![]() |
眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎 |
| 柴田 裕之 - 紀伊國屋書店 価格 ¥ 2,520 | |
| home|書籍|CD|DVD|ゲーム|ソフトウェア|家電|キッチン|おもちゃ・趣味 |
![]() |
眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎柴田 裕之 紀伊國屋書店 価格(new/used): 2,520 円 / 1,300 円 より 発売日: (2007-12-12) アマゾン売上ランキング: 14315 位 単行本 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 5件 なんとも衝撃的な理由でした中年以降になって不眠症となり、悶絶しながらそれでも意識ははっきり保った状態で死を迎える、そんな病気がある一族に繰り返し発生します。 果たしてこれがウイルスが原因なのか、遺伝なのか? そしてニューギニアのある種族に発生する、クーリーと言われる病気との不思議な類似性。 そしてその病気を追いかけていくと、「食人(カニバリズム)」と言う習慣が浮かび上がります。 現代ではほとんどの種族でカニバリズムは行われていませんが、過去に於いては、どこの種族にも見られるごく普通の習慣でした。これが狂牛病を引き起こした原因と結びつくことを、予想出来た人はほとんどいないでしょう。 そう言った意味ではとにかく衝撃的です。 プリオンタンパク質入門原題は「The Family That Couldn't Sleep -A Medical Mystery-」 眠れない一族、致死性家族性不眠症の紹介を皮切りに、 未だに謎の多いプリオンタンパク質に関する事柄が 上手くまとめられています。 邦題に、原題には無い「食人の痕跡」だの「殺人タンパク」だのを付け加えたり 「A Medical Mystery」を「医学推理小説」と訳して、 それを帯や巻頭に載せているせいで、随分と損をしていると思います。 特に帯の煽り文句が良くない。(このページの画像には載っていませんが) 『クールー病、スクレイピー、狂牛病、致死性の不眠症…をつなぐ鎖とは? 80万年前の食人習慣がすべての始まりだった!?』 って、全くそんな内容の本ではないじゃないですか。 私は人から薦められて購入したのですが、 表紙の怪しげな雰囲気の絵のせいもあって、 「牛や羊の病気のはじまりが、80万年前の食人習慣?」 「推理小説?ダヴィンチ・コードとかの類?」と少し不安で、しばらく放ってありました。 店頭で見かけただけならおそらく購入しなかったでしょう。 ちなみに、描かれている「謝肉祭でペスト医の扮装をする人」は 本筋と関係のないところで、ちょろっと出てくるだけ。 食人に関する記述も最後の推論の数ページ。 そんなところを膨らませて無理矢理怪しげな演出しなくたっていいのに。 良い内容なのに勿体無い。 サイエンスライターあるいはジャーナリストのあるべき姿メディカルミステリーと言う範疇らしい。 読む限りにおいてはドキュメンタリーなのだが評者が無教養なためにフィクションの部分があるかどうか分からない。 しかしである、原著者のプリオン病に対する思いいれの凄さは、情報収集として巻末の引用文献等の専門的科学論文や日記あるいは報告書の数としても分かる。 話は致死性家族性不眠症(FFI)と言うやがてプリオン病の一種と同定されるイタリアのある家系に現在なお起こっている悲劇の病からはじまる。 プリオン病はスクレーピー(1820年代から羊)、BSE(いわゆる狂牛病、1980年代より社会問題化)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)、クールー病(パプアニューギニアにおける食人習慣による疾病)等が知られている。またBSEから人への感染による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が昨今大きな話題にもなっている。 本書では本疾患等に関連してノーベル賞を受賞いた二人の生き様も描いている。