大衆の反逆 (中公クラシックス)

Jos´e Ortega y Gasset - 中央公論新社 価格 ¥ 1,365
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大衆の反逆 (中公クラシックス)

Jos´e Ortega y Gasset
中央公論新社

価格(new/used): 1,365 円 / -- 円 より
発売日: (2002-02) アマゾン売上ランキング: 70157 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 6件

魅惑の文体、真摯な内容、しかし反作用も
スペインの思想家オルテガが1930年に著した書。その書名「大衆の反逆」は以前から聞いたことがあったが、そのなんか大仰な響きに気後れして、なかなか読むことがなかった。ひょんなことから読んでみると、その読みやすさ、どこか詩的な文体、捉えたら離さない語り口で、最後まで一気に通読してしまった。
ここで「大衆」とされているのは、他のレヴュアーさんも仰っている通り、実社会の特定の階層を指しているのではなく、その特有の諸属性を持った人々のことだ。対照的に挙げられている「貴族」も同様に特定の社会階層の人を指すとは限らず、「大衆」と正反対の諸属性を持っている人々、特に、自分より高次の何事か・何者かに奉仕の念を持って判断・行動し、他人に対してより自分に対して多くを求め、課している生き方を何度も強調している。
 
非常に求心力の強い語り方が最後まで続き、わが身を振り返って身につまされること、反省すべきことを多々感じた。しかし同時に、この書で説かれている事柄、語り方は、社会的高所に立つ人々が下々の人々に向かってそれを用いた場合、非常に抑圧的に、統制の強化を正当化してしまうのではないか、本書の内容に相違して、オルテガの言説もファシズムと強い親和性を持ってしまうのではないか、とも思えてくる。個人個人が読んでそれぞれの内面をチェックするのにはとてもいい本だが、統制者がここでの議論を被統制者に向かって押し付けると嫌な感じになるだろうな、と少し危惧も覚えた。とはいえ、読んでタメになるし、自戒の気持ちも抱ける名著なのは間違いなし。
古典にしては読み易い
『社会学がわかる事典』-森下 伸也 (著)p.136にオルテガの大衆観がまとめられているので、それを紹介します。
大衆の特徴
“1.非常に均質的・画一的で、突出した個性を持たない。
2.何事においても他律的で、他人や世論に同調し、あるいは自分に同調を求める「烏合の衆」である。
3.理想や使命感や向上心など無縁の存在で、自分の現状に満足しきっている。
4.文明の恩恵が自動的に享受できるのを当たり前と思っており、文明や伝統に対する畏敬や感謝の念、また、未来に対する責任感を欠いた「忘恩の徒」である。
5.自分たちが一番偉いと思い、自分たちのわがままをどこまでも押し通そうとする「駄々っ子」である。
6.精神性などかけらも無く、物質的快楽だけを求める「動物」である。
7.以上のような自分たちのあり方を、何が何でも社会全体に押し付けようとする「野蛮人」である。”

この特徴を逆転させたものがエリートだが、オルテガは、上記のような大衆が主権を持っただけではなく、
エリートたるべき指導的階層の人間が大衆化していることが問題だと考えた。
ここまでだと民主主義を否定しているかのように聞こえるかもしれませんが、
オルテガはファシズムやボルシェビズム等の非民主主義体制を強く批判しています。
20世紀を代表する著作
アメリカのとある新聞で、各世紀を代表する書物を一冊づつ挙げるというのをやっていて、18世紀「社会契約説」、19世紀「資本論」、そして20世紀が本書「大衆の反逆」だったそうです。
まさに世紀を代表する著作なのに、なぜか倫理の教科書にはまったく載っていない・・・

内容については、いまさら述べる必要はないでしょう。文明批判の著です。

静かな怒りを、淡々と書き連ねているように感じられました。(いい意味で、ですよ)
ただ、楽しさという意味では、ルボンの「群集心理」の方があるかもしれませんが。
どちらもオススメです。
オルテガの主著
非常に有名なオルテガの著作です。
物質的にどんな時代よりも恵まれているはずの現代の大衆がなぜ好んで文明から野蛮に走り、これまで民主主義社会が必死で築き上げてきた人間性や自律性を放棄してしまうのかが、鋭く分析されています。本来の建設的な自由主義的民主主義と現代の惰性的な大衆民主主義がいかに異なるかを理解することができるでしょう。
ですが、大衆の発生原因やその野蛮な性格については鋭い分析がされているものの、大衆化を抑えるためにオルテガが提唱する案には少しがっかりすると思われます。ヨーロッパ以外の国々の大衆化が度外視されているからです。つまりヨーロッパの大衆化を局部的に防ごうとしているにすぎず、大衆化という現象そのものの打開策を講じているわけではないのです。

ちなみに、ギュスターヴ・ル・ボン『群衆心理』には、簡単な手品を見せられ、それが科学では立証できない神秘的現象であるとして、あっさりだまされてしまう専門家連中のことが書かれていますが、ヒトラーやムッソリーニはこの本で大衆の煽動方法について学んでいます。オルテガの専門主義批判は正しかったということです。
ネタ本としての本書/本書のネタ本
 とても啓発される書物である。
 読み進みつつ、「どこかで読んだ」という思いが消えなかった。
 一つには、これまで(評者アルビレオが)読んだ多くの現代文明批評的な文章が、実はこの本を直接・間接にネタ本にしていたのではないか、という可能性である。もしそうだとすれば、1930年に書かれたというこの書物の偉大さを示すものだろう。
 もう一つは、「大衆の反逆」自身の‘ネタ本’である。それは新約聖書(より広くは、オルテガの育ったカトリック文化)ではなかろうか。
 現代(人)の心理的空虚を語るオルテガの言葉は、「7人の仲間を引き連れて戻ってきた悪鬼」というイエスの有名なたとえ話と重なる。
 当否はともかく、そんな連想が広がっていく、含蓄の深い書物である。