芥川龍之介全集〈3〉 (ちくま文庫)

- 筑摩書房 価格 ¥ 882
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芥川龍之介全集〈3〉 (ちくま文庫)


筑摩書房

価格(new/used): 882 円 / 318 円 より
発売日: (1986-12) アマゾン売上ランキング: 175133 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 3件

蜜柑が収録されてます
大正期における日本のキリスト教受容の様子がよく分かる
「きりしとほろ上人伝」、
映画にもなった有名な「南京の基督」、
教科書によく登場するハートフルな「蜜柑」(みかん)、
個人的に大好きな「舞踏会」等、いい短編が収録されています。
好短編「蜜柑」の無限の味わい
 わずか6頁の短編である。 ゛
 ある曇った日暮れ、「私」は疲労と倦怠感を覚えながら、二等客車に乗って、発車を待っていた。発車間際に、13、4の小娘が一人慌ただしく中へ入ってきた。彼女の服装が不潔なのが不快だった。一切がくだらなくなって、よみかけた夕刊を抛り出して、窓枠に頭をたせながせら、死んだように窓枠にもたれ、うつらうつらし始めた。
 しばらくすると、彼女は私に頓着する様子もなく、窓から外へ首を伸ばしていた。汽車がトンネルを抜けると、踏切の柵の向こうに頬の赤い3人の男の子が並んで立っているのを見た。半身を乗り出していた娘はその子供たちに向かって持っていた蜜柑を五つ六つ投げてやった。私は思わず息を呑んだ。そうして、刹那に一切を了解した。 
  その説明は不要であろうが、作者は念を押すように「恐らくはこれから奉公先へ赴こうとしている小娘は、その懐に蔵していた幾顆の蜜柑を窓から投げて、わざわざ踏切りまで見送りに来た弟たちの労に報いたのである」の一文を添えている。
 私は得体の知れない朗らかな心持ちになる。これがこの短編の快さでもある。初めの「倦怠と疲労」感を、最後にはわずかな間でも忘れることができた心地よさを述べている。
 芥川の憂鬱がこういう小景で快癒されはしなかったはずであるが、ふと車中で見た小景に材を得て、「束の間の癒し」の好短編に仕上げた才はさすがである(雅)
芥川3
【蜜柑】では芥川の、人生に対する陰鬱な気持ちを一瞬だけ忘れることが
できたという場面が出てきます。それは横須賀線で出会った少女の
一連の動向に、感情を揺さぶられた後に到達するのですが、それら
は少女の躍動感ある描写と、芥川の気持ちの推移が同じく展開され、最後は読んでいるこちらも、パッと明るい気持ちにさせてもらえます。
【秋】では妹に愛する男を譲った姉の話です。芥川といえばあまり
恋愛を題材にしていないと思うのですが、女性の愛情、嫉妬、諦念などを
描写しており、当時の世相を考えると、この姉の気持ちがすごく理解できるな
と、感心してしまいます。全体的には、今の世の中の恋愛事情からはあり得な
い展開だと思えるのですがそれでも、昔は良かったのかなと思わせる
美しさがあり、芥川の文学性を感じることができます。
【南京の基督】では、かつて洗礼を受けた中国の15歳のクリスチャンの
売春婦が基督に会い、病気が治るという物語です。
実際少女が会ったのは、風貌が基督に似ただけの客であるのですが、'信じるものは救われる'という案外普通のストーリーを少女の不遇な境遇から、そう言う事があっても良いなと思わせてくれる芥川の力量を感じさせられます。また、基督絡みでは奇怪な結末や、幸せとは言えない結末の多い芥川の作品の中で珍しく救いのある最後のような気がします。