箱崎ジャンクション

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箱崎ジャンクション


文藝春秋

価格(new/used): -- 円 / 172 円 より
発売日: (2003-10-09) アマゾン売上ランキング: 410253 位
単行本 / 在庫切れ
[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 3件

読後の快感は結構なモン
追っていたのは活字のはずなのにいつしか効果音付きの映像が見えていた…って感じ。スピード感と男たちの体臭がホントぷんぷんの一冊。いや〜やられましたな。雨月スタートで二冊目がこれだもん。コストの高い作品って評に納得。藤沢周は粗方読んだ。早く次下さい。
日常ではここまで味わえない感覚を喚起される
もう圧倒されました。読後、しばらくはタクシーが自分の車の、前後左右に近づいてくると、「この運転手さんは大丈夫だよなあ~」と、その表情をそっとミラーで確かめたりしました。室田と川上、2人のタクシードライバーが醸しだす独特の雰囲気。ざらざらした、ひりひりした、暗いもの。滅亡なんて日常には似合わない言葉だけど、まさにその滅亡に向けてひた走る2人。妻との離婚、彼女の再婚に心を憔悴させる室田と、離婚して幼い娘を妻にわたしたものの、娘を一目見たさに埠頭公園に通う川上。2人は、箱崎ジャンクションを接点に近づきあい、絡み合い、やがて縺れあいながら“道連れ”という関係に嵌っていく。憂鬱などという簡単には言い表せない心理。もっとどす黒く動きのある心。タクシーという密室で、繰り広げられる果てしない独白と、カーチェイスさながらの室田と川上の交錯は、ラスト近く、高速道でのクラッシュ覚悟の猛スピードに集約されていく。怖いです。思いつめた人間の心のベクトルは。さんざん2人のそれに付き合わされて、読んだ後、本当にほっとしましたもの。蛇足ですが、今も時々私の頭に不意に“生天目(なまため)クリニック”という言葉が浮かんではぐるぐる回ります。
この世の果ての見える場所
 タクシー運転手室田には秘密があった。毎朝あえて渋滞の箱崎ジャンクションに向かい、そこで精神安定剤を飲みながら、ルームミラーに映る自分を確かめるという作業を行うのだ。ある日その儀式の場に、同業者川上から電話が入り……。都内を縦横に走りながら、客の持つ疲れや鬱屈をおのれの中に澱のようにため込んでしまう室田と、室田の相似形の男川上。二人の対話は加速度的に死を、この世の果てを目指すように思える。

 かつて修行僧、ホテル従業員、予備校講師などさまざまな主人公に憑依してきた藤沢周氏の、今回の入り込み方は凄まじく、藤沢氏自身が、室田になり切るために、命がけでルームミラーに対峙するかのような錯覚に襲われる。私たちは、そんな室田の車に、はからずも乗り込んでしまった客なのか、それとも私たちこそが室田であり、もう一人の自分、川上に翻弄されているのか。
 大江健三郎の初期作品以降、現代日本文学を読む必然性なし、と豪語していた、東京勤務神奈川在住の知己は、「全ての地名に、現実よりもリアルな映像が浮かび上がる。しかもそれは、ひりつくような、澱んだ空気に満ちた車内からの視界だ。」と絶賛した。藤沢氏の視界と、走行感覚を共有し、この車の向かう場所を見届けよう。