南の島に雪が降る (知恵の森文庫)

- 光文社 価格 ¥ 780
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南の島に雪が降る (知恵の森文庫)


光文社

価格(new/used): 780 円 / 249 円 より
発売日: (2004-08) アマゾン売上ランキング: 10347 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 6件

泣けました
恥ずかしながらつい最近この作品の存在を知って 読みました。「紙じゃねえか。紙じゃねえか。」・・ここはクライマックスでしょう。泣きました。  でもけっして「お涙ちょうだい物語」では無いのがこの本の魅力です。ユーモアたっぷりに描かれてます。その裏にある戦場の悲惨もサラリと描いてます。  とにかく各キャラクターの魅力にグイグイと引き込まれました。村田大尉、ニセ如月寛多、怪僧・・。  笑わせながら夢中で読ませて、読み終えてから戦争の狂気に怖気立つ・・・。 いままで読んだ戦記ものは全然違ってました。2回連続で読みました。   加東大介さんは黒澤監督の映画でよく見かけましたが、文才もある人だったとは・・。こういう素晴らしい小説とめぐり合えて幸せです。
戦争記録文学の最高傑作!!
今は亡き俳優、加藤大介の戦争体験記、真実の記録です。
戦争物というと必ず無数の兵隊や罪もない庶民が血を流す話を想像してしまいます。
ところがこの作品では、血が流れません。
兵隊たちは、食糧不足による飢えと病気でやせ細り死んでいきます。
そうこれもあの戦争の一面なのですね。
そんな中で、生きる喜びを見出すため南の島の日本軍による演劇団がつくられます。
その中心人物が加藤大介その人なのですが、この劇団が多くの現地日本兵を勇気づけるのです。
物語のハイライトは、劇中で紙吹雪の雪を降らせること。
東北出身の兵隊たちがふる里を想い涙します。紙吹雪を見ながら死んでいく者もいます。
南の島に本当に雪が降ったのでした。
人間は時として破壊に走ると同時に、創造する生き物であることが分かります。
演劇部隊としての生活に喜びと活路を見出す人たち。
演劇を見て、祖国日本を、ふる里を、妻や女性を想い癒される人たち。
彼らの気持ちを思うと胸が詰まります。
何でもいい、人生には楽しみが必要なのです。それは現代でも同じこと。
生きる楽しみを失った現代人がどれほど多いことか。
そんな人こそこの作品を読んでほしいのです。
きっと明日への希望と勇気が見出せます。
そして、あんなバカな戦争は二度としてはならないと、心底思うでしょう。
演芸の偉大さ
死に瀕している人間の生死を分けるのは
その人間が希望を持っているか否かだ。
加東大介のマノクワリ支隊演芸分隊、のちの
マノクワリ歌舞伎座は死線をさまよう何千の将兵に
この希望を与える。
加東は内地送還のチャンスを自ら捨ててこの
希望を与え続けるほうを選ぶ。ために多くの将兵
が命をながらえることができた。
演芸とはなんと偉大だろう。

余談だが、役者として大活躍した篠原軍曹は
小林よしのりの祖父である。「新ゴーマニズム宣言・
戦争論」にも描かれている。

再映画化を希望
加東大介といえば「七人の侍」の名参謀役が有名であるが、私にはそれよりも山中貞夫監督の「人情紙風船」(S12年)における縛徒役を思い出してしまう。この映画は日本映画が誇る大傑作で、私には生涯邦画ベスト10に残りうる作品である。当時の前進座総出演で、その関係で加東も出ている。加東があまりにも若かったので、ちょい役ながら覚えていたのである。山中監督はこの直後に徴兵され、還らぬ人となった。そしてその6年後、加東は2回目の徴兵を受け、ニューギニアに向う。時代はそういう時代だった。たかが、芸人ふぜい、いつ死んでもおかしくは無かったのである。

運命のいたずらで加東の部隊はアメリカ軍の総攻撃から免れる。戦意高揚、いや、生きる意欲高揚のために加東たちは芸を持った人たちを集め、「マクノワリ歌舞伎座」を創設する。余興ではない。毎日休まず公演を行うりっぱな「部隊」である。数々の感動的な「場面」がある。「生きる」とはどういう事なのか、「生き甲斐」とはなんなのか、そのエッセンスが淡々とした加東の文章の中に隠れている。

さすが、名エッセイスト沢村貞子の弟だけあり、文章は時にユーモラスで、臨場的で、無駄が無く、素晴らしい。隠れた名戦争文学である。この作品は一度東宝で映画化されたそうだが、「生きる」意味を見失っている現代、ぜひもう一度映画化してもらいたい。

昭和は遠くになりにけり
 俳優故加東大介氏の自筆体験記。待望の復刊だそうだ。私は讀賣新聞のコラムでこの著の存在を知った。ただ、子供の頃、この話は聞いた記憶がある。加東大介氏といえば、黒澤明監督の「七人の侍」で若い人も知っている人多いと思う。女優故沢村貞子さんの実弟でもある。また、長門裕之、津川雅彦、加藤勢津子三兄弟の叔父さんでもある。

 西ニューギニアにおける戦争という非日常の中で、日本兵は敵の銃との戦いでなくマラリアと飢えとの戦いで、死んでゆく。彼らの日常は、飢えを凌ぎ、病と闘い、ただただ生き延びる事だけであった。彼らは、「百年戦争」を戦っていると考えていた。いつ終わるともない戦地生活。いずれ皆死んでいくに決まっていると誰もが思っていた。

 そんな中で、著者たちが中心になって毎日毎日芝居をやることになった。この芝居が兵士たちにとって、生きるためのカレンダーとなり、全支隊の呼吸のペースメーカーとなったという。各部隊が、順番に観劇するのである。普通だったらすぐ死んでしまう兵隊が、ひと目芝居を観てからと、生き延び、観劇後、すぐに昇天した例もあったという。

 有名な雪のシーンは感動的である。泣けた。望郷の念にかられた兵士達の涙が、本当にリアルに感じた。

 多くの兵が死んだが、この芝居を観て生き延びた7000人が戦後日本に復員した。著者も戦後全国で彼らとの感動の出会いがあった。このような人々が、戦友の死という十字架を背負い、懸命に働き戦後日本の復興を成し遂げた。昭和は遠くになりにけり。亡き父の面影も追いながら、供養の気持ちで読んだ。やさしい文章で、偽りがない。家族でこの夏、読むのもよいだろう。