知性の構造 (ハルキ文庫)

- 角川春樹事務所 価格 ¥ 714
home書籍CDDVDゲームソフトウェア家電キッチンおもちゃ・趣味
知性の構造 (ハルキ文庫)


角川春樹事務所

価格(new/used): 714 円 / 355 円 より
発売日: (2002-11) アマゾン売上ランキング: 73122 位
文庫 / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 8件

日本人の思考についてあらゆる視点を与えてくれます
これも必読。日本人の思考についてあらゆる視点を与えてくれます。特に海外と折衝する人など、精神のバランス感覚について考えたい人に。テレビで発言しているいい加減なエセ知識人の論法についての考察は面白い。若い頃仕事で海外に出てもっとも恥ずかしかったのは、自分の国のことをほとんど知らなかったことです。日本人の考え方を欧、米などと4軸で比較し理論的にまとめてある良書。"
歴史が依拠すべきもの足り得るために
 日本語論として慎重に断られてもいるが、本書で披瀝された著者自家製の図式自体はどうというものではない。ちょっと酷い言い方をすれば、複雑なはずの「知性の構造」が数理モデルとはほど遠い単純な図式により表現されているに過ぎない。読者は寧ろそんなことにはこだわらず、著者の本分である散文的健全性の中に公理とも言えるような、著者自身の全人生、全人格を賭けて彫琢された独自の思想的骨格をこそ確認すべきだ。特に近年の反米ナショナリズムの毒に辟易して常に前方にあった保守思想そのものを葬ってしまいたくなった読者には、改めて本書から入って保守主義が精神の右半分にあるのではなく、自己自身の中心に据えられてしかるべきものだということを見極めていく必要があるのではないか。
和製カント流定言命法的実存主義的平衡美の勧め
自由が価値の相対化を招き、真実が消失し、全体的風潮の中に個人が埋没し、自己喪失する、というのは、ある意味正しい。これは、とうの昔に、マックス・ウェーバーなどが予想したことだし、エリック・フロムなども論じた。さて、これは退廃とシニシズムを招来することになるが、西部流にいうならば、大の大人が通勤電車でエロ本を読むというような「恥知らず」な行動につながるということだ。何度か言及しているところをみると、よほど気に食わないらしい。素朴な疑問だが、例えば江戸期の日本人は、大衆の面前で枕絵を広げたりはしなかったのだろうか。とにかく、保守的言論人は、自由の退廃を嘆く余り、伝統の知に立脚した精神注入論に傾きがちで、西部もその例に漏れない。それは、マーケットの浸透による、人的・地理的境界の喪失に対する反動で、私からすれば「またか」という他ない。多くの図を駆使しているが、これは一部を除けば却って煩雑で、見ないほうがよいくらいである。結局「終章」だけを読めば事足りるが、消費する個に分解された日本人を正道に戻すためには、日本的伝統に基づいた節度を復活させ、その前提として、日本を堕落させたマスコミと、その共犯者たる知識人は断罪されねばならぬということだ。このような共同体復活待望論議は、私には単なる反動にしか聞こえない。学問の「蛸壺化」などは、丸山真男も論じたけれど、私も歴史学を専門とする立場なので、共感出来る部分はある。
本書の成果が、西部邁を他の全ての保守思想家から区別する
 西部邁の主著というべき本書は、福田和也氏の評を借りれば「人間が真面目に考えていくと、不可避的に保守的にならざるをえないということを……原理的に解明」した、「保守思想」の体系的な原理論である。

 本書が明らかにしたのは、ごく大雑把にまとめてみれば次のようなことだ。
 人間とは「言葉を用いた『真理への仮説的探求』」を宿命づけられた動物なのであり、「言葉による言葉への解釈」こそが人間精神にとって決定的に重要である。そして「解釈」のためには言葉そのものに秩序をあらしめ、その秩序(構造)について自覚的である必要があるのだが、その構造を分析してみれば、言葉というものは不断の「葛藤」に苛まれており、その葛藤を「平衡」させるべく新たな意味を無限に創出し続けるものなのだということが判明する。つまり人間の言葉(=精神=知性)は、ある意味で「危機」のただ中に置かれているのだ。そういった恒常的な危機のうちにあって、言葉(=精神=知性)に「平衡(バランス)」をもたらすという作業を可能にするもの……それが、歴史の英知を背負った「精神の型」としての「伝統」の力にほかならない。したがって人間は、「伝統」を頼りとして言葉(=精神=知性)の葛藤に耐え抜いていかねばならないという意味で、必然的に「保守的」たらざるをえないのである。

 本書においてこの「伝統」という言葉には、一般的な語感とはかけ離れた意味づけが与えられており、その意味するところを理解するのは容易ではない。たとえば「言葉の蓄積機能Aをその表現機能Eと尺度機能Mとにつなげていく範型(パラダイム)の全体をその内部から安定的ならしめている条件、それをもって伝統とみなす」という具合である。しかし、その理解こそが「保守思想」の一番のエッセンスでもある。本書に示された数々の図解をもってしても難しい作業ではあるのだが、真の意味での「伝統」(つまり我々が真に保守すべきもの)とは何なのかを探るにあたって、本書以上に役に立つものも無いのではないか。 これは知的に誠実であろうとするものにとって必読の文献だと思う。

図示されたからと言って簡単に理解できる訳ではない分野
本書は「知性の構造」、つまり著者の精神の在り様を84もの図を用いて述べたものである。x軸の+方向に原始的個人主義、-方向に相互的個人主義、y軸の+方向に伸縮的集団主義、-方向に硬直的集団主義をとり、第一象限に米国、第二象限に日本、第三象限にロシア、第四象限に欧州を配して文明の四類型を説明している部分などは比較的わかりやすい。しかし、大部分を占めている観念的・抽象的な記述はいくら図示されてもわかりにくく、私が理解できたのは全体の1/3程度だと思う。ただしこれは私自身の問題であり、哲学や思想書をそれなりに読みこなしている人にとっては理解しやすく書かれているような気がする。これまでに読んできた西部邁の著作が、政治や社会を具体的に論じたものばかりだった私にとっては荷が重かったのであるが、著者が求める知識人の在り方も十分理解できる。しかし、全てを理解していないものに☆5つを与える訳にもいかないので、一応この様な評価にした次第である。