動機 (文春文庫)

- 文藝春秋 価格 ¥ 570
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動機 (文春文庫)


文藝春秋

価格(new/used): 570 円 / 1 円 より
発売日: (2002-11) アマゾン売上ランキング: 25820 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 38件

刑事司法の周辺に生きる人々
氏の作品の最大の特質は、元地方紙の事件記者という経験を生かし、警察を中心とした
刑事司法やその周辺で生きる人々や組織の暗部、暗闘、苦悩を活写する、というところにある。
そこは非常に良く描かれている一方、トリックというかミステリーの核の部分は一寸弱いかなあという感じもするが、短編ネタを強引に引き伸ばしたような「半落ち」よりは、全体として
出来が良く、お薦めできる。
組織に生きる個人の葛藤などなど
本作は短編小説4本で構成されています。

うち3本は、著者の十八番ともいえる、組織に生きる個人の葛藤を描いたものです。

デスクワークに誇りを持って勤め上げてきた警察官と、
現場で奮闘し続けてきた警察官とのぶつかり合い。

著者も所属した新聞業界の過酷な競争と疲弊した現実、
そこで生きることにくたびれつつある女性記者。

淡々と人を裁いてきた地味な裁判官と、世知に長けた裁判所長。

いずれも渋い味わいと意外な結末が盛り込まれています。

そして、私が個人的に印象深かったのは、やや長めの「逆転の夏」です。
ちょっと設定が非現実的な感もあるのですが、
加害者と被害者の複雑な内面と運命的な対決を劇的に描いています。
何となく男くさく、たばこくさい。
 イメージの問題だが、男くさく、タバコくさい。しかし、酒臭くはない。何となくハードボイルドなイメージかな。
 ストーリーとしては、「動機」の気の利いた展開は面白い。また「逆転の夏」は、ハラハラさせられて、小説な感じがする。いずれも取り上げられるのは身近な話題ではないことから、「ああこんな世界もあるんだな」と感心する。
「別角度」から描かれたきわめて斬新な警察小説の生誕!
以前から横山秀夫作品がテレビドラマ化されていたことは知っていたし、「影の季節」というどことなく殺伐とした印象を与えるタイトルも頭の片隅に残っていた。「著書『影の季節』と『動機』あわせて100万部突破した!」という黒帯の白抜きされた言葉に思わず手が伸びた。どちらの作品からもとても斬新な感覚を与えられ、目から鱗が落ちるような思いであった。犯人逮捕に全力投入する刑事部門の活躍ではなく、警務課、監察課そして秘書課といった「別角度」から、警察機構の内部(正確には「管理部門」で働く人間の内面)に潜む赤裸々なドラマを、あたかもそこに勤務している人間であるかのようなタッチで描かれた短編小説に惹き込まれた。特に印象深かった作品は、『動機』所収の「動機」と「逆転の夏」の二作品である。どちらの作品も、「家族」というかけがえのない財産を守るという使命に邁進する男(ここでは父親)の姿が活写されている。テーマや切り口の斬新さもさることながら、横山作品に自然に惹き込まれてゆくのは、やはり「自分が現場にいる人間」であるかのような、その人間の感情や意志を生々しく綴る「文体」にもあるような気もするのである。こうして、作品に登場する人物と読者が見事にコラボレーションする、つまり、読者はそこにいる登場人物と一体化してしまうわけだ。先行きが読めないという緊張感はそれによって更に助長される。『動機』では、警察官にとどまらず、殺人を犯した前科物、事件記者そして裁判長という登場人物にまで拡張され、新たな作風をいかんなく醸し出している。ドラマ化された作品を少しは見ているはずであるが、やはり原作そのものを読まないと臨場感を理解できない。テレビ放送の鑑賞という行為はたぶんに受動的であるのに対し、読書は能動的である(少なくとも「そうあろうとする」)からである。本書をはじめ、多くの作品が読者の目に触れることを願いたい。
他の収録作品も珠玉
 本書には4編の短編が収録されています。短編集のタイトルとなっている『動機』は
以前の短編集『陰の季節』と同様、警察警務部(管理部門)の視点で警察組織を描いています。
各方面で絶賛された作品です。短編にしては登場人物が多く、各人丁寧に書かれて
いるのですが私としては人物描写が中途半端に感じました。短編であれば思い切って
主人公に描写を絞り込んだ方が良いように思いました。短編がうまいという事で
当時は短編の依頼が多かったからでしょうか、『動機』からは作者の長編への
意欲が感じられます。

 後半の『ネタ元』、『密室の人』は作者の短編のよさが存分に出ていると思います。
刑事事件をキーワードとして一方は社会部(事件)記者、もう一方は裁判官に
スポットを当てています。ともに一般人にとっては、ニュースを通してしか知るこ
とのない彼らが、苦悩しながら懸命に人として働き、愛し、苦しんでいる姿が
フィクションを通して伝わってきました。