晩夏 上 (ちくま文庫)

- 筑摩書房 価格 ¥ 1,365
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晩夏 上 (ちくま文庫)


筑摩書房

価格(new/used): 1,365 円 / 738 円 より
発売日: (2004-03-12) アマゾン売上ランキング: 144785 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 3件

ふつうに面白い小説です
きわめて退屈、などと評されることもあるシュティフターですが、どこが退屈なのか私にはよく分かりません。どちらかというと面白く読めました。ただし、それほど好きな小説ではありませんが。

食べていけるだけの財産をもった教養ある青年が、ある人物と出会うことで人生が広がっていく様子を描いた小説です。謎解き的な続きが気になる要素もあり(ただし最後が予想できる伏線が多い)、読者を飽きさせない工夫をちゃんと作者がしていると私は感じました。ただ、登場人物が、人間性の立派な人ばかりで、さらに主人公にとっては何もかもうまく行き過ぎで、夢の中の話のよう、というイメージは否めません。たぶん、理想郷なのでしょう。そのかわり、他の主要人物の過去の悲しい体験(しかし現在の幸せにつながっている)が、下巻で語られます。

芸術や教養のためだけに生きることが可能な人たちの様子を知ることができる興味深い小説です。
善美の泉
「この小説を最後まで読み通した方にはポーランドの王冠を進呈する」とまで言われた、きわめて静的な作品.
何か事件が起こることを期待して本書を手に取った人は、ポーランド王にはなれないだろう.
しかし、「読む」という行為をこれほどまで味わわせてくれる小説は他にない.
芸術とは何か、美とは何か、自然とは、人生とは何か……
およそ人間にとって欠かすことのできないもっとも大切なものだけが、穢れたものをなにひとつ伴うことなく、それこそ水晶のような純粋さで語られる.
この透徹とした感覚は、日本古典の随筆や俳句、短歌、あるいは中国の漢詩などにみられる美と酷似している.
だが、それらが総じて極端に寡黙であり、かつまた非生活的な隠者の趣を持つのに対して、『晩夏』の透明感はあくまで未来に向かって開かれているのである.
世俗を離れ、自然のなかに生き、古い芸術を愛するという人生が、しかし同時に青年の成長の日々であり、家族との繋がりや清潔な恋愛、やがては輝かしい結婚へと結びついていく――この美しさたるや筆舌に尽くしがたい.
『晩夏』を読み終えた人が得るものの価値は、ポーランドの王冠などとは比較にならないだろう.
それは善美の泉に心を浸すことに他ならないのだから.
(副題)あるひとつの物語
作品集『石さまざま』中の一作「水晶」が辛うじて知られている、
近代オーストリアの(自然派?)画家・作家、
アーダルベルト・シュティフタ―晩年の大作の一つである。
学生時代ドイツ圏を専門にしていた私でも
「水晶」以外殆ど知ることのなかった地味でマイナーな作家である。

なかでもこの『晩夏』のストーリー(盛り上がり)の無さは際立っており

シュティフタ―の同時代の劇作家フリードリヒ・ヘッベルに言わせれば
この小説を最後まで読み通した人には
「ポーランドの王冠を進呈しよう」とまで酷評している。

この上巻では裕福な家庭に生まれ、
専門を持たない自然科学者として放浪する主人公ハインリヒが、
数回に渡り、リーザハ男爵の邸を訪れる様子が
飽きれるほど長い自然描写とともに

ストーリーに何の波乱も無く、ただ淡々と描かれている。
(下巻のレヴューに続く)