デッドエンドの思い出 (文春文庫)

- 文藝春秋 価格 ¥ 480
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デッドエンドの思い出 (文春文庫)


文藝春秋

価格(new/used): 480 円 / 1 円 より
発売日: (2006-07) アマゾン売上ランキング: 33576 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 10件

思いでは明日へと続く
私たちの心には沢山の思い出が横たわったいて、そっと掬おうととしても指の間から零れ落ちてしまいます。あなたの手のひらに残ったのは、どんな思い出ですか?宝石のようにきらきら輝く楽しかった思い出?それとも涙が結晶になった悲しい思い出?

手のひらに残った思い出も、指の間から零れ落ちた思い出も、すべては今のあなたを形作る大切なものなのです。だから、そっと抱きしめるように抱え込んでください。握り締めようとすると、さらさらと零れ落ちてしまいます。

この本を読むと、自分自身の全ての思い出がいとおしくなります。そして、今自分自身の周りのささやかな幸せを感じられるようになります。心に刺さった小さな氷のような思い出も、やがては解けて未来へ続く河へと流れ出します。早春の陽だまりのような、穏やかで、生命の力強さを感じる一冊です。

せつない一作
この人の本は、『つぐみ』を読んだきりで、あまり好みではなかったけど、この本は別。特に最初のストーリーがとてもせつなく、そしてエロティック。ひらがなの多用がセクシーだという事実を発見した。
幸せは、すぐそこにあるよ。
「何と幸せとするか」というのは、ある程度育った家庭環境によって規定されると思います。この事実にさえ気づかず、自らの思い描く「幸せ」が絶対的な「幸せ」だと信じることができるのは、本当に「幸せ」な人なんだろうな。この状態に疑いを持ったのが『幽霊の家』の岩倉くんで、『デッドエンドの思い出』では、本来なら知らずに済んだはずのミミが、婚約破棄によって生じた人生の中の空白のような時間の中で「幸せとは何か」を考える。

よしもとばななの作品は、余裕のある親からの愛情と教育によって得られた「幸せ」を否定することもしないし、自らで「幸せ」を見つける過程を経なければならなかった人のことも、等しく肯定してくれるので好きです。この作品集には、特にその色合いが濃く出てたんじゃないかな。

ちなみに、あとがきに「これまでに書いた自分の作品の中で、いちばん好き」とあるが、私も「あなたがこれまでに書いた作品の中で、いちばん好き」です。

さらに、「これを読み返すと、人生のいちばんつらかった時期がよみがえってくる」とありますが、(具体的にはどんなふうに辛かったのか知らないけど)そういったつらい時期を乗り越えた人だからこそ書ける、いまつらい人たちに「幸せはいつかやってくるよ、あるいはもうすぐ近くにあるよ」と呼びかけるような、優しい優しい物語だと思います。
哀しいのに、とても爽やかな物語
よしもとばななの短編集。5つの物語が収録されています。

大切な人の死、恋人の裏切りなど、テーマとなっているのはどれも悲しい出来事ばかりです。
よしもとばなな本人も、あとがきで「こんなに暗い物語にお金を払ってもらうのは申し訳ない気もする」みたいなことを書いていました。
でも、辛い物語のはずなのに読後感はとても爽やかです。「終わったことを嘆いて、くよくよするのはよそう」、そんなメッセージを含んだ小説だと思います。
幸せはささやかな、それでいて暖かい光
しばらく吉本ばななさんの世界から遠ざかっていました。
独特の世界に悲しみと苦味がまざったような感じがあり、触れづらくありました。
デッドエンドの思い出は吉本さん自ら「自分の作品の中でいちばん好き」と書かれています。
著者のこういう言葉には踊らされない方なのですが、この本に関しては同感です。

特に「幽霊の家」、つらく切ない別れを経ても、光あふれる幸せの瞬間が二人に訪れるまでをつづっています。
人の心の中に眠る宝物、それは華やかなものでも大仰なものでもないかもしれないけれど、
ささやかでも暖かく照らす光なのだーーーそんなことを本書の全作品を通して語っているように思えます。
自分自身がつらいとき、切ないとき、読み返すであろう本です。