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雪 |
| - 藤原書店 価格 ¥ 3,360 | |
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雪藤原書店 価格(new/used): 3,360 円 / 2,750 円 より 発売日: (2006-03) アマゾン売上ランキング: 78881 位 単行本 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 9件 雪が降っているけっこう時間がかかった。重厚な本だ。そして今の時代の本で、トルコという国の本だ。 しっかりとその土地に根付いた物語で、ヨーロッパとトルコの関係、イスラム圏の中でのトルコの位置、トルコの国内事情がよく判る。 この本を読み始めて改めてグーグルでトルコという国の位置を確かめた。イラン、イラク、シリアに接し、さらにグーグルで地図が描けない国に接し、ヨーロッパ側ではブルガリアとギリシャに接している。そして舞台となる実在する町、カルスも眺めてしまう。 読んでいる半ばで映画「ペルセポリス」も見た。スカーフの存在の重さ。コーランに書かれていることと今の時代を生きることの乖離。決断の重さ。ヨーロッパに接しているからこそ起きる矛盾。 様々なことを包み込むように雪は降り、やがて止む。その3日間の出来事だが、それはとても重い。クーデターを中心にして不思議な渦が生まれていく。2項対立ではなく、様々な立場があるため、渦は思ったようには動かない。主人公は巻き込まれていく。 トルコを、イスラムを知るのにいい本だと思う。知識としてではなく、現実の有様を見て知るのに近いものだと思う。 トルコという場所についての作品。詩を書くことにしか興味が無い、主人公Ka。そのKaは、作者オルハン・パムク自身のスタンスを反映させているように私は読んだ(『父のトランク』でも、そのようなことが示唆されていた)。本書のメインテーマの一つともいえる、トルコという文化の境界的特性と、そこにおける筆者の置かれる立場(西洋的でありながらも東洋人)を巧みに作品として結晶化している。 安易にいずれかの立場に拠って立つのではなく、引き裂かれた状況下でKaは迷走する。主人公が特定の宗教や政治的立場に身をおいていないからこそ、この作品は、遠く離れた日本の我々にも共感を与えるのだ。 筆者の筆力も相当なもので、絶え間なく振り積む雪のように次々と新たな事件が起こり、読者を決して飽きさせない。構成も堅牢で、一々頷きながら読んでしまった。 ところどころに光る、筆致のクレバーさ、そして著者の真摯さは、信じて読むに価する作家であると感じさせた。ドスト、プルーストなんかの匂いも感じさせてくれる。 ただ、散散言われているように、やはりこの日本語訳は、読書の流れが滞る。校正ミスも目立つ。しかし半分くらいまでくれば、後はジェットコースターのように展開が進んでいく。そこまでの辛抱だ。 憂えるトルコ人はじめから終わりまで憂えるトルコとトルコ人がぎっしり詰まってました。 他のレビューを参考にして購入したため、読み始めは、誤植や訳のアラ探しの ようなことも頭のどこかで行っていましたが、そのうち忘れて小説の世界に 引き込まれていました。 何も解決してはいないのに、読後は嫌な気分になることもなく、 遠い異国の地方都市に思いを馳せてしまいます。 トルコ人作家がトルコとトルコ人を客観的に見てて、 ひとつの物語として楽しめるお勧めの本です。 不思議な読後感あまり小説を読まない方ですし、特にこのような厚い本は読まないのですが、これだけは吸い込まれるような感じで一気に読んでしまいました。遠い世界なのにどこか身近な感じのする不思議な小説でした。 よい作品にはしびれる魅力がある良質な文学作品は、きめの細かい炭酸飲料のように私の心の隅々にしみわたる。しみわたったあと小さな気泡をたくさんうみだす快感にしばらく身をゆだねていたいと望んだ。特に男の恋愛に対する率直な文章は、読んでいて恥ずかしいという感情が実は自分の心のどこかに触れているからだということを理解したあとは、なるべく恥ずかしさという壁を張り巡らさず、そのままの感情を自らに問うべきだと思い直した。恋愛感情によって極度なまでに盲目になりながらも、それゆえに繊細な心の状態を引き起こし、霊的ともいえる「詩がやってくる」という感覚は、自らの人生においても起きたのではないか。自動筆記のように言葉があふれ、それをなんとか書きとめていくだけが精一杯だったということがあったのではないか。しかしながら、それをこのような小説の形に完成させられるオルハン・パムクの力量に読後は感嘆するしかない。真実があいまいな形で過去に消え去ろうとするぎりぎりのところで、ミステリー小説としても読める解がキーピースとして与えられ展開の妙に引き込まれる。私たちが恋愛を考えるとき、宗教を考えるとき、幸福を考えるとき、故郷を考えるとき、芸術を考えるときに、複雑に折りたたまれた細かな感情の襞にこの作品の気泡は質の高い刺激を与えてくれるのである。 |