心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈中〉...

椋田 直子 - NHK出版 価格 ¥ 1,218
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心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈中〉 (NHKブックス)

椋田 直子
NHK出版

価格(new/used): 1,218 円 / 595 円 より
発売日: (2003-06-29) アマゾン売上ランキング: 154752 位
単行本 / 通常24時間以内に発送
[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 10件

心を人工知能、ニューラルネットと比較して考察
この本は人間の心、脳を人工知能、ニューラルネットと比較し、類似点、相違点を述べるという観点から人の脳や心の特徴を述べるという興味深い手法をとっています。もちろん、進化心理学者らしく、進化の観点からも考察していて、勉強になる本です。
ですが、広い範囲を扱っている分と進化学自体がとても広い分野であること、それにこの本自体日進月歩の分野では古いものになってしまったことなども手伝って、穴も多かったです。
著者の専門外のニューラルネット批判については、正直いつの時代のニューラルネットの話だよ・・・とあきれるような批判も多かったですし、意識についての考察も書かれた時代を想像させるようなアナクロなものだなという感じがしました。
ヒト進化に関する考察も同様で、よく批判されつくしているような狩猟の脳進化説だの、賢いことはよいことだ的な説だの、読んでてどれもこれも過去に出された批判がいちいち頭にフラッシュバックして、落ち着いて読めませんでした。
また、一部の進化系の学者には一般書でものを論じるときに、直接の証拠がないものだから、思弁で、どうよこの論理!というような思弁で読者を「説得」する哲学者みたいな癖がある学者がいるのですが、ピンカーもその典型例です。それで、必然的にというべきか事実と意見の区別がつけられない。
5万年前の考古学的革命についての考察も同様で、この手の学者さん、しかもかかれた10年後から見て見当外れな意見だとわかってしまった意見を連発していた者に、「私は予言する。人類の生物進化が終了した時期はくだり考古学的革命がはじまった年代がさかのぼって両者は一致する」と預言者になられてもそれはあなたの願望でしょと苦笑するほかない。
良書
心理言語に関する本の中では非常に読みやすい部類であると思います。惜しむらくは”訳書”独特の不自然さが存在していることでしょうか。もっとも、訳にケチを付ける権利があるのは自力で訳書を出している人間だけなのでしょうし、それ以外の人間が”誰かが誤訳だっていっているよ”などといっても虎の威を借る狐であり、愚かしいことかもしれませんが。
頭ごなしに偏見を持たずに読んで欲しい一冊
 本書は上中下巻通して、現在のヒトに見られる様々な心的活動が、進化的にどのような「利点」から保持され、洗練されてきたのかという、進化心理学の立場から心を探る内容となっている。その下巻である。
 第7章「家族の価値」は、タイトルこそ平和だが、内容はかなり示唆に富み、人によっては激しく意見が出るジャンル、つまり性差についての内容となっている。とはいえ、最近とみに多い、男脳・女脳の違いという単純な内容ではなく、なぜ血縁者同士の争いと他人の間での争いではその度合いや引き起こす感情に違いが伴うのか、男女が配偶者として選ぶ「観点」が異なるのはどうしてか、さらに「嫉妬」という感情がなぜ存在するのかなど、一見すると社会心理学とも取れる内容となっているが、そこは博学なピンカーである。うやむやな仮説や憶測、トートロジーに基づくことなく、読者に納得させるだけの理由をもって積極的な考察を添加している。単なる男女差異の考察とは違って、なかなかお目にかかれない話が多い。
 最終章「人生の意味」では芸術(音楽・絵画…)という生きていくうえでは一見役に立たないと思えるものがなぜ進化の段階で淘汰されなかったのか、ユーモアの意味は、などといった、引き続き社会心理学的な考察が続く。そして最後にヒトの意識・心についてのまとめとなっているが、認知モジュールの進化的な発達、という点に強く主眼を置いているピンカーは、我々ヒトが意識問題にうまくアプローチできないのは、そういったことを考える認知モジュールが存在していないということにある、と結論付けているようだ。この考察は著作の流れから言うとやや突飛な感じがするが、それでも十分示唆にとんだ内容になっている。身近な問題だけに、純粋に読んで楽しい内容になっている。
進化心理学と人間の認知
 第4章では、見るという何気ない活動も、複雑な「認知」機能の一つであり、ヒトとして進化の段階で発展してきた、という一貫した考察を読み取ることができる。見るということがあまりにも当たり前すぎる現象であるため、どのように研究者はアプローチしていくのか、という話があるが、その突破口が錯視による「異常な見え方」や、コンピュータを用いた逆問題の解答作成など、様々な角度から切り込んでいくのだ、という話が興味深かった。
 第5章は推論という壮大な認知科学のテーマであるが、推論するということが、進化的にどのように役立ってきたのかという進化心理学の立場を元に、ピンカー独自の視点で考察されており面白い。「必要だから淘汰の段階で残ってきた」という単純なダーウィニズムに終わらず、その必要性が必ずしも子孫を残すこと、自分が生きながらえるのに必須ではなく、別の面からそれらをサポートするからこそヒトにおいて発達したのだという考察は面白いし、わかりやすく書かれているため納得しやすかった。
 第6章の情動では、「食」に関する考察が非常に面白い。(文化・地方によるが)西欧などの発展国で虫を食べないのは何故か。たとえ完全滅菌してあるゴキブリをちょっと浸しただけのスープに抵抗を感じるのはなぜか。世界中探しても、「食糞」文化がないのは何故か。虫を食べることは栄養的にも優れているのに避ける、こうした生存する上ではハンデとなりそうな情動が進化の段階で淘汰されずに残ってきた理由を考察しているのだが、非常に納得できなるほどとうなずいてしまう内容だった。
 詳しいことを述べると読む方の楽しみが減ってしまうのでさわりだけのレビューにしたが、上巻の難解さに比べてテーマが身近なせいもあり、理解しやすく共感できる面が多いと思う。お勧め。
考察が広範なだけにテーマを捉えるのが難しいかも
 ピンカーといえば「言語を生み出す本能(NHKブックス)」で有名な言語心理学者であるが、広範な知識を持っており、他の研究者とは一味違う考察を発表することで有名である。
 本書も、心の仕組みという大胆なタイトルになっている(ちなみに心の本体自体が解明されたという内容ではない)。著者は上巻では主にヒトの心、心的な活動が、単なる計算理論では捉えることはできず、現在行われているニューラルネットワークや人工知能(AI)の研究では、限界があるという立場をとっている。
 一般向けに書かれた本としては、内容は煩雑で混乱しやすいところがあると思う。大変示唆にとんだ内容である感じがするのであるが、何回読んでも著者の言わんとするところが見えてこない箇所もあった。著者の知識の広さや考察の広範なせいもあり、読後に「結局筆者が言いたかったことは何なのか」がすっきりとしないのが難点ではあるが、これだけの大著で様々な面からヒトの心について筆者なりの考察が読める本はなかなかないと思う。そういった意味でお勧めであるし、中・下巻を読むのも楽しみになると思う。
 ちなみに上中下巻の章構成はどこから読み始めてもわかるように独立したものとなっているので、興味ある箇所から読み始めると良いかもしれない。私見としては上巻が一番理解が難しいと思うが、考察内容がそれだけ深遠なテーマということである。興味深い論点が多い。