山の道

- 八坂書房 価格 ¥ 1,890
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山の道


八坂書房

価格(new/used): 1,890 円 / 1,800 円 より
発売日: (2006-11) アマゾン売上ランキング: 14861 位
単行本 / 通常4~5日以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 3件

山の束縛
僕の血は山形県の朝日連峰周辺にある。
山暮らしの経験はないが、親戚はいまだに山の日陰に暮らす。
山の暮らしは秘密以外の何者でもない。
開けないのだ。
通り過ぎる人々から、わずかな金銭を稼ぎ、山の神の祭りで使う。
平凡で単調な毎日。まずかな日照時間。
社会から逃れた社会がある。

誰もが定住しない場所に住み、それでもなおかつ、生活できるだけの流動性を求めている。
山に住むものは、閉じている。
何かしらの秘密を共有し、村を守り、村に生きているに違いない。

山の道はその秘密にわずかな穴をあける。
平家落人伝説はどうやって生まれるか
 ダムの仕事をしていたので、日本あちこちの山間部で仕事をしたり住んだりしてきました。
日本の森林行政のツケかどうかは議論のあるところだが、日本の山村は今危機的な状況にあると散々聞かされ、沈み行く山村を実感してきた一方山村が大きくなったのは戦後であり、外地からの引き上げや山林ブームで爆発したのだという話も聞いた。
 この本は、実証派の巨人宮本常一が淡々と放ったホームランで、各地の山村の話がちりばめられ -私には和歌山の話が一番面白かった- 山村伝説、たとえば平家の落人などの虚構性などを爽快に吹っ飛ばしてくれる。
 うだうだ書きましたが、宮本常一に興味のある人ならこの本は読んで絶対に損しません。
山や自然への憧憬を甦らせる
市販の地図などを見ていると、山間僻地の集落に「秘境ムード満点」などと
赤地に白抜きで書かれていたりする昨今。
実際にそんなところへ行ってみれば、道路脇には
「ようこそ!秘境へ!」
などと看板が立つウェルカムモード。今や”秘境”の名は観光の呼び物ともなっている。
交通状況が飛躍的に発展したこの時代、人も物も飛び去るように行き来する。
日本にはもう、人跡稀な秘境というべき秘境はないと思える。

が、ほんの100年前まで平地とは違う”山の生活”は確かにあった。
この本は、そんな山の人々の姿を分かりやすく伝えてくれる一冊である。
無従の山村にひっそりと、それでいて自然と共生し、
のびのびと暮らしてきた人々の姿や、やがて侵食してくる権力との闘争の秘話。
狩猟採集に生き、山間を転々とした人々の足跡。
山と里のモノの行き来と、それを通じた人のまじわり。
現代、ローラーをかけたように均一化されてしまった日本の文化が忘れてしまった、
人々の息遣いを思い出させてくれる。

”山のあなたの空遠く、幸い棲むと人の言う・・・”
という詩にあるような、自然や、また未知の物に対する憧憬が、
現代人に甦ることはあるのだろうか。
そんなことに思いを馳せさせてくれる、人の匂いのする一冊である。