憲法で読むアメリカ史(上) (PHP新書)

阿川 尚之 - PHP研究所 価格 ¥ 840
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憲法で読むアメリカ史(上) (PHP新書)

阿川 尚之
PHP研究所

価格(new/used): 840 円 / 330 円 より
発売日: (2004-09-16) アマゾン売上ランキング: 75047 位
新書 / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 9件

「合衆国」ってなんだろうと思った人に
合衆国という国家は、国家である前に理念を軸に造られた「システム」であることが、本書を読むとよくわかります。

英国を倒して「自由と平等」を取り戻すという崇高な理念を掲げた独立宣言。しかし英国を倒して団結する必要がなくなって、今度はそれぞれが独自の権利を主張する州をまとめて連邦を維持する為に、どうしても理念を一度棚上げにして現実的に機能する「システム」を造る必要が出てきました。本書には、このシステムの骨格である合衆国憲法が、時代の要請による解釈を通じて肉を得て、実体を持つようになる過程がとても読み易く描かれています。

上巻はリンカーンまで。そもそもリンカーン理解の為に読み始めたのですが、有名なゲティスバーグの演説から奴隷解放までの一連の彼の言葉が、彼個人の独創というより、「理念(独立宣言)」と「システム(憲法)」の建国以来のせめぎ合いの流れの必然であったことがよくわかりました。

付録は原文の合衆国憲法全文。原文の段階で解釈が様々あるわけで、訳してしまうとそれだけで翻訳によるバイアスがかかってしまう以上、憲法解釈の本に訳がないのは当然だと考えます。下巻の参考文献にある『アメリカ合衆国憲法を英文で読む』を読むと、合衆国憲法がいかに曖昧で柔軟にできているか、またそれゆえにいかに訳が困難であるかがわかります。

「憲法で読む」以上、通史としては分かりにくいところもありますが、物語として面白く書かれているのでここから歴史を学んでも悪くないと思います。とにかく面白かったです。読んでよかった!
個人的好みが出ているがやはり良書
僕は現在(2007年5月19日)この著者のゼミを取っており、じかにアメリカの憲法判例を読み込み、その判決が当時のアメリカ社会や政治に与えた影響などについての講義を受けています。そこから受ける印象は、やはりこの著者はよく言うと親米家、悪く言うとアメリカマニアで、ゼミ中も著者の趣味で話がややマニアックな方向に脱線することがよくあります。

この本もやはりその色を強く感じさせるもので、確かに歴史の転換点で生じた憲法問題や裁判の判決の論理について詳述している部分はとても興味深いのですが、著者の個人的な趣味から話がややマニアックになったりと、アメリカにそれ程興味がない人にとっては冗長に感じる部分が少なくないです。逆に、アメリカ好きにとっては、たまらない一冊とも言えます。
連邦最高裁判所の視点から
各時代にはそれぞれ連邦最高裁判所による重要な判決が出されています。
本書はその連邦裁判所による重要な判決を視点とし、アメリカ史を辿っていきます。

上巻ではまず、2001年のブッシュ氏の大統領選挙において裁判所が果たした役割について触れ、近年の連邦憲法と連邦最高裁判所について説明します。その後、時代を遡って建国期から近代までの歴史を辿ります。

本書の資料として嬉しいのは、上巻の最初にアメリカ合衆国全土の地図と州の誕生年月日が付いている事。これによって読み進めながら州の場所や全体図を確認できます。
逆に資料として物足りないのは、合衆国憲法が全て英文である事。和訳で憲法を読む必要のある人は、本書とは別に憲法の和訳を用意した方が助かると思います。
冒頭の「大統領選」のドラマだけでも読む価値有り
憲法で読む,ということは,実は,憲法の番人である連邦最高裁判所の判断がアメリカ史において果たしてきた役割を読み解くと言うことです。
上下二冊組のこの新書本が,読売・吉野作造賞を受賞し,先日,宮城県古川市の吉野作造記念館において,著者の記念講演が行われました。
講演の内容は,いわば,下巻の後日談で,ブッシュ大統領による連邦最高裁判事人事の裏話をとくと聴かせてもらいました。
上巻の冒頭で紹介される2000年の大統領選挙のドラマを読めば,大統領を決めたのが国民による投票そのものではなく,最高裁の判決であったという真実に触れることができます。
懐の深さの根底にあるもの
 アメリカ合衆国憲法が成立する以前に、アメリカ史は200年の歴史がある。いわば「前史」というべきこの200年を捨象する歴史を、果たして「アメリカ史」と呼べるのかといえば大いに疑問が残る。しかし、あらゆる意味で現代のアメリカは合衆国憲法との関係を抜きにしては語れない側面がある。その力の隔絶した優位性ゆえに単独主義、一極支配などと非難されることのみが多いアメリカだが、少し俯瞰してみると、結果としては〈いい線〉に落ち着くところがこの国の懐の深さでもある。そういうアメリカがなぜ成立しているのか、あるいはしてきたのか。そこには、法治主義の精神を根底に据えてきた歴史がある。そこに視座をすえてみと、本書は格好の材料を提供してくれる。
 アメリカは、君主制の専横に抗して戦った共和制を建国の原理にする国家であり、権力の独占を否定することを国是としてきた。三権の牽制がもっともよく機能してきた国でもある。とはいえ、司法権の行政権に対する位置は、権力を行使する〈力〉をもっていないことから、時には腹立たしいほどに〈無力〉である。そうした無力さを抱えながらも、アメリカの最高裁が果たしてきた役割を、本書はそのときどきの画期をなした判決を素材として取り上げ、アメリカ史全体に果たしてきた意味を解説してくれる。前述したように「アメリカ史」として読むには不十分だが、現代アメリカを知るうえでは参考となるだけでなく、三権分立という民主主義を支える牽制構造がどのようにあることが必要なのかを知る意味でも、本書は格好の問題提起をしている。


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