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脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見... |
| Semir Zeki - 日本経済新聞社 価格 ¥ 3,675 | |
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脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見た世界Semir Zeki 日本経済新聞社 価格(new/used): 3,675 円 / 2,310 円 より 発売日: (2002-02) アマゾン売上ランキング: 91381 位 単行本 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 4件 発生の謎視覚脳と美が実は等価である、というような議論は、感覚的には共感されるものだ。 しかしながら、本書をもってしても −Zeki自身は答えを持っているのかもしれないが− 結局 、ならばヒトの脳はなぜ美が世界に存在することを知って発生したのか? ということは解らなかった。 翻訳が生硬なのか原文がくどいのか? 読み進めるのはかなり苦労する。 特に解剖学的、生理学的事実の文献上の基本的叙述を引用するところでたどたどしさが拭えない。 記述が重複する箇所、迂回する箇所が目立つ。 失礼を承知で書けば、おそらく大脳生理学者である著者が自明としていることが、 知らない人々(訳者グループ、全ていわゆる文系の心理学畑の人々と思われる)にとっては自明ではないからだと思う。 脳科学と美学のスリリングな融合脳科学と美学の融合を試みる画期的な書。 全編カラーで、訳もこなれており読みやすい。 脳科学的には、「ものを見る」というのがどのような活動なのかが分析されている。 これまでの「目でものを見て、脳で情報処理する」という考えを否定し、「ものは脳で見ている」と主張する。 そして脳の各部位によって、色、傾き、動きなどに固有に反応する。 しかし、こうした脳科学の最新の見地は、実は画家によって経験的に知られていたのだ。 画家は知らず知らずに、脳科学的に見れば最善の構図であるような絵画を作っている。 そしてミケランジェロやフェルメール、モネなどの絵画の魅力・特色を脳科学的に分析していく。 個人的には、モネの連作『ルーアン大聖堂』を一箇所に集める企画はいつかやっていただきたいものである。 さて本書は、全体としては脳科学を前提とした美学へのアプローチということになっている。 しかしこれは、科学によって芸術を飲み込んでしまうのではなく、むしろ逆に科学の限界性と芸術の本質性が現れているように思われる。 なぜなら、脳科学がつい最近にならねばわからなかったことを、画家はとっくの昔に経験的に知っていたのだから。 このことは、科学的にはわかっていない経験的な知識の重要性を明らかにしていると言える。 科学は、おそらく画家のはるか後ろを追いかけることしか出来ないだろう。 美術と脳が同じとは!美術と脳はじつは同じようなものだという、考えてもみなかった論を証明していく。もうちょっと厳密にいうとこんな感じ。「美術画家は美を追い求めるときに、余計なものを捨て去る。脳もまったくこれと同じことをしている」 つまり、脳は「印象」を情報としてストックし、本質(プロトタイプ)をつくりあげていく。同じように、画家は脳の中のある風景の「印象」を、カンバスに反映させていくのだと。 とくにおもしろかったのは、線というものを脳がどう捉えているかの話。 脳科学と美術というふたつの分野にまたがっているけれど偏りはなし。著者は脳科学のほうを専門としているが、そうとう美術への造詣も深い(謙遜はしている)。こんな著者だったから、こうした本も書けるということか。 読みやすさはピカいち、シロートでも大丈夫著者はまえがきでこう定義する。「美術の機能は脳の機能の延長であると考えている。すなわち美術は、絶望的なまでに素早く飛び去って行く瞬間を捉え、それを永遠のものとして、私たちにその知識を与えてくれるのである。」と。この言そのものが十分に詩的かつ美的で読みごたえを感じさせる。 内容は、脳の「視角」部分が絵画のいろいろな側面をいかに捉え、それを見る人間がどう認識するかという経路についての解説だ。それは必ずしも絵の構成や色彩にとどまらず、たとえばフェルメール作品の曖昧さがかもし出す魅力、脳内に蓄えられた視覚的記憶に対するマグリットの挑戦などまでも含まれる。 特にキュビスムに関する分析は、あまりこういった傾向の絵が好きじゃなかった私にとっても面白かったし、直線、平行線、各種の図形認識についての項は、かなり好きなマレーヴィチ、モンドリアンなどが取り上げられているので興味深く読めた(でも、何でここまできてクレーがないんだ?)。 副題にある「ピカソやモネがみた世界」という点については、「実はモネはある種の色覚異常だったのではないか」という仮説が立てられていてスリリング。モネのお好きなかた、ルーアン大聖堂のシリーズを思い出してね。さあ、何か気付いたことがありますか? 何はともあれ、この本のすごいところは読みやすさにある。図版は全てカラー。そりゃ美術を取り扱うのだから当然だろうと言うなかれ。脳に関する図版もカラーが使われていてとてもわかりやすい。それに翻訳もとてもいい。垣添氏という方は医薬翻訳家ということだが、こういったアカデミックな翻訳にありがちな英文和訳調ではない、まともな日本語に置き換えてくださっている。お仕事ご苦労さまでした。こういう翻訳書が増えて欲しいなあ。つくづく思いました。 |