シドニー! (コアラ純情篇) (文春文庫)

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シドニー! (コアラ純情篇) (文春文庫)


文芸春秋

価格(new/used): 470 円 / 81 円 より
発売日: (2004-07) アマゾン売上ランキング: 85978 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 11件

メダル5個はさびしかった
 シドニーオリンピックの取材日記。トライアスロンを観たり、野球やサッカーを観たり、行きたいところに行って好きなように文章を書いているというかんじです。同時に肩の凝らないオーストラリア旅行記でもあります。街の風景は作りそこないだったり、道路の樹木はいやいや生えてるみたいだったりで、そこには褒め言葉はあまりありません。でも読んでるとどんなふうに作りそこないなのかどんなふうにいやいや生えているのか一度オーストラリアに行ってみてみたくなりました。実際に行けるかどうかは別にして・・。
巧い 巧すぎる
シドニーオリンピックを取材した日記風ルポ。軽やかな村上エッセイが楽しめる。しかしこういう「軽い」文章を挟み込むように、作者が作家として渾身の力をこめた(と感じられる)アトランタを走る有森裕子の心象風景が一人称で語られる「作品」がおかれ、それがこの本を単なるエッセイ本とは一味違うものにしている。

村上春樹は 巧い 巧すぎる。 本の構成も、有森裕子を語る「作品」も。 
まあ、この人について色んな批判を言う人もいるけどさ……
 一部の作家と評論家が村上春樹に対して批判を述べている。まあ、私たち一般人はそんなものなんぞには「ハナクソを顔面に刷り込む」かのような無体なことをするまでもなく無視をすればいい。まあ、合う合わないはあるだろうが、そんなものは人付き合いと同じだ。ほっとけ。
 大体、文章家としての才能を村上春樹という人物が十全に持っていることは作品を読めば明らかだからだ。それはエッセイやノンフィクションにも出ているし、当然ながら小説にも出ている。
 で、そんな村上春樹が「ジャーナリスト」(笑)としてシドニー・オリンピックに行ったわけである。現代日本文学において純文学業界全体にセメントマッチを挑むかのような姿勢を貫き、日本の文壇の存在を黙殺し、ひたすら読者と向かい合う極めて男気のある人物である。
 当然、内容は普通ではないし、なるはずもない。冷静にオリンピックを観察し、オーストラリアについての文明批評的な解説も行い、合間にアイデアの発端が全く意味不明なジョークを突如としてぶち込んだりする。凄い。この文章の技巧。批判する作家と評論家達は真似ができるのかね? せめて半分ぐらいのことは出来てから言いましょうね。残念だけど、君たちの声は私たちには届かないから。
商業主義とアスリート
シドニー・オリンピックの話ではあるが、昨今の商業主義的オリンピック全体へのシニカルな目線は今でも通用するのではないか。
一方で、ランナー村上春樹として、アスリートの息遣いとシンクロしたレポートは思わず引き込まれる魅力を持っている。
幕間に描かれるほのぼのとしたオーストラリア紀行も良い。
わかりやすく村上的にオリンピックの意義を問う秀作
単行本は1冊だったけれど、文庫になって何故か2分冊に増えた。必然性は感じない。少しでも高く売ること以外に、どんな効用があるというのだろう。そりゃ、村上春樹の本はよく売れるだろうけどね。でも、こういうやり方はいつまでも通用はしない(させたくない)と思う。

文体は村上節全開で、私はずっと求めていた「村上春樹の文体の秘密」を、まるで教科書に対する教科書ガイドを見るかのように、本書で理解してしまった(つもりです-具体的には、秘密)。シドニー・オリンピックは私にとってもすでに回顧の対象になるほど古い出来事になったし、それにそれほど大切な思い出じゃない。しかしこの作品はたぶん優れたルポだったんだろうと思うし、また、スポーツ選手の心理や生理を見事に描いてくれたことも、特筆に値する。純文学作家村上春樹ではなく、どちらかというと村上朝日堂の文章であるが、けっこう重い考察もあって、これはたぶん彼にとっても満足できる作品だったのではないか、と思う。