ガイジュシュック(業界ではガジュセックと書くが訳者は発音を確認してこれが正しいようだ。1976受賞)とプルジナー(1997受賞)である。 ガイジュシュックはクールの研究に従事したパプアニューギニアから多くの少年を連れ帰り(56人)、その内の一人から性的虐待で訴えられ有罪となり服役した。本書の中ではその背景となる現地での儀礼的同性愛にガイジュシュック自身も参加したいたと日記などを元に記載している。 プルジナーに関しても紳士的でない科学者の態度を多くの証言から得て「プリオン研究のゼネコン」と揶揄されていると書いている。 ドロドロとした研究業界の舞台裏をこれでもかと言うほど見せつけてくれる。 また日本人の遺伝子型がプリオン病に罹り易いホモ接合体であることが何気に書かれているのが気になった。(欧米はヘテロ接合体が多い) もう一つのテーマ「眠りとは何なのか?」ブリオン蛋白質によって発症する遺伝病FFI。BSEが牛の共食い飼料に原因があるとされ、 それでは有史、人が人を食うという事実では何が起こっていたのか?そしてBSE牛の遺伝は? ということが主軸で中世まで遡り、異常蛋白と人間の食文化、儀式を再検証する が、FFIの最大特徴である「不眠」についての描写が僕には何より恐ろしかった 人間は人生の三分の一は寝ている。ある年齢を超えると、心地良く眠ることは 闊達に起きている歓びと等価になる。眠れない、眠らせないというのはしばしば 拷問の一つとして使われてきた方法であるほど眠りは人間の心身に影響する 眠っている間、眠りが素晴らしいとは感じない(それは日々空気を吸っている ことが素晴らしいと感じないのと同じだ)。しかし、都会から清涼なる土地に 移動して胸いっぱいに呼吸をすることで心身が回復するのを感じるように、 生を自覚するからこそ、生を無自覚化する(無意識化ではないにせよ)眠りは 生物の機能なのだ。それを先天的に失うことが分かっている人生とは、何と 恐ろしいことだろう 鬱病の重要な治療法に「ただ、寝る」ということがある 僕も年に1,2度の軽度の鬱を感じると2日ばかり、ただ寝る すると何となく回復する 生物は同種の生物を食べない。その禁を犯したBSEは、しかし、史上、人類にも 人類が起こしてきたことにも数多くあり、その報いが「不眠」とは! 夜中、ゆっくりと本書を解きながら、心地良く眠れるというのは何とも皮肉な 喜びである 「内からの脅威」その名はプリオンイタリアはヴェネト州のある一族に患者が集中する「致死性家族性不眠症(FFI)」。身体の痙攣などの不随意運動と痴呆に似た症状を持ち、患者は眠ることができないまま壮絶な苦しみのうちに死に至るという、考えるだに恐ろしい残酷な病である。自らも原因不明の疾患を抱える筆者は、この奇病に冒された一族の来歴を軸に、類似した症状を持つ、羊や牛を襲ったスクレイピーやBSE、ニューギニアの部族に蔓延したクールー病といった疾患を追い、その原因とされるプリオンの発見に至るまでの歴史をミステリー仕立てで紹介する。 核酸を持たない単なる分子でしかなく、単なる分子であるがゆえに、生命体としての生き残りというセオリーにも当てはまらず、その目的がさっぱりわからないにもかかわらず、感染し、遺伝するという、感染症の従来の概念を覆す謎に満ちたプリオン。科学者たちにとって格好の研究対象であったようで、本書は彼らの野心や功名心をむき出しにした研究レースに触れ、価値判断に影響を受けざるを得ない「科学」の迷走ぶりを描き出している。 副題の「食人の痕跡〜」であるが、人類が、プリオン病に罹患しにくいとされる遺伝子コードを持つに至った理由を類推していく中で、過去に食人によるプリオン病の蔓延があったのではないかということを指しているが、恐ろしいことに我々日本人のほとんどはその遺伝子コードを持ち合わせていないそうだ。我が国でもアメリカでBSEに罹患した牛が発見された際、輸入の全面禁止と、全頭検査を条件とした輸入再開と慌しかったが、政府が対応を急いだ背景に日本人の遺伝子特性があったとは背筋の凍る話ではないか。 難解な科学用語や理論を平易に解説し、なおかつ、脚色が殆どないにもかかわらず、冷静な筆致で小説としても読ませる内容となっており、本書を一流のメディカル・ミステリーたらしめている。一読をお勧めしたい。 |