この国のかたち〈5〉 (文春文庫)

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この国のかたち〈5〉 (文春文庫)


文藝春秋

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身近なものから日本史を振り返る
第5巻は、神道、宋学など、日本の歴史を貫いてきた宗教・思想にスポットをあてた随筆が中心。
でも私はむしろ、「鉄」の項を興味深く読みました。
古代から近代にかけて、この素材が日本の歴史にいかなる影響を及ぼしてきたのか、多角的に論じられています。いまでは何気なく使っている金属ですが、このような身近なものから日本の歴史を振り返る作業も、歴史の面白さといえましょう。
日本の歴史をさまざまな切り口で論じる司馬氏の引き出しの多さに舌を巻く思いがします。
神道と宋学についての重要な論文集
第五巻は、1994年から1995年分を収録している。
司馬は96年2月に亡くなったから、最晩年の随想録である。

大きなテーマは3つ。神道、鉄、宋学である。

司馬は小説家になった動機を次のようにあげている。

 「終戦の放送をきいたあと、なんとおろかな国にうまれたことかと思った。
  むかしはそうではなかったのではないか、とおもったりした。(中略)
  疑問を自分自身で明かし(中略)二十二歳への自分への手紙を書き送る
  ようにして書いた」(『この国のかたち(一)』文春文庫p283』

だから、昭和の戦争の思想的背景となった国家神道と
南朝系の水戸朱子学(=宋学)は、司馬にとっての一大テーマであった。
軍部、とくに陸軍の思想的な純粋性は、明治維新以来の水戸学の影響を抜きには
考えられない。

南北朝騒乱の頃、「軍人」楠正成は「文官」坊門清忠の妨害にあって、
後醍醐天皇に作戦をいれられず、
たった500騎で足利尊氏の大軍に討ち入り、湊川で戦死した。
昭和の軍部が政府を無視して独走したのは、
この正成(=南朝)の悲憤に原因があったのではないか、と司馬はみる。

司馬史観の最重要テーマを扱った論文集である。これははずせまい。