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物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ... |
| - 中央公論新社 価格 ¥ 777 | |
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物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ (中公新書)中央公論新社 価格(new/used): 777 円 / 170 円 より 発売日: (2006-07) アマゾン売上ランキング: 213073 位 新書 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 4件 まじめに経済学の将来を憂う「物語」と銘打たれているように、本そのものは経済学者の考え方や逸話等があっさりと紹介されており抵抗なくすらすらと読んでいけます。ただ、経済学思想の本来の多様性を信じ、その一元化・形骸化を阻止しようという著者の危機意識がビシビシと伝わって来て気が抜けません。基礎となるミクロ・マクロ・計量経済学のハードトレーニングは当然としつつも、“主流”経済学に一見逆らうような異説にも寛容であれ、他領域の学問の成果にも謙虚かつ貪欲であれと説く著者の姿勢に、「教養」とは何かということを教えていただいたような気がいたします。ケインズやサムエルソンなどの大立者の著述・発言を縦横に引用されていますが、いずれも彼らの現状変革・警世の志や学問姿勢が良く判るものばかりで、巻末のブックガイドとともに格好の「水先案内人」の役割を果たしています。 おそらく、学生諸君にも人気の高い教師でいらっしゃるのではないでしょうか。そんな気にさせられた一冊でした。 多様な経済思想の復権のために!根井氏が1999年に刊行した『21世紀の経済学』の序文には、次のような発言がなされている。「いまの経済学者に決定的に欠落しているのは、広い意味での『社会哲学』なのではないか」と。本書はこうした主張を、過去の偉大な経済学者らの思想やその位置づけの再考を踏まえて、更に探求した作品であろう。アメリカ発の「経済学帝国主義」なるものに批判的に対峙すべく、主流派とは異なる「異端派」の経済学や、「代替的アプローチ」(レギュラシオン理論、複雑系経済学そして現代制度主義経済学など)にも目を配り、更には歴史学や社会学といった隣接諸科学との積極的交流を推進させることが重要であるという主張には全く同感である。筆者が唱える「多様性」・「相対化」とは、現在の経済学教育において支配的な(「制度化」された)経済学以外の理論や思想を重視するような「寛容の精神」のことであろうが、もう少し突っ込んだ解説がほしかった。経済理論や思想の歴史が重層的なものであり、豊かな経済学的思考は、「複眼的で動態的な眼」を養うことによって得られるということは、当然といえば当然だからだ。とはいえ、現時点において「多様性」や「相対化」という視点それ自体が希薄であるという問題意識には共感を覚えるし、本書がそうした危機感を読者に伝えるという使命を担っているということも理解できる。著者が、「ケインズとシュンペーターの総合」を試みている吉川洋氏の研究を高く評価しているという背景には、「需要面」と「供給面」が密接に連動していることを問い直し、彼らの問題関心を現代に復活させようとしているからである。こうした吉川氏の研究は、経済学史家にも「経済学の歴史を学ぶことの意味」を改めて考えさせる契機となろう。なお個人的には、第7章の「ノーベル経済学賞の憂鬱」が最も印象深い箇所であった。本書に触れることが多様な経済思想への入り口になればと願うばかりだ。 読者に「経済思想の多様性」を示してみせる、エッセイ風の読み物「経済思想は多様であるからこそ価値がある」との想いを背景に、経済学史に名を残す著名な経済学者(イーリー、マーシャル、ケインズ、サムエルソン、ガルブレイス、ハイエク、等)を1章につき主に1人ずつ取り上げ、読者に「経済思想の多様性」を示してみせる、エッセイ風の読み物。 各人の経済学説の特徴だけでなく、時代的背景、政治的態度、現代社会への視線、等についても触れられており、人物評伝として面白く読んだ。また、1章の長さが長すぎもせず短すぎもしない絶妙な長さで、この分野の本は不慣れであったが飽きずに楽しんで読むことができた。 私自身は経済学について全くの無知(ミクロ経済学とマクロ経済学の区別すらつかないほど)であるため、著者が感じているであろう「経済思想の多様性」そのものを感じとることはできなかったのではないかと思う。また、私なりの経済思想史を思い浮かべることもできなかった(そもそもそれは本書の狙いではない)。それにも関わらず面白く読むことができたのは、ある経済学説の特徴だけでなく、その学説の提唱者である学者その人が描写されていたからではないかと思う。 著者の口調がなかなか偉そうなので、日本経済学界の大御所なのかと思ったが・・・、意外とまだ若い人で驚いた。 現代経済学の歩みを「物語」風に叙説本書は、著者である根井雅弘・京大教授が述べるように「アメリカ型の経済学教育の導入による経済学の一元化が進み、自由な思考にとって最も貴重な『多様性』が失われているという危機意識」(プロローグ)が根底にある。著者のこうした危機感から多彩な経済学説を物語風に、かつコンパクトに解説したのが当書であり、シュンペーターやヴェブレンなどを含めた巻尾の「読書案内」も様々な経済思想を知る上での参考となる。 さて、根井教授は現代経済学の主流となっているアメリカの経済思想を黎明期から今日まで俯瞰し、その多様な論理をサムエルソンやガルブレイスなどの言説を通じて語り、「経済思想は多様であるからこそ価値がある」(本文)として「制度化された経済学」(佐和隆光氏)に対する批判も込められている。このことは同時に、我が国に蔓延する市場原理主義的な経済思想も、決してメジャーなそれではないことを示教してくれている。 また、経済思想の多様性との関連で、当書ではノーベルの遺言にはない「ノーベル経済学賞」(正式には「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン銀行経済学賞」という)の“偏向”にも焦点を当てている。すなわち、当該「経済学賞が広い意味での主流派経済学者に偏って授与されており」、「いわゆる『異端派』がほとんど排除されている」(本文)問題点を証示し(人物も評価対象?)、私としては大変興味深く読ませてもらった。 この新書は、アメリカを中心とする経済思想の諸潮流を物語的に通観しているが、近・現代に係る経済学説史の手頃な入門書としても十分活用できると考量する。当然、現代経済学の形成にあたっては、同書でも1章割いているA.マーシャルを始祖とした「ケンブリッジ学派」の存在が不可欠なわけであるけれども、その点に関しては、伊藤宣広氏の『現代経済学の誕生―ケンブリッジ学派の系譜』(中公新書、06年)を推奨したい。 |