夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

Louis‐Ferdinand C´eline - 中央公論新社 価格 ¥ 880
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夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

Louis‐Ferdinand C´eline
中央公論新社

価格(new/used): 880 円 / 417 円 より
発売日: (2003-12) アマゾン売上ランキング: 14798 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 7件

この世界と和解できない人へ
絶望の果てには奇妙な快楽が潜んでいる。
それに気づいている人は少なくないのだが、
それを追求するだけの勇気と機会と才能を持った人は極僅かしかいない。
セリーヌは、幸か不幸か、その全てに恵まれていた。
この『夜の果てへの旅』には特に気に入った一節があるのでここで紹介したいと思う。
セリーヌを手に取るほどの人ならきっと共感してくれるだろう。
「完全な敗北とは、要するに、忘れ去ること、とりわけ自分をくたばらせたものを
忘れ去ること、人間どもがどこまで意地悪か最後まで気づかずにあの世へ去っちまうことだ。
棺桶に片足を突っ込んだ時には、じたばたしてみたところで始まらない、
だけど水に流すのもいけない、何もかも逐一報告することだ、人間どもの中に
見つけ出した悪辣きわまる一面を。でなくちゃ死んでも死に切れるものじゃない。
それが果たせれば、一生は無駄じゃなかったというものだ」
一線を越えて「果て」へと向かう
たぶん人間には超えてしまったら戻れない「一線」みたいなのがあって、その向こうがおそらく「果て」なのだと思う。
文章中に時折出てくる「果て」のフレーズはどれも、深い森の奥から聞こえてくる嘆きのようにじわりと重く響く。

主人公とその友ロバンソンは、生涯かけてその一線の淵をさまよい歩く。
人生という夜の中、一箇所にとどまれない放浪者が、果てを見すえつつ旅をしている。
一線を越えるか超えないかの話といい、アフリカという舞台といい、なんだかコンラッドの「闇の奥」を思い出すところがある。

戦争を否定し、偽善を否定し、友も家族も愛も嘘だとはねつける。
ある意味、正直で潔癖なのだろう。
だけど否定ばかりのその先には、いったい何が残るのか。

わかるけど共感したくはないなと思う自分は、精神的に健康なのか、それとも偽善に毒されているのか。
あるべき姿、希望はこの本にはない。
だからこそ、ある意味では普遍的だといえるのかもしれない。

印象として、夕闇に沈む光景のような本。
後ろには町の光があるのに、自分は光のない道の先ばかりを見てしまう。
その姿は虚しく、そして物悲しい。
中二病 課題図書
十代で読んでいたらどうなっていたんだろう、と二十代前半ではじめて読んでそう強く思い、最近三十代で読み返してみました。
どこをとってもぐっとくる。
別に年なんて関係ないさと思うけども、やはり二十代前半で読んでおいて良かった、と思いました。
あーあのときのあの感情って、ここからのぱくりだったのか自分、と感じてみたり、いやはや、やはり文学は読み返して、なんぼです。
観察と想像
この小説の主人公バルダミュは、想像力を持ち合わせているのはもしかしたら
自分だけなのではないかと不安になったり、恐怖で発狂しそうになったりする
のですが、決してそれを手放そうとせず、なんだかんだ言いながらも旅を続け、
女性と精神的にも肉体的にも親しくなり、他人を徹底的に観察し、想像力を駆使して、
その人間が何によって自分を支えているのかを捉え、その意味や権威を剥ぎ取りながら、
うんざりして自分を殺すようなことはせずに生きていきます。

不安や恐怖は想像力から発生するのでしょうから、想像してしまうことが鬱陶しく
感じてしまったり、その想像が膨れ上がって怖くなったりすることは誰にでもあること
だと思いますが、想像することを放棄したり、考えることを止めたりしてしまったら
もっとつまらないことになるだろうなと思わせる小説で、なぜか読んだ後、他人と
接するのも悪くないかなと思いました。

絶望と欲望
ここまで人間を卑しく、否定的に語ったものを他に知らない。読中、読後私は厭世観から来る空しさ、鬱屈さとに悩まされ、苦しむばかりだった。まるで主人公のバルダミュ同様に私も徹底的な絶望の果てしない旅をしていたように感じてならない。

絶望の中に僅かの希望もない、どの人間がどんなことを言ようが悪であることに変わりないという主張が一貫して綴られている。客観的に傲慢じゃないかと思われるロバンソンの後半の言動だが、彼に関わった、あるいは関わっている人間たち、社会も、俗悪で無責任で冷たく残酷なのであり、それ故に彼のその言動が論理性を帯びて、むしろ当然の主張だと納得できてしまう。

また、人間の根本的な悪は欲望に通ずることを本書は示していると言えよう。金銭欲、性欲、食欲、病気からの快方欲、名誉欲、自由欲など、本書の至るところに人間の欲望は見受けられる。しかし、そこでは欲を満たせば新たな欲が生まれる欲の連鎖が展開しているのであり、それはとどまるところを知らない。そして、本書の登場人物たちは欲の奪い合い、欲の陣地取り、言わば欲取り合戦を様々な場面で演じているのである。