インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説...

Antonio Tabucchi - 白水社 価格 ¥ 893
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インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

Antonio Tabucchi
白水社

価格(new/used): 893 円 / 103 円 より
発売日: (1993-10) アマゾン売上ランキング: 87316 位
新書 / 通常3~5週間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 13件

カルヴィーノ的な「軽さ」に満ちた傑作
だいぶ前に初めて読んだ時は、
謎めいた暗示やイメージに満ちてはいるものの、
思わせぶりなだけでとくに何かが起こるというわけでもない、
短くて軽い小説としか思わなかったような覚えがあるが、
今回、何度目かに読み直してみて(短いからすぐに読める)、
他にも何人かのレビュアーが述べているように、
上等の酒をごく少量だけ口に含んだような、
独特の味わいがあると感じた。

この何も起こらない短い作品の中に、インドという国の
エッセンスのようなものが含まれていると感じるのは、
インドについて誰もが語る極度の貧困や不潔さと、
贅を凝らした超高級ホテル(タージ・マハルやオベロイは、
世界的に見ても五つ星だろう)の調度や料理の華やかさが、
ほとんど等価のものとして取り扱われていて、
美と醜が渾然一体となったインドという広大な迷宮を
夜の夢の中でひたすら彷徨い続けているような、
ひどく曖昧で捉え難い雰囲気が生み出されているからだろうか。
主人公が登場人物と交わす会話には、
形而上学的な話題も多く登場するためか、
どこかボルヘスの作品を思わせるような、衒学的な感触もある。

インドという「重い」対象を扱いながらも、
カルヴィーノが言うような意味での「軽さ」を、
これほどの水準で達成している本書は、紛れもない傑作だと思う。
不眠、旅、展開
この小説のテーマは不眠と旅。章ごとに場面は変わっていく。
テンポ速く移りゆく。

旅による移動がストーリー展開と絡み合い、
テンポの速い印象を 与える。
日は沈む。太陽はこっそり昇り、いつの間にか
深夜に なっている。現実=昼に帰ろうとしても、
すぐに夜に引き戻されて しまうかのようだ。
インド-ポルトガル-イギリス-神秘主義。
そして インド。不思議な旅行記だ。
「僕」の旅日記であり、小説であり、
そして内省である。
インドに行きたいですねぇ
隣のバングラデシュなら行ったことがあるのですが、やはりインド亜大陸とよばれるほどに
色んなスケールが大きいのでしょうね。そして深い。夜想曲とあるように夜の時間がゆっくりと流れ、伝統に集まる虫の羽音にため息が出ます。インドといってもとても広いので、冒頭にホテルのガイドがあるのは足跡をたどれるのでとても親切な行為だと思います。あー、インドに行きたい。
不眠でインドを旅してみれば
「これは、不眠の本であるだけでなく、旅の本である。
 不眠はこの本を書いた人間に属し、旅行は旅をした人間に属している」(はじめに)


この物語は、インドの旅行記と評するのも、夢現交じりの幻想物語と評するのも、どちらも少し言葉が足りない。
おそらくそれは両方なのだろう。

主人公は、自分で物語を作り上げ、その物語の中を旅する。
作者と物語りの境がなくなって、鏡の中の鏡のように世界が一気にゆがみ、正しい平衡感覚が保てなくなる。
その倒錯した空気が、インド独特の、夢と現実があいまいになったような雰囲気の中にうまく溶け込んでいる。

全体にどこかふわふわとした現実感のなさがあるのだが、時折汗のにおいやゴキブリのざわめきなど、はっと目が覚めるような場面があったりする。
寝たり起きたり、ぐらぐらと揺れる世界は、まさに「インド」「夜想曲」ではないかと。
この世にじっさいにある迷宮
神秘的で暗い迷宮がこの世のどこかにあって
こわいけど行ってみたい、と安全圏にいて思っている方には
この小説はとても魅惑的かもしれません。

クリアな世界と論理的ストーリーはないかもしれません。
贅沢なキャンディーをゆっくりと舌でころがすように
小説を味わいたいと思う方にはちょうどいい本です。

私は旅の途中、列車のなか、飛行機のなかでこれを読みます。
そしてじぶんの家にいても。どこでもこの本のなかの世界は一緒です。