映像のポエジア―刻印された時間

鴻 英良 - キネマ旬報社 価格
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映像のポエジア―刻印された時間

鴻 英良
キネマ旬報社

価格(new/used): -- 円 / 6,900 円 より
発売日: (1988-01) アマゾン売上ランキング: 448896 位
単行本 / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 3件

濃厚な一書。
坂本龍一さんが、愛読書のひとつにあげていた本。

この中で著者タルコフスキーは、実に濃密に思考し、書き表していて、
いっきに読み進んでいくことができない。

「最も困難なことは、明らかに、自分固有の概念を創りだすことである。
 そしてそれがどれほど残酷なものであれ、その拘束を恐れることなく、
 その概念に従うことである」

「詩について言うならば、私はそれをジャンルとは考えていない。
 詩、それは世界感覚である」

「映画的映像の特質において絶対権を持つものは、
 ショットの中の時間の流れを表現しているリズムである」


彼が文章の中で取り上げる世界文学作品
(トーマス・マン、シェイクスピア、プルースト、プーシキン等々)や、
映画作品が、また魅力に富んでいる。

「もうひとつのショットあげよう。
 黒澤明の映画『七人の侍』のシーンである・・激しい雨。
 すべてが泥にまみれている・・ひとりの侍が殺され、倒れる。
 すると雨がこの泥を洗い流していく。彼の足は白くなっていく・・
 これこそイメージなのである」

「作家が純粋に形式的な課題を解決しているように思えながら、
 なにかある重要な課題に直面し、何か新しい視点を見いだしたりすること・・
 こうしたことは、彼が生涯育んできた理念に<触れた>とき
 はじめて起こるのである。このような作品の例として、
 もし、私が彼を正しく理解しているとしての話だが、
 ゴダールの映画『勝手にしやがれ』をあげることができるだろう」

「私の考えを明確にするために、ベルイマンから例をひとつ引こう。
 『処女の泉』において私がつねに感動するのは・・」

「『少女ムシェット』を思いだしてほしい・・」

「私は、前世紀に上演された天才的映画『列車の到着』をいまだに忘れることができない。
 すべてはこの映画から始まったのだ」


『映像のポエジア』では、
文中で具体的な映画作品への言及があると(タルコフスキー作品でも)、
ほぼかならずその場面や、その気配を感じさせる素晴らしいカットを、
そのページに掲載している。これはまったく素晴らしい。
芸術に関する聖書
他のタルコフスキー関連の本は手に入るのに、このもっとも重要な本が入手不可能であるということは、社会的な損失と言っていい。芸術に関して、また文明に対して、これほど正確に、かつ感動的に書かれた類書は存在しない。キネマ旬報社はこの本を購入可能にし続けることでその存在意義を証明して欲しい。写真多数で、日本語版は英語版よりも出来がよい。復刊が求められる。
映画とは、芸術とは。
映画を学ぶ人なら、いや、映画を愛する人ならば誰でも、一度は読んで欲しい本。 娯楽ではない、芸術としての映画作りを、真っ直に、徹底的に追求した映像詩人タルコフスキーが、映画とは何か、芸術家の使命とは何かを語りかける。

絵画や文学、演劇などの他芸術との比較の中から、映画の映画らしさを浮き彫りにし、それが日本の俳句に最も近いとする彼独自の理論が、キリスト教的人類愛と出会う 時、我々は東西も時間を越える、一人の偉大なる芸術家の、深遠な祈りのような思想に触れるのである。