真説 ザ・ワールド・イズ・マイン5巻 (...

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真説 ザ・ワールド・イズ・マイン5巻 (ビームコミックス)


エンターブレイン

価格(new/used): 1,344 円 / 1,100 円 より
発売日: (2006-10-25) アマゾン売上ランキング: -- 位
コミック / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 4件

総括的な感想
今まで読んだ漫画の中でこれほどまでに「痛み」をおぼえた漫画はないです。
子供に絵本を読ませるぐらいなら(絵本を否定する意味ではありません)この本を読んでもらいたい。
目の前で起こるバイオレンスは、現実のものではないのですが、現実におこりうるバイオレンスは日常と紙一重であることは現実で、僕らはそれでもやっぱり他人ごと、無関心だと気づきます。
人間という動物の奇形種は哀しいことに、たとえそれが本能の一部だと科学的に立証できても、バイオレンスに快感をおぼえている。
それが痛い。
この漫画がキライだという人も正しいし、この漫画が好きだという人も正しい。

というのが4巻までの感想で、4巻まではチカラの肯定の是非を読者に問いかける内容でした。
5巻はこの4巻までの青森という世界の縮図(ミクロ)を舞台にした問いかけの、5巻で描かれる世界(マクロ)を舞台にした作者の出した結論だと思います。
全ては繋がっているという言葉すらもただ、繋がっている世界だから生まれた言葉なのかもしれませんが、たとえ全てが繋がっていること(科学・理論などで語ることができるただの必然であっても)が根本だから「チカラ」というものがあるだけだとしても、この漫画が語る「未来」を想像したとき、それでも「チカラ」を肯定していいはずがないというメッセージなのではないかと思いました。
「チカラ」に対して抗うから、抗うための「チカラ」を使おうとするし、欲する。
チカラがチカラを生む。

深読みするならば、ザ・ワールド・イズ・マイン=世界はオレのモノと訳すよりも、世界は爆弾(マイン)であると訳すのもおもしろいかもしれませんね。

身近にある暴力と、世界的な暴力の根本は同じなんだけど、それをやっぱり諦めて受け入れることはできない。
と思っても、数分後にはすぐ忘れてしまうし、なんら行動に移すわけでもないし、無関心にはかわりがないとしか言えないのが哀しいですね。
因果地平へ
読者は、私もふくめ、物語の最後には、日常に回帰してほしいものです。
冒険に出たら、宝物を持って我が家に帰ってくると相場が決まっています。
そうしないと本が閉じられないから。

だから、この作品のラストに関しては、賛否両論あるでしょう。
しかし、「モン」が、作者である新井英樹の、性欲にも似た衝動そのものであり、
ヒグマドンが「力」という概念を超えた「ネイチャー」そのものである以上、
このラストは必然といえば必然です。

新井英樹に、
「この後も暴力マンガを描こう!」
という予定はなかったでしょうから、
この作品で、暴力がたどり着ける極限までを描かない事には、
描いた意義を見出せなかったのかもしれません。
極限とは、すなわち破滅であり、再生です。

これを受け入れられないと、この作品の評価は難しいと思います。

現に私も、トシモンもヒグマドンも去ったあとの「現実」がどうなっていくかに
興味があったので、最終話はどうかなあ、と思ったのですが、連載終了後、9・11テロをはじめ、
現実が軽くフィクションを追い越してしまう時代を迎えてみると、
フィクションとして風化しない為にはここまで描かないといけなかったんだな、と実感します。

そこで私が加筆修正で望んでいたのは、大統領の演説後の世界の描写です。
きっとそこをエグく克明に描きこむのだろうと思ったのですが、
詩的な展開を阻んでしまう為か、それは為されませんでした。

という事は、新井英樹が最後に描きたかったのは、叙情性なのでしょう。
現に、これと似たような終わり方をするフィクションはたくさんありますが、
これと同じような感動と衝撃を得られる作品は、そうそうあるものではありません。

宗教観ぬきにして、想像しましょう。この世界の終わりと、そして始まりを。
おもしろかった!
よくもこんな話を描いたものだと、びっくりしました。
作者の新井さんはインタビューで「壮大なる大ぼら漫画」と言ってみえますが、漫画でしかありえない設定を、非常にリアルに描いてあるため、この世界にどっぷりとはまり込んでしまいました。
人間の生死や神の存在、政治、法律、メディアの問題等、これでもかと盛り込まれているけれど、ちゃんと繋がってまとまっています。しばらく前に書かれたものですが、各種の問題は現実に顕在化してきている気がして、なおさらリアルに感じます。
残酷な描写が多いのは確かなので、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、その残酷さは物語に含まれた重要な一要素です。現実からかけ離れているようで、今の世の中にとても近いんじゃないかと思います。
人間くさい
私はもともとの原作を知りません。この「真説」で初めてこの問題作、大作に出会いました。出会って本当に良かった。
神がかり的な犯罪者モン以外は、みんなとても人間くさいです。作者は本当に人間を書くのが上手。漫画ですからそりゃ強調はありますが、その切り口がとても上手いのです。筋とは全く関係の無い、その人物に関する俗ネタやどうでもいいクセ…作者はそれをしつこいくらい丁寧に拾うのです。
たとえば、手旗信号のクセをもつ刑事、ハンカチで全てをぬぐわないと気のすまない刑事、心を閉ざした新聞記者の、下ネタばかり書き付けた小さな手帳、トシのさむいギャグ、テレビで重大な犯罪事件を報道しているときにセックスをする人たち、犯罪者に同調してその格好を真似する人たち、ヒグマドンを信仰する人たち・・・。すべてがくだらなくて、見過ごしてしまいそうな人間のクセであり、愚かな習性です。これが強調して書かれていると、不思議です、登場する人間がとてもリアルで、私に近しい人物に思えてくる。
そういうよくできた人物像があって、おもしろい筋がある。そうすると、世界のどこかにある、現実のドラマを見ているような気になります。現実のどこかに存在する、裏側の世界を垣間見ているように。あるいはいつか起こることの具現のようにも思えるのです。
シリーズ全体を通して、この圧巻のリアルな人間描写力と、ドラマティックな筋立てが私の心を強く掴んでいました。

シリーズ最終巻であるこの第五巻では、希代の殺人鬼であるはずのトシのかなり平凡な過去が描き出されています。その、なんという日常。私と何一つ変わらないのです。街をいくあの人とも、きっとそこまで変わらないでしょう。臆病で、少しのバイオレンス性を隠し持っていて…強さに憧れ、日常を憂い、恋をしたりもする…  モンに出会いその後めちゃめちゃになった彼の人生を思えば、ぞっとするし、とても切ないです。
一種の芸術か!?と思うくらい鮮やかな流れとテンポ。しかしこの漫画、本当にたくさんの人に読んで欲しい。内容はきっと「問題」作なんでしょうが、私は好きです。極限の人間くさいリアルさに、含まれている不思議な哀愁。時がとまったような瞬間。モンの見せるキラキラ目。後世まで残して欲しい名作だと思います。