約束された場所で―underground...

- 文芸春秋 価格 ¥ 500
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約束された場所で―underground 2 (文春文庫)


文芸春秋

価格(new/used): 500 円 / 200 円 より
発売日: (2001-07) アマゾン売上ランキング: 102409 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 24件

この本からは大きな宿題をもらった(夏休みだけでは終わらないでしょう…)
今週から夏休み。疲れて座布団を敷いて寝転がったところ、村上春樹さんの『約束された場所で』が目に入りました。そこで再読しながらうとうとしました。オウム真理教の信者へのインタビューが収録されています。河合隼雄さんとの対談ではチャップリンの『殺人狂時代』の話題も出ていましたが、善意から生じる悪にどう対処したらいいのか、そして悪をどう抱えていくのかという解けない問いが浮かんできて、大きな「宿題」をもらったなぁと感じました。夏休みだものね…、宿題はあるよね。

追記:298ページに「相手のどこかひとつ好きなところをみつける」という話がでてくる。これはどの職種でもどんな場面でも有効な手法だと感じた。
深い空井戸の底で
・信者たちは入会当初は人間の普遍的な宗教心に随ったまでだ。
・できれば現時点でも強固に信仰を維持している人にもインタヴューして欲しかった。
・村上文学とは共通点が多い。同じ時代精神から出現したものだろう。実際「ねじまき鳥クロニクル」の、家族の突然の出奔、コミュニケイション不能、心の底にまで降りていって異界から決死の覚悟で連れ帰らねばならない、という物語は、こうした団体に家族を奪われた人たちの話とソックリだ。
・誠実に答えている人が大部分だが、そうでない人もいるような気がする。所々、話にひどく飛躍があるので何となく分かる。
・「現世否定と破壊衝動の結合」がこの宗教の特徴だ。だから同じようなことを何度も繰り返すだろう。
・それにしても何故あれほど人相が悪く、喋り方も憎々しげな男に魅惑されたのかという当時からの疑問は解けなかった。

ルポ嫌いの心にも響く深みのあるルポ
村上春樹が、オウム真理教徒(元教徒や、現在もその精神を引き継ぎ信仰している人など)にインタビューしつづったルポ。

現実嫌い、ルポ嫌いの私でしたが、著者の小説が好きで手を出しました。これは、現実嫌いルポ嫌いの人のほうがより感情移入でき読み込めるルポだと思います。特に漠然と世の中に対する不信感、世間への不満を感じ「世は生きづらい」と思っている人に。

「世の中の、日常にかまけて人生を見つめようとしない人に自分はついていけない」
「そんな中でオウムは自分にとってのユートピアだった。そこでなら、人生について考えている仲間が出来た」このインタビューの中の多くの信徒たちの考えはこのようだと思います。

…初めてこうなったのは自分だったかもしれない、と思いました。マスコミに喜劇的・狂気的にえがかれた教団の実態がこうであったこと。


最後に著者と、ユング派心理学者 故河合隼雄氏の対談が載っています。両氏の対談も、非常に面白い。非常にニュートラルな視点で全く新しいオウム事件のみ方を示しています。

通常のルポと違い、一人ひとりの精神面、思想面を傾聴するというスタイルで書かれた、非常に深みのあるルポ。内容の濃い、一読の価値のある本です。

なぜあのような事が起きたのか
逆説的ですが、オウム脱会者のクンダリニー覚醒などの体験談は神秘体験を知るうえでとても参考になると思います。私は村上春樹の小説はあまり読まないので小説家としてはどうかはわかりませんが、この本を読む限りでは彼はインタビュアーとしてとても優秀な仕事をしていると思います。
信者の人間性
オウム真理教による地下鉄サリン事件の被害者側からの視点を捉えた『アンダーグラウンド』とは逆に、オウムの元信者からの視点を捉えたのが本書『約束された場所で』。

本書を読んで思ったことは、オウムの信者の人たちも、或る意味では深刻な「被害者」であるということだ。何の「被害者」かと言うと、この汚れた合理主義・唯物主義に支配された「現代社会」のである。
普通の人たちが見て見ぬ不利をして誤魔化すところを、多くが高学歴エリートである彼らは、真面目過ぎるがゆえに、突き詰めて考え、それで救いを求めて新興宗教に走ってしまったのだろう。
実際上、極めて「人間的」な苦悩を抱えた彼らの素顔が垣間見られた。「純粋」と「狂気」は、まさに紙一重であろう。
それでもあの事件を起こしてしまったということは、何がっても善い筈はなく、絶対に赦されざるべきことであるけれど。

最後の村上氏と河合氏との対談もすごく深くて興味深い。自らの「悪」を捨て去ろうとするのではなく(それを目指すとオウムなどの宗教に進んでしまう可能性がある)、その内面的「悪」を自覚したままで、形式的に「善」とされる常識に沿って生きていこうと思った。また、私自身、学問的に宗教には興味あるけれど、決してどの宗教にも染まらず、本書の村上氏のように、ニュートラルな視点から関わっていき、世界認識の手段としていこうとも思った。

いずれにせよ、現代の社会病理を再考察するためにも、『アンダーグラウンド』と合わせて読まれるべき書物であると思う。