路上観察学入門 (ちくま文庫)

赤瀬川 原平 - 筑摩書房 価格 ¥ 819
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路上観察学入門 (ちくま文庫)

赤瀬川 原平
筑摩書房

価格(new/used): 819 円 / 200 円 より
発売日: (1993-12) アマゾン売上ランキング: 96376 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 7件

トマソンという言葉
 森村誠一先生の推理小説「失われた街の伝説」という作品(「影の祭り」光文社文庫)の中にこの「路上観察学入門」が出てきます。トマソンという言葉が引用されています。都会、街の描写を鋭く刻む森村小説に出ていたことから、興味があり読みました。
 もともと街の風景に興味があったため、このような本があることが新鮮に感じられ、街を観察する指南書のような印象を持ちました。
日常における「見立て」
 画家であり作家でもある赤瀬川源平氏、建築史家であり建築家でもある藤森照信氏、イラストレーターの南伸坊氏らが中心となり、具体的手法や実践例などを挙げつつ「路上観察」の魅力について語り尽くすという独特な内容。

 「芸術」の「作品」を「鑑賞する」ことに対して、「路上」の「物件」を「観察する」ことを重視するのは「博物学」と共通している。日常見慣れた風景であっても、少し見方を変えるだけで世界が違ったものに見えるというのは、確かに興味深く共感できる。

 具体的には「見立て」という言葉を用いるなど、学問として考えようとしているところがふざけているのか本気なのか、微妙なところ。女子高生の制服や道路のマンホール、看板建築、路上のゴミ箱、河川の浮遊物、ペットとして飼われている犬などが「観察」対象として挙げられており、その成果?が克明に報告されている。

 恐らく一般の通行人から見ると怪しいとしか思えない行動を名のある大人達が取っている姿は、何とも不気味でありながらも微笑ましい?感じがする。特にリーダー?の赤瀬川源平氏は「超芸術トマソン」なる言葉を編み出し、そのコレクションは書籍としてもまとめられている。

 トマソンする:街中の建造物や道路に付着する、無用の長物でありながら美しく保存された不可解な凹凸を発見し、記録、報告すること(抜粋)

 言うまでも無く、この「路上観察」は、関東大震災の焼け野原から始まった今和次郎・吉田謙吉氏による「考現学」の流れを組む活動であり、膨大な情報量が飛び交う現代、そうした「無用の用を発見する眼」こそ豊かな生活を送るためには必要なのかもしれない。
好奇心のデパート
かつて藤森照信、赤瀬川原平らで「路上観察学会」を結成したのだが、彼らの今までに集めてきた学説(?)をダイジェストにまとめたのがこの本である。
流石に路上観察を世間に広めた彼らだけあって、素人でもなかなか楽しめる内容となっている。しかし彼らも路上観察の祖と言われる今和次郎(こん・わじろう)だけは尊敬しているらしい。
ちなみに今は亡き杉浦日向子の江戸の風俗についての執筆もあるから貴重である。
また、それぞれの執筆陣に興味を持ったら、それぞれの執筆陣が出している単行本を読んでみるのも良いだろう。
愚生も高校時代に読んだ赤瀬川原平の本がきっかけで路上観察のディープな世界に引き込まれてゆき、名古屋の美術館で赤瀬川原平展が開かれるとつい見に行ったりしたものだが、自動車免許を取得してからは、路上観察のスローでマイペースな世界とは正反対の、クルマとスピードの快感を手に入れた今となってはその余裕すら無くなってしまった。しかし、いずれは戻ってみたい世界である。
路上観察という名称の発明
 社会的といっても良いような反響で予想外のブームになった超芸術トマソンを後継するというような位置付けで語られる「路上観察」
その路上観察と言うジャンルの発明、命名となったのが筑摩書房のこの企画です。
「路上観察学」と言うと今では赤瀬川または藤森氏と名の売れた(筑摩書房関連の)先生方をブッキングして地方に行って講演をする催しの名目、そんな事を思い浮かべてしまいます。
 ですがこの本は単に有名な、名前で売れ行きを期待できる先生方の寄せ集めではありません。逆に言うとこの本やトマソンに当初含まれていた無名の人達が醸し出していたダイナミズムの雑多な魅力がその後の「路上観察」からは抜け落ちてしまったんだなと思わざるを得ないのです。

 路上観察とはありきたりの物にちょっと気の利いたコメント、変ったものの見方、自分の発明した分類、を結びつけるというような遊びではなくもっと純粋愚直な「路上で出会った美しい、おもしろい、驚くべき事物の発見・記録」こそが根源だったのではないかというような感想を持ちました。特に赤瀬川系の文脈には頭でひねくったものの見方を披歴するのではなく、日常からの驚くべきものの発見や出会いが主張されていて「事実は小説より奇なり」という言葉を思い出すのです。
微妙なバランスの読み物
この本のタイトルと見ると、学術書、ガイドブック、入門書、ハウツー本というキーワードが思い浮かぶが、どれも完全には的をはずしてはいないのだか、やっぱりちょっと違う。結局は、「読み物」である。

赤瀬川氏の絶妙なペンにより、読者はミラクルワールド(?)へ難なく引きずり込まれてしまう。それは、いわば、アトラクションというか巧妙に仕掛けられた客引きというか、なのだが、その先に何が用意してあるかというと、それは、学術性であり、ガイドブック性であり、入門書的であり、ハウツー本的な世界なのであるが、結局は、引きずり込まれた後も、赤瀬川氏のペンにもてあそばれ、読後には妙な満足感が残るという本である。

自分たちの遊びを、「学」にこじつけてにやにやしているだけというのもわかっているのではあるが、その世界に、心地よく引き込んでくれるというのがこの本の醍醐味である。

赤瀬川氏以外の人の書いた部分は、ガイドブック性が高く、非常に参考になりました。純粋な読み物としての楽しさと実用性が高い次元でバランスがとれたいい本です。



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