イスラム報道

Edward W. Said - みすず書房 価格 ¥ 2,940
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イスラム報道

Edward W. Said
みすず書房

価格(new/used): 2,940 円 / 1,550 円 より
発売日: (2003-04) アマゾン売上ランキング: 179273 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 5件

イスラーム報道に関して
イスラームに対するアメリカの報道の誤りを鋭く指摘する一冊。

悪意を持っているとしか思えない報道の偏りを厳しく批判するが、テロリストの行動を正当化する論には決して与しない。

イスラームを理解するためには、まずこの本を読んでから個々のニュースに挑戦するべきである。

ただ、非難の語調が強く、私はやや食傷気味になってしまった
言説はいかにつくられるか
 他のレビュアーのかたも書かれているように、サイードの訳書はまず原題を見る必要がある。本書は"Covering Isram"。報道が却ってイスラムの真実(って何だろう?)を隠蔽する結果になっている、ということである。
 著者の代表作の一つ「オリエンタリズム」にはマス・メディアの話題は登場しない。なぜならば扱っている対象が現代に至るオリエント研究における言説の歴史的研究だからである。本書が扱っているのは逆にイスラエル建国以降におけるアラブ対イスラエル・西洋キリスト教圏の対立における言説である。つまり現代における「オリエンタリズム」が西側のメディアが作り上げていること、アラブ・パレスチナ側の政治的主張や戦争の実態においては公平に取り上げてもらうべき場がなかったことを示している。
 現在では「アル・ジャジーラ」のようなイスラム圏のメディアも知名度と信頼性を増してきているとはいえ、二度のイラク戦争に関してもアメリカ国内での報道の不正確さ、アメリカ国民の戦争に関する認識は実情と遠くかけ離れているらしい。BBCのような比較的中立的な報道はほとんど省みられていないらしいのだ。こういった現状において、サイードの主張がどれだけの現実味を持って受け止められているのか、疑問なしとしない。それは日本においてもまったく同じことが当てはまるだろう。
「偏向的イスラム論」批判
 『オリエンタリズム』『パレスチナ問題』につぐ第三弾。本書の性格を一言でいえば、欧米の、殊にアメリカにおけるイスラム報道やイスラム研究の偏向性を告発したものということができる。出版から四半世紀経っているので、用いられる資料は旧いが、その批判力は今日なお有効である、という意味で本書は「古典」である。 第1章では、欧米のイスラム観が、ジャーナリズムばかりでなくアカデミズムにおいても、政治的な枠組みの中に置かれていることが説かれる。「ニュース」とは、政府や企業に加えて、報道と学問が動員されて形成されるものなのだ。これはイスラム問題に限らず、今日の情報世界のあり方といえるだろう。 第2章は、79年当時のイラン革命を反映して、革命後のホメイニ体制下のイランに関するアメリカのメディアの性格を分析している。殊にアメリカ大使館人質事件で示された反イラン・キャンペーンの低質性、世界を親米か反米かによってしか見ることのできない単純性、都合の悪いことは隠蔽するという欺瞞性などが、事例をもとに暴かれていく。 第3章は、学問(知識)と権力との共謀関係から生産される「正統的知識」が、植民地主義時代からの遺物であり、そこに決定的に欠落しているのが、学問と権力の相互関係に関する分析であることが指摘される。そして「正統的知識」に対抗する「アンチテーゼ的知識」において、学問の政治性が問われ、そこから新たな展望が開かれることが期待される。 今日のイスラム報道には、脱欧米的な視点や批判が出てきているとはいえ、依然として欧米の巨大メディアが流す情報が、私たちのイスラム観を支配していることも確かだろう。そうである限り、本書はなおこうした傾向に警鐘を鳴らし続けている、ということができよう。
「イスラム」というステレオタイプ批判
イスラムを報道(cover)することはイスラムを隠蔽(cover)することだという強烈な洒落を原題(Covering Islam)に持つ名著。米メディアのイスラムのステレオタイプ化に批判を加えている。

話は変わるが、サイードはイラク戦争前のカイロ大学で講演をした。確かNHK-BSで放送されたはずだ。こんな人がいたのかと思った。カッコよすぎて涙が出た。Here is the battlefield! and Knowlegde is our weapon!と締めくくられたこの講演の直後、皮肉にもアメリカはイラクを爆撃した。

サイードは何を思っただろうか?おそらく、悔しくて引き裂かれる思いだったに違いない。その後サイードは精力的に活動していたが、流星が落ちる時に閃光を放つようにして逝ってしまった。

しかし、我々はそれぞれの場所で闘い続ける。サイードが遺してくれた著書はあなたに闘う勇気を与えてくれるだろう。そう、知ることこそが我々の武器だ。

ぜひとも原書を手元に
あまりにも早く逝きすぎてしまった人物の渾身の作品である。原書は文句なく
五つ星。残念ながら、この翻訳は読みこみにどうしても難儀してしまう。

アメリカ文学会の頂点に立ち、20世紀最高の批評家のひとりであるがゆえ、
原書はジャーナリストには手に余る文章だったであろうし、ゆえに訳者の
苦労は並大抵ではなかったであろう。ご苦労様。