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岩倉具視―言葉の皮を剥きながら |
| - 文藝春秋 価格 ¥ 1,600 | |
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岩倉具視―言葉の皮を剥きながら文藝春秋 価格(new/used): 1,600 円 / 1,100 円 より 発売日: (2008-02) アマゾン売上ランキング: 34690 位 単行本 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 5件 もう一つの岩倉論小説家の永井路子女史による岩倉論である。 以外や以外で、妄想で書くわけではない。かといってアカデミズムのように堅く書くわけではない。とはいえ、基礎文献と一次史料を読みこなした上で、永井史観ともいうべき結論に達するわけであるが、岩倉の政治生命が明治元年で終わったという見方については承服しがたい。 岩倉はこの後、朝権維持の為に、死の直前まで闘うのだが、永井女史には政治の表から去った岩倉に魅力を感じないのか?この部分は小説家の好みの問題であるから仕方ないのか。 それでも、岩倉にとって濡れ衣とも言うべき孝明天皇毒殺について、「岩倉が真犯人でないからこそ、歴史に悪名が残せなくて残念である」と皮肉って書いているのはご愛嬌。無論、悪意で書いているわけではなく、岩倉を真犯人呼ばわりした文筆家に対する毒舌である。明治維新研究家でもある石井孝氏も、紙上で永井女史に叩かれているのには苦笑してしまうが。 兎も角、永井女史による岩倉への愛情というか、そういったものをほのかに臭わせる本ではある。 ある政治的人間の肖像読む前は特段の理由はないものの、ツヴァイクの『ジョゼフ・フーシェ』のような書を想像していたが、内容的には岩倉具視の評伝というよりは、永井版幕末維新史という印象。幕末期の朝廷内部の抗争を中心に、公家・大名入り乱れての「権力レース」を切れ味鋭い想像力で描いており、まずは堪能できる。(大河ドラマ『篤姫』のいわば副読本としても好適。)個人的には、王政復古が幕府だけではなく摂関制度も廃止した点に、薩摩と下級公家としてルサンチマンを抱えていた岩倉の協働を看て取る視点(史観)が印象に残った。 女性作家の感性で迫った明治維新の人物像岩倉具視の写真が残っている。小柄ながら眼光鋭く胆力のありそうな面構えで、とても公家にはみえない。そのせいか岩倉具視が頑迷な攘夷主義者である孝明天皇を毒殺したという話が本当に思えてしまう。岩倉具視は明治の元勲のなかでは遣欧米特命全権大使として大規模な使節団を率いて視察したことはよく知られているが、維新史のなかでの役割は余り明らかでなかった。著者は岩倉具視に焦点を当ててその人物像に迫る。 維新史を語る上で「尊王攘夷」、「開国派」、「公武合体」などのキーワードはとても便利である。しかし、例えば「尊王攘夷」という言葉はある時期になると、実際は幕府を困らせる「倒幕急進派」のスローガンに化してしまう。著者は女性らしい鋭敏な感性で「言葉の皮を剥きながら」丁寧に真実に迫っていく。岩倉具視は何度もの挫折にもめげず、蟄居中にも情報入手や交換に対する執拗さ、そして機を見て献策する不断の努力家の面が語られる。また、岩倉具視だけでなく、孝明天皇、徳川慶喜、井伊直弼、島津久光などの評価についても先入観の見直しを求められよう。言われてみて初めて認識したのは、錦旗を掲げた「東征に大名の姿なし」である。このことに気がついたのも女性の感性であろう。維新史に詳しい人にも是非お勧めしたい本である。 俗っぽい講談調の歴史談義に過ぎない「尊皇攘夷」「佐幕」「王政復古」といった『手擦れたキー・ワードを一切はずす』、そういう虚偽の衣装をまとう『言葉の皮を剥ぎ』、岩倉具視の人物像の真実に迫るという、たいそう魅力的な意気込みによって書かれたという。 が…、内容は、俗っぽい講談調の歴史談義に過ぎなかった。主観的な合いの手がポンポンと調子よく入るのがかえってじゃまでもどかしい。高らかな口調もどこか決め文句だらけで、リアリティや格調に欠ける。よけいなお世話みたいなセリフばかりで、かえって物足りないのだ。 岩倉の功績は、「倒幕」と対をなした「摂関政治」打倒にあり、薩長の下級武士と呼応した下級公家の首魁だったという図式はわかりやすい。そのモチベーションが、「君側近の臣」への政治的野望であり、それを阻んだ中川宮、二条の追い落としだった、というのも真実ではあろう。 確かに、政治というものは、今も昔も正統や大義名分を掲げての権力闘争なのだろう。「攘夷」とは「倒幕」のため権謀術数を覆い隠すスローガンに過ぎない、というのもわからないではない。改革という「錦の御旗」を掲げていれば、いやしい「政局政治」がいつのまにか「政権交代」に結びつくとも限らない。 しかし、天地をひっくり返すような革命をなしとげてしまった幕末から明治への複雑な政治過程と多士済々の人物の実像は、それだけではとうてい解明できないだろう。結局は、岩倉具視という人物のもどかしいばかりの不明朗さばかりが、しつこい後味になって残ってしまった。 確かに面白いが・・・この本は岩倉の出生から死去までを伝記的に取り上げた本ではなく、タイトルにあるように、幕末・維新に出てくるキーワードを手がかりに、岩倉の実像を掘り下げていくというスタイルの本です。岩倉の本は少ないので、その面でも貴重と言えば貴重で、宣伝帯に「評伝の最高峰」という売り方をするのも分かる気がします。孝明天皇暗殺疑惑を明確に否定する著者の論拠には、なるほどとおもわせるものがありますし、結構面白い。ただ、ひっかかるのは、岩倉のが発言などがどこかから引用されていることが多いが、その出典がいまいち明確でないところが少なくないことです。私は海音寺潮五郎の史伝が好きですが、それに比べると、その綿密さがやや見劣りする感じがします。最高峰というのなら、やはり出典をもう少し明確にして、本格評伝に耐えるものにしてほしかった。 |