地を這う虫 (文春文庫)

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地を這う虫 (文春文庫)


文藝春秋

価格(new/used): 470 円 / 1 円 より
発売日: (1999-05) アマゾン売上ランキング: 93214 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 10件

高村薫は、オールラウンドプレーヤーなんですね。
何作か読んでいるのですが、高村薫が女性だとは思いませんでした。

短編も書くんですね。
短編と言えば横山秀夫だと思っていたのですが、この4つの短編集を読んで高村薫が所謂オールラウンドプレーヤーだということが分かりました。

元刑事が主人公なのですが、それぞれ刑事だった頃の癖が抜け切れない或いは、その職業上得た能力を使わざるを得ない状況で、何を思い行動しているのか丁寧に書かれています。

私の一番のお勧めは「父の来た道」です。
権力と言う世界は全く分かりませんが、家族を顧みずに仕事に没頭していた私の「父」、そんな生き方を尊敬しながらも反発し、自分は家庭第一で生きていくのだと誓ったにも関わらず、結局、仕事第一で生きてきている自分の人生に思い至ってしまいました。

どの作品も優れた短編です。
短編なんか...と思っている方、是非お読み下さい。

生きる上での困難さをありのままに
元警察官を主人公にした短編集。短篇ながら、作者の長編作品における重厚感を滲ませた傑作揃い。作者の力量を改めて感じさせてくれる。収録作品は、「愁訴の花」、「巡り逢う人びと」、「父が来た道」、「地を這う虫」。主人公の現在の職業は、各々、警備会社、悪徳金融業、大物政治家のお抱え運転手、倉庫番と守衛の兼業。

主人公は現在の職業に励んでいるように自身で思い込んでいるが、実は心中は自己卑下と虚無感に覆われている。それが、ふとした事件をキッカケに、刑事の本能が目覚め、それにより矜持も回復したかに見える。だが結局、周囲の人間模様の闇の中に自身は埋没してしまう。それでも生きて行かなければいけない現実を作者は冷徹に描く。作中に出て来る、電車の中の母と幼児、オデン屋の女将、紙面には出て来ないが別居中の娘等のさりげない描写が作品に奥行きを与えている。事件現場や工場等に関する精緻な描写はいつも通り健在である。

無為な生活から一転して現役時代の輝きを一瞬取り戻す。しかし、結局は目前の日々を地道に生きて行くしかない。ハデな演出を意識的に排して、生きて行く事の困難さ、それでも地道に生きて行く事の大切さを謳った傑作短編集。
100m走の緊張感
 高村薫というと 長編豪腕作家で鳴り響いている。数ある伏線をたどりながら やがて大きな結末を迎えるという姿はフルマラソン、いや 100kmを走るウルトラマラソンと言っていい。そんな長距離ランナーが 短距離走に出ているのが短編集である本作である。

 見事と言ってよい。どの作品も短いながらも それが短編であることを忘れさせる濃密な時間が満ちている。高村十八番の 犯罪を切り口とした人間をえぐる純文学が 闇の中に息づいている。堪能という言葉があるが 正しく 高村純文学を堪能させる。これは高村薫の他作のレビューでも言っているが 彼女は犯罪を題材とした純文学者である。ドストエフスキーの「罪と罰」が 良い比較であるべきだ。

 思えば陸上の100mの決勝戦も見ていて 濃厚である。競技自体は10秒を切る時間だけしかないが それまでの緊張感は圧倒的である。同じ匂いが本書からも漂ってくる。
元刑事が主人公。重厚な味わいの短編4作。
 元刑事が主人公の短編4作。斬新なストーリーでもないし、あッと驚くような展開があるわけでもない地味な短編集だが、愚直な主人公たちが織り成すストーリーは、硬くコクのある話しに仕上がっている。
 社会を底辺から見上げる元刑事たちの姿に哀愁が漂う。
短編の味わいを十分に堪能できる作品
表題作を含めた短編4作が収められた本作は、いずれも中高年の元刑事。
やむにやまれぬ事情から離職したが、刑事としての性癖をなかなか捨てきらずにいる姿、心の葛藤が良く表現されている。
短編ではあるがそれぞれの中身が濃く、読後には長編を読み終えたような充実感がある。それは、構成力、人物の内面まで描ききった著者の技量の賜物であろう。
良い作品であり、お勧めできる。