波の絵、波の話

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波の絵、波の話


文芸春秋

価格(new/used): -- 円 / 271 円 より
発売日: (1984-01) アマゾン売上ランキング: 28059 位
単行本 / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 2件

20年前の村上はお洒落な作家だった。
 稲越という写真家の写真と 村上の文章のコラボレーションで作られた。写真集というべきか エッセイというべきか 分類に迷う。勿論 分類という作業自体には 何も意味はないが。

 1984年に刊行された本だ。

 1984年というと、時代は まだバブルという言葉を得ていない頃だ。ニューアカデミズムがはやり YMOが全盛期。ぴあで名画座の上映予定を舐めるように見ていた時代だ。

 村上は 当時はスタイリッシュな都会小説を書く作家だった。そんな「お洒落」なムードが本書にも香り高くまとわりついている。そうして そんな文章を彩る稲越の写真も 海を自在に切り取っている。

 村上の幾つかのエッセイの切れ味の良さ、切りとった海の美しさ。これを今の人達にもう一度見せたいと思うからだ。
若き日の思い出深い一冊
会社の独身寮に住んでいた頃、まだ車も無く遠出できるだけ懐に余裕も
無かった為、ひたすら海に憧れていた。冬はスキーに全精力を傾け、夏は
仲間や彼女と海に繰り出していた学生時代が懐かしく、自室で音楽を
聴いたり、本を読んだりして余暇を持て余していた。
梅田の紀伊国屋書店でだったと思うが立ち読みでこの作品を見つけた。

今はもう手にできない輝いていた季節の残照みたいなものを感じて
なけなしの小遣いをはたいた。これで次の日曜日の昼飯はインスタントラーメンか
3個入りロールパンか・・・・と溜息まじりになりながら。
完全週休二日制にもなっておらず、まだまだ終身雇用が当たり前だと
思われていた時代のフォークロアと言えるかも知れない。

内容は陰影に富む波のいろんな表情をシャッターで切り取ったページと
村上氏の洒落た文章の織り成すタペストリーの趣。
ひと夏の終りに振り返ってページをめくると何とも言えず
不思議な気持ちに包まれます。