複眼の映像 私と黒澤明

橋本 忍 - 文藝春秋 価格 ¥ 2,100
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複眼の映像 私と黒澤明

橋本 忍
文藝春秋

価格(new/used): 2,100 円 / 2,800 円 より
発売日: (2005-10-25) アマゾン売上ランキング: 6140 位
単行本 / 通常4~5日以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 11件

脚本の重要さを知るために
橋本忍というシナリオライターのことは、黒澤明の映画だけでなく小林正樹の「切腹」や「上意討ち」でも目にしていて、いずれ詳しく知りたいと思っていたので、この本に出会えて本当によかった。いくつか教えてもらったことを羅列する。シナリオライターとしては、橋本忍が伊丹万作の唯一の弟子であった。「羅生門」は、橋本忍の処女作であった。黒澤明は頑固な人間であったが、一瞬の閃きを掴むためにはその頑固さをかなぐり捨ててめくるめく跳躍をする。「切腹」は、黒澤との共作になるはずだった「侍の一日」という未完作が形を変えてよみがえったものだった。「侍の一日」が葬られた理由は、江戸前期の武士の生活が日に二食であったか三食であったか資料で確かめられなかった結果であった。「侍の一日」の代わりとして考案されたのが「七人の侍」であった。「七人の侍」以降、黒澤はライター先行型の作り方から、共同脚本の方法へと転換した。その時に、橋本忍の代わりに黒澤の相棒になったのは菊島隆三や井出雅人らであった。そのほか、黒澤の映画について、シナリオの書き方について、野村芳太郎や森谷司郎について、「影武者」や「乱」について、なるほどと思わせる洞察が山ほどある。映画を深く味わいたい人、黒澤ファン、にとってはぜひ座右に置いておきたい本である。
夏がきて、秋が来る
 黒澤作品の共作者の1人,そして、戦後屈指の名脚本家、橋本忍の独白が心に迫ります。
 サラリーマンから脚本家へと修行していく様、独特の作劇術、黒澤明との出会い、そして、別れ。黒澤明と脚本家達との、共同作業というよりも、決闘に近いような執筆。
 す、すごい!読んでいる私としては、驚嘆するしかない。黒澤作品とはこのような重圧のひとつひとつから出来上がっている。
  小国英雄(黒澤作品の最大の共作者)が著者に向かって発した「シナリオとは、冬があって、春が来て、夏が来て、秋が来る・・・こんな風に書くんだよ」シナリオライター志望としてはこの言葉、重く感じます。

 
シナリオ教室の先生から絶対に読めと言われました。
 内容もさることながら、この本に巻かれた帯のコピーがとてもいいのです。
 「なぜだ、なぜ出来ないんだ!俺は二ヶ月も待ってたんだぞ!」
 この言葉に、苦闘している橋本先生の顔写真がシンクロして、最高の表紙に仕上がってます。

 拝読された後に必ず「羅生門」「生きる」「七人の侍」を鑑賞したくなるので、予めDVDを用意しておいた方がいいかもしれません。

 これは、テレビで育った現代人の悪い癖だとお叱りを受けそうですが、DVDには日本語字幕設定があるので、映画は、台詞を字幕スーパーで追いながら観賞されると、脚本の奥深さをさらに堪能できるかと思います。

 黒澤一家は、全員が呑みながら脚本作りをされていたのかと思っていましたが、橋本先生だけは違っていたことに、気持ちが穏やかになりました。
 今の映画制作者たちが、そこんとこばかり真似をして、制作費の半分を呑み代に費やし、駄作ばかり作っていく現状に、私は苛立ちを感じています。
 黒澤の真似するなら、この本読んで、もっと他の所を真似しなさいよ!と言ってやりたいです。

 面白い映画って何なの?という素朴な質問に的確な答えを出している本ではないかと思いました。
創造する全ての人に勧める
とても面白い。時間を費やす価値のある本。創造的な仕事の現場があからさまになることは少ない。創造的な仕事の現場にいた物だけが知りうる示唆に富んでいる。そして成功体験から抜け出すことの難しさ、あえてそれに挑み挫折しながらももがいていく姿が描かれる。黒澤への鎮魂歌は同時に全ての創造家への鎮魂歌であろう。頂点を極めた物のみが見ることができる世界とそれを経験したチームの眼を知ることができる貴重な読書体験を与えてくれる一冊である。
黒澤明の最大にして最後の相方
黒澤明を語る最近の著書はもっぱら「影武者」や「乱」以降の晩年の出演者が中心で、みな絶賛ばかりと物足りない、黄金時代を知る人々は皆鬼籍に入ってしまったと思いきや、黒澤明の最高傑作群である「羅生門」・「生きる」・「七人の侍」を第一稿から着手した共同シナリオライターである橋本忍氏自身による著作をまさか読む事が出来るとは、夢にも思わなかった。間もなく90歳もなろうとする著者は、「切腹」・「白い巨塔」・「砂の器」など単独の執筆作品でも数々の名作を生み出した日本映画史に残る脚本家であるにもかかわらず、人生の最晩年に描くべき自叙伝とも言うべき著作が、黒澤作品に焦点を絞って描かれた事は非常に驚きであった。黒澤ファンには喜ばしいが、他の橋本作品に思い入れが深い人にとっては、やや複雑な思いではなかろうか。
人物造詣を徹底的に掘り下げることで傑作を生み出すことを黒澤から学び、その後一人の脚本家として大いに活躍していった著者であるが、「複眼」から過剰な「主観」に陥り人物の掘り下げを怠った晩年の黒澤作品に対する手厳しい描写が非常に興味深い。いずれにせよ、世界でも稀に見る(黒澤明を含む)一流の脚本家による共同執筆の実際が、正にその当人によって著されたことは、映画史における史料価値としても、物凄く価値のあることではなかろうか?


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