生きてみたい、もう一度―新宿バス放火事件...

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生きてみたい、もう一度―新宿バス放火事件 (新風舎文庫) (新風舎文庫)


新風舎

価格(new/used): 725 円 / 115 円 より
発売日: (2004-03-05) アマゾン売上ランキング: 206304 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 3.5 / 総数: 2件

被害者意識を超えて
 事件のことはよく覚えている。無差別に通りがかりの人々を巻き込む犯罪は、昔からあった。しかし多くは忘れられる。この事件は本書によって、もうしばらくは思い出されるはずだし、そうでなければ困る。
 今は犯罪自体よりも、被害を受けた著者の思考と文章の深さに強く打たれる。第4章 殺意
第5章 逡巡 など、圧巻である。著者は書く。
 
 「人が人を傷つけ殺していくことに、鈍感にならなければ、競争化社会を生きていくことができないとしたら、そしてそれが我々の日常性の中で黙許されているのが現実だとしたら、
・・・ すべての人は、法の前において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。
という、法のこの一節は、何によって堅持され得るのか。(p.156)

 とてもまともな思惟だと思うのだが、現代のブログに氾濫する紋切り型の、語彙の乏しい文章と、なんと違うことだろう。著者は自身の理性に照らして起きたことの全貌を把握しようとする。その途上で単純な「被害者と加害者」の図式を大きく超えていくのは、むしろ当然のことだろう。
 
精神機能が十全でない者の刑事責任
妻ある人との恋や賭けていた仕事が採用されない等の行き詰まり。そんな自殺願望がある時に新宿バス放火事件に遭う。しかし死が目前となると「助けて。生きたい」と魂が叫ぶようだ。体に火がついたまま車外に逃げ、10回の手術を経て一命を取り留める。結婚後も夫の仕事の借金のため、心中を図ろうと東尋坊へ行くが・・・。
精神機能が十全でない者の刑事責任に関して特別の配慮を行うことは、逆に責任すら持たせないという差別に値するのではないか、と問題提起している。
また犯罪被害者に対する支援についても考えさせられた。