半眼訥訥 (文春文庫)

- 文藝春秋 価格 ¥ 520
home書籍CDDVDゲームソフトウェア家電キッチンおもちゃ・趣味
半眼訥訥 (文春文庫)


文藝春秋

価格(new/used): 520 円 / 69 円 より
発売日: (2003-02) アマゾン売上ランキング: 126649 位
文庫 / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 9件

漫才
漫才(吉本興行と思われる)や、収納術、システムキッチンなど著書の硬派なイメージからは程遠い生活くさい題材がとりあげられていてそれだけで興味深い。熱心なファンではありませんが、生真面目さが伝わってくるとともにその生真面目さがほほ笑ましく感じる。

友近や柳原加奈子の人物観察ネタを見せて感想を聞いてみたい
素顔の作者に触れられる貴重な本
新聞などに掲載したエッセイを纏めた本。日頃、硬質な著者の文体に慣れている身に取っては、控えめな題名に加え、謙虚な物言いが珍しかったが、これが著者の等身大の姿なのであろう。

本作を読むと、デビュー作「黄金を抱いて翔べ」の舞台設定があのようになっている理由、作中に子供が登場しない理由、"女"を描かない理由、町工場を頻繁に舞台にする理由、そして"個"を描く事によって大事を看破する小説作法を取っている理由などが分かる。更に、作者が時代の変遷に合わせ、常に"今"を書き続けて行こうとする姿勢が汲み取れる。また、現代における情報の氾濫と全てのものを記号化する事への危機感を露わにし、小説家として何ができるか真摯な態度で悩む姿が伺える。

音楽会のパンフレットに事寄せて、自身が考える芸術と美の問題を語っているのも興味深かった。また、全篇を通じて主婦"高村薫"の姿を垣間見られるのもファンにとっては貴重。ただし、日経に寄せた「住」に関するエッセイはやや疑問。地震大国日本で、100年先を考えた住環境という発想はちょっと無理だろう。また高村先生、ソフトウェア開発者の立場から言わせて貰うと、パソコンで文章を書く際はフォントとポイント数を適切に選んで下さい。解像度の高いモニタを選ぶのは勿論です。背景色も工夫した方が良いかもしれません。

小説では精緻な構成、硬質な文体で読者を突き放すかのような緊迫感溢れる作品を提供する著者が、執筆姿勢を含め、ありのままの自分を読者に曝け出した貴重なエッセイ。
笑わない人の笑えない理由
高村薫の小説には全て言えることだし、このコラム集でもそうだが、この人は笑わない。鋭い文章を書きながらも笑顔を思い起こさせる人はかなりいるが、これほど笑顔を想起させない人はそうそういない。ここに納められているコラムは、こころの隅っこでは何か変だと思いながらも普通の日常に戻ってしまう私を、はたと立ち止まらせ、ぐいと引き込む力を秘めている。
「可愛い」という表現を価値観として捉えたり、昼間ファーストフードショップに幼子を引き連れたむろする若い主婦達の本質を抉ったり、情報を活用するつもりが情報に翻弄されることの深淵を覗かせたり。その隅々にまで思考を巡らせた緻密で存在感のある文章は、紛れもなく高村薫の行き方であり、不器用なまでに時代に迎合しないその姿勢には、ときにこちらがハラハラする。これほど現代の本質を掴みきってしまうと笑うことは出来ないだろう。「喜劇を書いてみたい」という高村薫のことがかなりはっきり確認出来るいい本だ。
はじまりは大阪
控えめなタイトルとは違い、内容は社会、音楽、大阪についてと多岐にわたる。
と、言うのも文章が新聞や雑誌に掲載されたコラムの寄せ集めだからである。
著者はあとがきで謙遜しながら「雑文集」と言ってはいるが、短いながらも端的に書き表わされる評論は理路整然としていて歯切れが良い。
各文章は8つのテーマに分けられているが、特に最終章「わたくしのなかの大阪」は、著者の出身地でもある大阪が作品に与えた影響を自己分析しておりとても興味深い内容である。
コーナーぎりぎりに決まる普通の直球
作者の本業は犯罪小説ですが、それ以外にも新聞に短いコラムを何本も
書いており、それらをまとめたのがこの本です。
作者のクールな視点が随所に感じられます。特に「『可愛い』とは何
か」には唸ってしまったので、一部を抜粋しておきます。

===============================

子供はたいてい、一度や二度は親に愛されていないと感じるもので、
それはたぶん一時的にせよ、正しい直感なのだと思う。哀しいことに、
動物の中で唯一本能が壊れている人間だから、たとえ親であっても、
子供に対して「可愛い」「可愛くない」といった情緒に揺さぶられる
し、「可愛い」からといって、始終子供のことを思っているわけもな

い。理不尽な憎悪に駆られたからといって、子供を捨てられるわけもな
い。特別によく出来た人は知らないが、凡人はみな、子供については複
雑に微妙に揺れ動きながら、何とか自分の中で正と負の帳尻を合わせて
いるのだと思う。

変化球は一切無しです。かと言って剛速球でもない。平凡な直球なの

に、気が付けばコーナーぎりぎりに決まっているという感じがします。
尚、作者は「子供にとって、どうしても許せない一言というものもあ
る。『可愛くない』はその一つである」とも記しています。本人の経験
が元になっているのかも知れません。