市場対国家―世界を作り変える歴史的攻防〈...

Daniel A. Yergin - 日本経済新聞社 価格
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市場対国家―世界を作り変える歴史的攻防〈下〉

Daniel A. Yergin
日本経済新聞社

価格(new/used): -- 円 / 345 円 より
発売日: (1998-11) アマゾン売上ランキング: 153809 位
単行本 / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 14件

10年たって読み返す本。
本日(2008年7月7日)は洞爺湖サミットの初日にあたる。この本が出版されてからちょうど10年がたつ。
実は上下巻のうち、上巻は購入直後に読んでいたのだが、恥ずかしながら下巻は読まずにそのままでいた。その間のこの本に対する感想は、「要するに市場は国家に勝ったのね」ということを言いたいのだろう、と思っていた。
最近ふと、下巻を取り出して私の大きな誤読に気づいた。筆者たちは社会主義の消滅から資本主義礼賛を唱えているのではない。市場と国家の関係は常に変化し見直されている。特に第13章信認の均衡、「五つの規準」がなんと素晴らしいことか。市場と国家の今後の関係を占ううえで、例えば、「公正さが保たれているか」要するに格差問題、「国のアイディンティティを維持できるか」つまり外資系ファンドに対する感情、「環境を保護できるか」「人口動態の問題を克服できるか」つまり高齢化に伴う年金と健康保険問題、を指摘している。
まさに2008年の日本の課題をここまで的確に占われているとは驚きである。この事実をとっても、この本は単なる一過性の経済本ではなく、節目節目で読み返すに足る書籍であることを感じた。
政治と経済を考える上での入門書
少し古いが、政治と経済の関係を考える上でまず最初に読むべき入門書。資本主義と共産主義の戦いの中で、如何にして政治と経済が発展してきたのかがよく分かる。我々若い世代にとっては当たり前のように考えている資本主義も、わずか数十年前には共産主義に駆逐されようとしていたというのは興味深い。

個人的には、この本で紹介されているフリードマンが言ったという言葉・・・「考え方」というものは、一般に考えられているより遙かに大きな力を持っている・・・に全てが凝縮されていると感じた。
国家主義の時代20世紀を縦横に論じる
原題はcommanding height(管制高地)。管制高地とは、20世紀、とりわけ1930年代以降、各国にさまざまな形で埋め込まれた国家主義的規制や介入の総称である。混合経済、社会主義経済、開発主義などのレジュームによる、市場への介入、重要産業の国有化、等々である。上巻では、二大戦以降の大陸ヨーロッパの混合経済システム、米国のニューディール改革の登場、第三世界の開発主義体制という、各々国有化、規制型、また国家による市場への系統的介入による輸出主導型経済と、それぞれのcommanding heightが描かれていく。さらに、サッチャリズム、東欧崩壊、アジアの虎の台頭、中国の市場経済化という、今日の新自由主義グローバリゼーションへの軌跡が描かれ、下巻へと続く。
下巻では、ラテンアメリカ、ソ連、欧州、そしてアメリカ。確かに、「非効率」な国家運営は、世界でのきなみ、民営化されていった。政府はガバメントからガバナンスに移行した。
だが現在、左派政権が席巻するラテンアメリカでは、ふたたび管制高地がきずかれつつある。決してもとにもどることはないとはおもうが、著者らが予想した以上に、市場の経済的・環境的不公正が露呈してきていること、地域的に埋め込まれていた「金融危機」=恐慌がかつてのようにグローバルに発生しかねいない現状では、21世紀も、当面、市場対国家(福祉国家)との綱引きはつづきそうである。
小泉改革を考える
 長大な内容であるが、論旨はきわめて単純明快である。「ケインズ流の財投による大規模公共事業では経済の建て直しは不可能。市場原理を信じ可能な限り民営化と規制撤廃をしてゆくことが経済成長と失業対策への唯一の道である」ということだ。
 この視点は、ニュー・ディール以来の「大きな政府」があまりにも効率を無視していたことへの世界的な反動から来たものだと思われる。政府の機構は年々複雑化・巨大化する傾向にあるので、それを抑える方向としてはやむを得なかったのではないか。ケインズ政策そのものの有効性を否定しているわけではないと考えられる。
 さて、この立場からわが日本の構造改革について考えると、どう考えても第一に手を付けるべきことは郵政ではなく(すでに公社化されているのだから民営化の必要すらない)巨大な国債発行による財政赤字と膨らむ年金の未徴収額である。国債発行額を厳密に制限し、一度に償還できない巨額の国債を少しずつ減らしてゆくこと、そして年金の税方式への転換である。また税収として定率減税の廃止ではなく法人税の引き上げと所得税の累進強化が本筋であると思われる。
 最後に、本書の終わりに述べられた「五つの基準」は大変妥当で参考になる。問題なのは、本書でも触れられているように、安定した投資以外のさまざまなデリバティブや為替相場の投機的な動きにどう対処するかであり、それが今後の国家の課題のひとつになるだろう。
一言
目新しいものなし