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高丘親王航海記 (文春文庫) |
| - 文藝春秋 価格 ¥ 470 | |
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文藝春秋 価格(new/used): 470 円 / 10 円 より 発売日: (1990-10) アマゾン売上ランキング: 32151 位 文庫 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 9件 天の蒼穹へと融け入るような七つの夢幻譚夢と現実のあわいを行き来しているうちに、一体どちらが夢でどちらが現実なのか分からなくなってくる、そうした味わいにするすると引き込まれてゆく連作短篇集。そこには、モーツァルトの20番以降の「ピアノ協奏曲」を彷彿させる調べがあり、自由の境地に遊ぶ清澄な美しさに魅了されました。 六十七歳というのに童子のように天真爛漫な御子(みこ)こと高丘親王が、数人の従者とともに天竺へと向かう道中の、不可思議な話を記したファンタジー。「そうれ、天竺まで飛んでゆけ。」の言葉をモチーフにして、夢のエッセンスのような幻想譚が展開されていくのですね。久しぶりに再読したのですが、これはやっぱり素敵な幻想綺譚だなあと酔わされましたね。 さらに、妖しい感じが、ドラコニア王国の主・澁澤龍彦の面目躍如たるもの。江戸時代の絵師・伊藤若冲(じゃくちゅう)の、鳳凰を描いた「老松白鳳図」という絵に漂うエキゾチックな妖艶美と気脈通じる味わいに、うっとりとさせられました。 澁澤龍彦の小説では、『唐草物語』『ねむり姫』『うつろ舟』もそれぞれに珠玉の短篇集だけれど、ただ一冊だけとなれば、この遺作を選びます。はるか天の蒼穹へと融け入るが如き、七つの夢幻譚の香り高き調べ。絶品、と言うしかありません。 もっとお元気な頃に執筆して頂きたかった...云わずと知れたザ・「渋沢達彦の遺作」です。 病床にありながら、このような起承転結のしっかりした幻想的な連作ものをお書きになれたのは凄いとは思うものの、文中、余命幾許もないご自身と高岡親王の姿を重ね合わせているような、それでいて突き放した理性的な観察者としての目がいつもあるような気がして、ある意味やり切れない気もします。 不思議な文物や、歴史の中の一コマが、東方見聞録だか西遊記を思わせる昔の神話的で荒唐無稽な東南アジアを行く親王方の目に触れると言えば、多分にロマンティックな響きもありますが、今まで渋沢氏が数々のエッセイの中で俎上に取り上げてきたネタの一部のみを切り取り、旅行記に仕立て上げたともいえると思います。腐っても渋沢なので、かなり使い古した題材を使っていても、とても面白い読み物にはなっていると思うのです。 それでも...幻想的で多分に散文的過ぎる余り、ストーリー全体よりも一シーンの色彩のみが強烈に脳裏に焼けついてしまう、お若い頃の小説が好きだった身としては、幻想や表現の暴走が無い極力無駄を省いた文体で構築された堅牢な楼閣といった風情のこの著作に対して、無条件でサイコーと云えないのです。悲しいことに。特に、それが主人公の死に集約する為に使われ、そして氏の遺作となってしまった事を考えると、複雑な思いで一杯なのでした。 願わくば、もっとお若い頃に、幻想やエロティシズムの暴走をコントロールしきれない頃に、この連作を書いて頂きたかったと、ヒネたファンは思うのでした。さぞや荒唐無稽で、エロで、グロで、耽美だったでしょうに。 ただただ手を合わせたくなる作品博学・自由・幻想・愉快・怪奇・転生・生命・快楽 西洋哲学から東洋思想へあらゆる思想を網羅しての遺作。しかし、決して説教くさくない。 大学時代には読んだときは、この人面白いなぁとしか思わなかったが、歳をとって読み直してみると、泣いてしまった。 渋澤龍彦は本当に本当に天才だったのだと思う。 人が持つ知的好奇心と性的好奇心を渋澤龍彦が生涯通してもち続けたとういこと。エロティックでありながら、上品さは決して失わない。 知らないことを知ること、めくるめく愛欲に想いを馳せること、その人間として根幹的な欲望を彼はわたしに与えてくれる。 そして、その欲望を誰よりも追求し、知的・性的快楽に身をゆだねることができたのが渋澤龍彦本人ではなかったのだろうか。 これから歳を重ね、またいつかこの本の手にとるだろう。 1ページ1ページめくり、幻想に浸る。 そして、私はそのときまた涙すると思う。 本当に本当にいろんな人に読んで欲しいと思う。こんなにも素晴らしい作家がいることを知って欲しいと思う。 いっそ、澁澤龍彦のように、読書中に死にたいと、私は思う。澁澤龍彦について書く、 しかも高丘親王航海記。 ウーン、書けるかな。 これは、もう、かっての読書少年にとっては聖書のような本。 ただし、黒色の。 手にとるだけで、心が揺れ、 表紙を開くだけで、動悸が高まる。 ひとたび、物語を目にするやいなや、 天竺まで飛んでゆけ、と声がかかり、 その後は、ひたすら身をまかせ、 夢の中に迷うことしかできない。 この本について書くなど、千年、早いと自省する。 いっそ、澁澤龍彦のように、 読書中に死にたいと、私は思う。 エキゾチックというものなのか。作者の小説の中で、一番純粋で美しい小説だと思っています。 そして色気があって慈しみに満ちていて。 人生は旅のようなもの、という言葉があるけれど、少し俗っぽくて好きではありませんでした。しかし、この小説を読み終えて、再び頭をよぎりました。今度は、この言葉が浄化され神聖なものとして。 愛おしい物語です。 |