄され、
ひたすら回想と夢に自らをドライヴさせ、うろたえている。

いわゆる「誠実な」映画を好む向きは
この作品の派手さにうんざりすることもあろうが
私にはこの映画のサービス精神が心地よかった。
人生のむなしさとやすらぎ
 死を目前にした老年の教授。表彰式の朝、不吉な夢をみる。自分の棺おけが目の前にあらわれるのである。式場への旅の途上ではにがい回想にふける。社会的には最高の栄誉にかがやきながら、偽善にみちた、なんとむなしい人生であったことか。
 途中で車にのせたひとたちは、平凡に生きるひとたちである。かれらのおしゃべりが、教授になにかをもたらしたに違いない。さらに式典のあとで青年たちのあいさつをうけて、しだいに肯定的な気分になる。そしてやすらぎが訪れる。ひとの意識を映像化した稀有の作品です。
追悼 ベルイマンその名の響き
「野いちご」は、老人の名誉の授賞式に向かう車中がいろいろと内容濃いものの詰まりものだった。
キリコの街のような夢のエピソードがこわくて楽しい。
フロイト的でもあるイメージも満載だ。
ベルイマンが、まだ若いときなのに、こんなひとりの老人の精神風景をリアルに描くということに誰しも驚いただろう。
ぼくは半年ほど前にひさしぶりにビデオで見直してみたら、まさにそのとおり、どうしてこれほど切実感があるのだろう・・と数十年の時の流れも自らの精神の中に見つけたものである。
ああ、まだまだぼくは老人じゃないのですが(笑)。

この映画でも印象的な、息子夫婦の関係における夫婦、結婚における意地悪で悪意にも感じられるかもしれないほどの、男女の内部の真実をえぐりにえぐりつつも、
なぜかどこか普遍性を求めているとしか思えない愛への固執が、ベルイマンの、きっと神への問いかけとも通じるのかもしれない。
ご冥福をお祈りします。
孤独と向き合いつつ、楽しく生きることを描く
ベルイマンの代表作の一つで、内容も一番解かり易い作品です。老境に至った主人公が、車で義理の娘と共に叙勲受賞式へ向かう途中、自らの人生を追想するロード・ムービーです。ありがちな物語ですが、途中、若者男女三人、中年夫婦を同乗させ、さらには彼の母親の登場によって、5世代の人生模様を見せ、夢による自身の追想と現実、モノローグとダイアローグを織り交ぜて見事に物語っていきます。主人公とお手伝いさんの会話がウィットに富んでいて微笑ましいです。過去の良き思い出を宝物として抱きつつ(それは過去に固執していることを意味しない)、前向きに生きることを描いています。映像も美しく、どなたにもお勧めできる作品です。
ベルイマンの最高傑作−−若い人が、必ず観るべき映画の一つ
 世界映画史に残る、不朽の作品である。一人の老医師が、旅をする。その途中、老人は、夢と回想の中で自分の人生を振り返る。そして、そんな夢と回想に、旅の道中で道連れと成った若者達との対話が重なる。ただそれだけの物語の中に描かれる、この映画の情景と心理描写は、本当に深い。−−この作品を生んだ物の一つは、スウェーデンの演劇文化の伝統であろうか。
 これまで自分が観たベルイマンの映画の中で、私は、この作品が一番好きである。この作品には、ベルイマンの作品にしばしば見られる神秘的な場面や神についての形而上学的な対話は殆ど無い。むしろ、漱石の『こころ』を思ひ起こさせる様な、老人の若い頃の恋の回想や、黒澤明の『生きる』を思ひ起こさせる老人と若い娘と出会ひ等、人生における、非宗教的な光景が、美しく描かれて居る。
 若い人は、この映画を必ず観て欲しい。−−人生の意味を考える為の、素晴らしい書物の様な映画である。

(西岡昌紀・内科医)