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愛の続き (新潮文庫) |
| Ian McEwan - 新潮社 価格 ¥ 700 | |
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愛の続き (新潮文庫)Ian McEwan 新潮社 価格(new/used): 700 円 / 234 円 より 発売日: (2005-09) アマゾン売上ランキング: 47591 位 文庫 / 通常24時間以内に発送 [ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 3件 巧みな心理描写ある事件を元に描かれる、様々な愛を書いた秀作。 なにかと今注目の作家、マキューアンだけど私は初読。読みにくそうなイメージがあったので構えて読んでみたら、意外に読みやすい。精巧で緻密な文体、難のあるテーマを軽々と読ませてしまう筆力はさすがだなぁと思った。 ストーリーだけを追うとありがちなストーカー物になってしまうところだけど、そうならない。 狂気の男パリーの出現によって、次第に崩れていく主人公ジョー。理解を示してくれない恋人クラリッサへの苛立ち、落ちこぼれの科学者である彼ゆえの落ち方というか、精神の乱れ方の過程を巧く書いている。周辺の登場人物の描写も丁寧に書かれてる。 変質的な男の一方的な愛の話であり、些細な事から崩れだすカップルの愛の話であり、夫が死んだ事で妄想に駆られる妻の話でもあり、多層的な読み方ができる。 なんだか読み終えた後、凄く切なくなった。 辛辣に徹する本書は実際の病(?)を扱っており、巻き込まれる者たちの姿も実例を基にし半分実話のようである。小説的な派手さや爽快さには乏しく無機的な客観が貫き、著者は我々に如何なる救いも慰めも与えようとはしない。現実を曇らせる安易な‘要約化’を徹底的に嫌う。 筆力は尋常ではなく、内面の描写は巧妙を極め畏怖さえ覚えるが、何か後味が悪いのは、著者は問題の‘病’についてさえ単に‘病’と位置づけ(付録として資料つき)配慮も理解も示すことはなく、著者なりの前向きな見解なり立場さえ放棄、主人公同様「科学」の目でしか結局問題を捉えていないように感じるからであり、意図的であるにしても、その態度は「愛」どころか逆に血の通わぬ唯物論的な冷たさ、非情な科学屋(現代の作家?)の姿を印象づけ切なさと戦慄を禁じえないのだ。 一方で安易な「物語り主義」への批判のメスは辛辣であり、現実の報道関係者などは必読である。これこそが本書の冷徹な客観性のもつ意図なのだ。しかし仮に芸術家として弱者の目線に立てぬのならば、如何なる「愛」も語る資格はない。 理不尽な求愛行動に次第に崩壊していく主人公子どもを乗せた気球が上昇してしまう事故現場に偶然恋人のクラリッサと居合わせた主人公のジョー。その場に居合わせた人たちとなんとか気球を地面につなぎとめようとするが、1人がロープにつかまったまま気球とともに上昇、墜落死する。その夜、ジョーのもとへ現場に居合わせた男パリーから電話がかかってくる。「愛している」と。 見ず知らずの男から執拗に続けられる宗教的な求愛行動。手紙、見張り。まったくの理不尽な行動に当初、たいした危機感も抱かなかったジョーだが、次第のその理不尽さに内面から追い詰められ、生活さえも破壊されていく…。 次第に崩壊していくジョーの生活、理不尽さが次第に意味づけされていく過程がみごとに描かれていて、その手腕はみごと。読み応えのある小説だ。 イアン・マキューアンは密かに注目している作家の1人だが、納得の1冊。本書は映画化されていて邦題名は『Jの悲劇』。 |