空気と戦争 (文春新書 583)

- 文藝春秋 価格 ¥ 746
home書籍CDDVDゲームソフトウェア家電キッチンおもちゃ・趣味
空気と戦争 (文春新書 583)


文藝春秋

価格(new/used): 746 円 / 95 円 より
発売日: (2007-07-18) アマゾン売上ランキング: 38324 位
新書 / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 12件

民主主義の欠陥
民主主義国家・日本が、民主主義の制度の中で、民主的に、戦争へと突入していった経過がわかる。
独裁国家とは違うが、民主主義国家というのも、最近のアメリカもそうだが、怖さがある。
空気に水を差すことの難しさ
本書から読み取れるのは、黒を白にしたと言うよりも、数字にほんの少しのさじ加減をした程度のことが重なり、明らかに負けるとわかっていた戦争に突き進んでしまったと言うことである。そのさじ加減をさせたのは「空気」で、さらに「空気」はさじ加減に対しての異議も許さなくなる。

これは現代にも続いている問題で、官僚のみならず、マスコミや学者が出してくるデータにも「空気」の力が働いていると思えるものが少なからずある。そして、空気が読めない人は非難されても賞賛されることがないが、実は「空気に水を差す」ことに比べたら、「空気を読む」ことの方がずっと簡単で楽なのことなのである。

私はずっと、軍国主義者によって戦争が引き起こされたと言う学校教育を受けてきたが、「空気」によって戦争が起こったことや「空気」の恐ろしさ、「空気」に水を差す方法などを教えている学校はあるのだろうか?
猪瀬 直樹・版「空気の傾向と対策」
先ず、本書に登場する当時の若人のはじき出した、石油需給予想や日米開戦シュミレーション結果の驚くほどの正確さに注目した。現在とは比べ物にならない情報量の少なさやインフラの貧弱さにも拘らず、レトロスペクティブな検証にも耐えうるものだからだ。

次に、本書に登場する当時の軍人や官僚が極めて冷静な言動をすることにも驚いた。アメリカ映画や日本のドラマで描かれる、戯画化(caricaturize)された軍人像とはあまりにも掛離れているからだ。実際の取材や資料で検証されているだけに、本書に登場する方が実像に近いのではないかと思われた。

そして、このように冷静で優秀な軍人・官僚を多く部下に持ちながら、当時の指導者・政治中枢はなぜ誤謬を犯してしまうのか。意思決定における、数字データの誤用や自己責任の放棄を日常的とする官僚主権に、猛威を振るう「空気」が作用したことに起因したとも読める。本書でも引用されている山本七平氏の「空気の研究」にもあるように、「空気」の呪縛から逃れることは極めて困難であるとの印象を強くした。戦後、民主主義と名を変えても先の意思決定の仕組みは、脈々と現在の官僚機構にも受け継がれていると思われるからだ。

結局、今後も「空気」に対する挑戦と研究の継続を著者にはお願いするとともに、「空気の読めない人」にならぬように気遣う昨今の若者に対しては、本書を推薦しようと考えている。
「KY」の怖さ
猪瀬さんらしい切り口としてみれば「お役所仕事(官僚主義)」は今も昔も変わらずの無責任体質が受け継がれてると言う感じでしょうか。
「戦前は軍国主義、暗い時代、北朝鮮のような軍部主導の独裁国家、
敗戦後はアメリカの指導により平和主義で明るい時代に変わった」
というのが、戦後の教育を受けた日本人の一般的なイメージだと思われます。
が、本書を読むと、戦争前後で歴史が切れているわけではなく、ひとつにつながっているんだということを改めて認識させられます。
理科系大学の学生向け講義と言うことで、あまり歴史に詳しくない方でもすんなり読める内容かと思います。
戦争についてちょっと調べてみたいと言う方にはちょうど良いかもしれません。

近頃「KY・・・空気読めない」という言葉が世間で言われていますが、空気を読んで周りに迎合していったことが、戦争突入への一因であったとも言えるのではないかと思います。
大きな声、一方的な意見、周りの空気に流されるのではなく、データを踏まえて論理的に考え、自分の判断で行動していくことが求められているのではないかと感じさせられました。
太平洋戦争の原因は何か
戦争と空気の主張は個人は空気に流されやすいので、自分の考えを正確なデータに基づいて組み立てなさいと理工科系学生に説いています。戦争の原因は空気にあると示唆しているのですが、どんな問題も複数の原因が重なって結果をつくるのが社会現象では一般的だと思います。本の中に指摘されている他の原因は

1.海軍が太平洋戦争の主役にもかかわらず、陸軍が開戦を主導してしまい、陸軍は自分が傷つかないので、無責任な主導をした。
2.石油の貯蔵量の把握が大雑把で、戦争を遂行できる量が無いにもかかわらず、あたかも十分であると言う統計が作成された
3.開戦をすることを前提に石油需給データーが改竄された
4.負けると予想したシュミレーションは机上の空論として隠された
5.憲法が責任の所在を明確にできない欠点があり、無責任な決定がなされた
6.ABCD包囲網でエネルギー資源が枯渇し、座して死を待つより戦いに賭けろ
7.アメリカが挑発し、開戦した戦いを受けただけだ

著者の言いたい点は、上記原因は、新たな戦争の原因にはならないであろうが、空気は今でも原因となりうるので注意が必要だと主張していると理解しました。

空気はムードともいわれ、社会的環境の性質であり、環境は環境の中にいるものにとっては、意識できないもので、現在という時間が離れた環境の下では、過去の環境を定義することができるが、当時は意識されていなかった。