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イン・ザ・ペニー・アーケード (白水Uブ... |
| Steven Millhauser - 白水社 価格 ¥ 998 | |
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イン・ザ・ペニー・アーケード (白水Uブックス―海外小説の誘惑)Steven Millhauser 白水社 価格(new/used): 998 円 / 540 円 より 発売日: (1998-08) アマゾン売上ランキング: 151400 位 単行本(ソフトカバー) / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 7件 スノードームのような世界まるで、スノードームのような作品。 「物語」というよりは、「作品」と呼びたくなる。 小さく細密で、その世界はこのうえなく美しいのだけれど、同時に世界はそこだけで閉じていて、孤独でもの悲しい。 19世紀は、幻燈や映画などが登場した「光の時代」であり、また「大衆化の時代」でもあった。 「アウグスト・エッシェンブルグ」は、大衆化していく時代の、芸術家の孤独さと矜持を描いている秀作である。 失われていくものへの夢やロマン、ノスタルジアは、感傷的に過ぎてあまり好きではないのだが、ここまで徹底的でしかも完璧だと、いっそ見事と脱帽してしまう。 それくらい、職人的な細密描写と、この時代の雰囲気が、うまく描かれている。 過去に見た景色遠くに見えるディーゼル列車のスピードは遅く、 小学生の足でも追いつけそうだった。 十字路から5本目の電信柱まで、誰もいない農道で、毎日列車と競争をした。 大声援が聞こえ、勝者への祝福さえも聞こえてきた。 走りきった後、すぐには息があがって、答えられない。 けれど、小さなガッツポーズでその拍手の音に答えていたりした。 あのまま、どこまでも走り続けていたのなら、 孤独にして無敵の、マラソンランナーになれたはずだった。 天才からくり人形師の人生を描いた「アウグスト・エッシェンブルク」が、抜きん出て素晴らしかったその道の名人が、精魂込めて作り上げたガラス細工の陶器のような作品。冒頭の「アウグスト・エッシェンブルク」が、収録作品中では群を抜いた出来映えで魅了されました。 十九世紀後半のドイツ。からくり人形の天才的な作り手、アウグスト・エッシェンブルクの人生を、映画のフィルムが回るように映し出して行くストーリー。芸術と卑俗なものとの衝突、夢の成就にひた向きな芸術家の信念とジレンマ、時代の流れに浮きつ沈みつする人生。そういったモチーフが、鮮やかに文章の中に盛り込まれていたところ。素晴らしかったなあ。 物語の最初のほう、十四歳の誕生日を迎えたアウグストが、父親のヨーゼフと入った緑のテントの中で自動人形に魅せられてしまうシーン。彼とからくり人形との運命的な出会いを描いたそのシーン辺りから、魔術的、蠱惑(こわく)的な魅力を持つ話に夢中にさせられましたね。文章によるデッサンが実に精緻で、静かな気品をたたえていたのも味わい深く、好ましかったです。 この珠玉の名品のほか、「太陽に抗議する」「橇(そり)滑りパーティー」「湖畔の一日」「雪人間」「イン・ザ・ペニー・アーケード」「東方の国」を収録した一冊。 柴田元幸氏の訳文は、とても読みやすいものでした。 描写フェチ・ミルハウザーの世界に酔う「マーティン・ドレスラーの夢」(白水社)で、濃密に延々と書き込まれるホテルの描写に唖然としつつも陶酔感を覚えたぼくは、「あの世界」に帰りたくなって本書を手に取った次第である。現実と非現実の境界を華麗に行き交う独特な世界観は本作でも如何なく発揮されている。19世紀のドイツを舞台にした中篇小説では、時計を動かす歯車の仕組みから始まって世にも不思議なからくり人形たちまで、それらの「モノ」たちの美しさ、妖しさにうっとりしてしまう。札幌雪祭りをひとつの町で丸ごとスケールアップして狂気的に行ってしまう短篇では、加熱する作品の競い合い、その個々の完成度にクラクラと眩暈がする。オリエンタルな国の博物記といった具合の作品では、そこで語られる幻想的な数々の事象にとりとめもなく惹かれ続けるのであった。 ガラス玉の向こうに「ペニー・アーケード」とは、小銭1枚(=1ペニー)で遊べる、遊園地のゲームコーナーのこと。子どもの頃、誰もが時がたつのさえ忘れて夢中になった不思議な空間。あの胸弾む感覚が、この本の中にはびっしりとつめこまれている。しかも、とてもエレガントに。第一部にあたる「イン・ザ・ペニー・アーケード」では、少年時代、小さな町のほの暗い博物館の片隅で、一枚の動く絵に心を奪われてしまった、天才からくり人形師の生涯が描かれている。時代という名の大きな流れに立ち向かった彼の背中は、透明なガラス玉のように美しい。 |