アルジュナ、ドロップアウト

ユディスティラ・ANM マサルディ - めこん 価格 ¥ 1,890
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アルジュナ、ドロップアウト

ユディスティラ・ANM マサルディ
めこん

価格(new/used): 1,890 円 / 800 円 より
発売日: (1995-08) アマゾン売上ランキング: 1046712 位
単行本 / 通常3~5週間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 1件

ポップでワイルドな青春小説

 インドネシアのいいとこのぼんぼんアルジュナを主人公とした青春小説三部作の二冊目だ。前作「アルジュナは愛を求める」では、トヨタを乗り回す高校生のアルジュナは、二またならぬ三またをかけ、それぞれに冷たくしたあげく、心はそれとは別に父親の秘書に向かってしまうという、おまぬけな話だった。わがままで反省しない、女性に少しもやさしくないアルジュナにはとても感情移入できないけれども、これはいいとこのぼんぼんじゃなく、あんまりもてなかったやっかみだろうな。
 さて、「アルジュナ・ドロップアウト」は一転して舞台も両親の元から孫に甘い祖母のもとに移る。前作で傷心のアルジュナ君は祖母の元で大学を受験し、大学生になるのだが、今回は一転して女性にひどい目にばかり会う。なかなかいい気味である。さらに次の作品「アルジュナの結婚」では舞台は日本だそうだ。
 ところで、ぼくたちがこうしたインドネシアの小説を読んでいると、ふと、読んだことないけれど石原慎太郎の初期の小説ってこんなんだったのかなあって思う。当時、ヨットに乗るなんていいとこのぼんぼんだもんな。まあ今でもヨットなんて乗らんけど。そういった階級構造はけっこう日本も近いかなとも思う。アルジュナなガールフレンドとつきあっても、キスぐらいというところがかわいいし。日本の小説のように背伸びをしてないよな。ともあれ、インドネシアはフランスよりも日本に近いと感じる。まだ成長が行き詰まっていない一方で、抑圧が強い反作用は、香港・台湾映画にも共通するスピードとパワーを感じてしまう。世のビジネスマンはこれからアジアの市場だなんて言うけれど、こうした文化の感触ってどれだけ感じていることやら。
 本書の登場人物はすべてインドネシアの影絵芝居ワヤンの登場人物からとられている。ひらたく言ってしまえば神話物語のようなもので、インドの「マハーバーラタ」などがもとになっているわけだ。日本で言えば古事記が芝居として伝わったようなものかな。とはいえワヤンでは敵対していた男女が仲良くなったり、妻であるべき人物が冷たかったりとことごとくワヤンに反している。単純に言えば、この小説をもって世間の価値を破壊してしまいたい作者の欲求があったといえる。こんなことでも、映画化されたときは名前を変更せざる得なかったらしいから、芝居の人物とはいえ、社会的地位は高かった。
 ポップでワイルドな青春小説なんて、もはや日本では望めないものであり、何か主人公が好きになれないと同時に、パワーには圧倒されて、というより乗せられてしまうのであった。
 3作目も早く訳してほしい。


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