大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)

Ortega y Gasset - 筑摩書房 価格 ¥ 924
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大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)

Ortega y Gasset
筑摩書房

価格(new/used): 924 円 / 800 円 より
発売日: (1995-06) アマゾン売上ランキング: 21843 位
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現代の日本人像
 一部と二部にわかれ、一部はやや包括的に問題を眺めているのに対し、二部では具体的に問題を選択しつつ論考を行っている。また本書では訳者による後書きが大変参考になった。

 本書の問題の対象となっているのは、第一次世界大戦のヨーロッパであるはずなのに、私には(訳者もそうであると述べている)現代の日本に大変よくあてはまる項目が多いような印象を受けた。特に一部の「大衆はなぜすべてのことに干渉するのか~」「『慢心しきったお坊ちゃん』の時代」の章では共感する部分が多かった。

 大衆人がいかに時代に溺れているか、あるいはその流れにのって流されているだけなのに自らが泳いでいると錯覚している、などという様な作者の主張、専門家も自分の専門領域から脱しようとしなくなるくらいに細分化されてしまった学問、「生」の可能性の拡大、歴史的知識の必要性、ただ反対するだけの安易な姿勢への批判などその全てに私は共感を覚えたものであった。

 もはや我々は「真理を探し当てる上で必要な手続きを完全には踏まな(102頁)」くなっているのかもしれない。TVのワイドショーなどで、信じられないような事件が起こっては、ただ単に批判し、自分とは無関係である事、あるいは危険であるような事を自覚する。他人が述べた脚色した事実を、真理だと思ってはいけない。安易に批判するだけならば誰にでも出来るし、現在外側だけを判断要素としている人が多いとオルテガに現在の日本が批判されているような気がしてならない。

 我々は専門家でなくても真理を探し当てる事に貪欲になった方がよいのではないだろうか。オルテガが述べるように、安易に専門家やメディアに頼り、信じる事は、自身の弱体化を招く事になるのである。

オルテガの傑作
1930年に刊行されたこの本は、自分自身が凡俗であり続けながらも自己の希望と好みを押し付けるという大衆の特色を見事に描いている。

こうした大衆社会では、平均的であることが望まれ、過去に対する敬意を失い、文明(特に科学)に対する功労者を忘却する。それに対し、オルテガは読者に自分に多くを求める「貴族」たることを求めている。ある意味ニーチェと同じ構図であるが、キリスト教批判はなく、より形而下的で、人間に対してポジティヴである、と思う。この本は訳が良いせいかかなり読みやすく、説得力もあり読んでて何度も線を引いた。
しかし21世紀もずっとこの大衆対少数エリートという構図は変わらないのであろうな、とつくづく再認識させられる。