全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅...

- 新潮社 価格 ¥ 820
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全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 820 円 / 361 円 より
発売日: (1996-11) アマゾン売上ランキング: 45614 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 5.0 / 総数: 8件

方言への熱意は郷土への愛
「アホとバカの境界線はどこにあるのか?」
そんな素朴な疑問に正面から答え、学問的にも高い水準まで突き詰めていった成果がこの書である。

もともとは関西が誇る深夜番組「探偵ナイトスクープ」に持ち込まれた視聴者からの質問である。著者はナイトスクープのディレクター。最初は単純に境目を探すが、中間にタワケの地域を見いだす。さらに全国津々浦々様々な「アホ・バカ」表現。その表現の豊穣さに魅了された著者は大々的な調査に取り組み、さらには言語学の領域にも挑戦し始める。

方言の分布と言えば知る人ぞ知るのは「蝸牛考」。
勿論、著者ものこの論文に遭遇することとなる。そして「アホ・バカ」表現こそ方言周圏論を実証する最高の素材であることに気づく。それはこれまでどの言語学者も取り組んだことのない未知の領域であった。

もともとテレビ業界の人間であっ著者が「アホ・バカ」表現にふれ、自己の知的好奇心と欲求に従い、その形成と分布の核心に次第に高いレベルの研究を成し遂げていく過程はドキュメンタリーとしても非常に楽しめる質の高い文章である。「アホ・バカ」表現の由来や分布についての専門的な部部の記述も知的好奇心をほどよく刺激するよい文章に仕上がっているように感じた。もっとも強力な分布を示す「アホ」「バカ」の由来がはっきりしないと言う結論が運命のいたずらのようなものを感じさせる。はっきりした文献も証拠もないので推論になってしまっているが、学術的な書物ではここまで情熱と愛情を込めて推論を記述するのは難しかったようにも思う。

テレビは、特に娯楽番組は低俗であると攻撃されやすいメディアである。それでも良質の番組であればここまで質の高い内容を扱うことができるのである。本書は良書であると言える。本書が良書たる基盤となったのはナイトスクープという優良な番組があってこそである。こういった成果を見るとまだまだテレビ業界も捨てたものではないという気がする。
「ことば」の伝播する速度は1年に1キロ。
 題名は実に「タワケ」た題名ですが、中身は「アホ」でも「バカ」でも、まして「タワケ」た内容でもありません。
 「ことば」の伝播の速度なんて、考えたことがありますか? また、その伝播の速度が地形に影響されているなんて、想像ができますか? 読み進めていくと、実にいろいろなことに気づかされ、教えられる本です。

 大学時代、国文科に学び、故平山輝男先生の講義を受けたことがありましたが、柳田国男の「蝸牛考」は実証不能の、おそらく「仮説」だと信じていました。

 ところが、完成された「アホバカ分布図」を見ると、そこには紛うことなく柳田国男の「方言周圏論」が実在しています。もうそれだけで知的興奮を抑えることが出来ませんでした。
 まず、完成した「アホバカ分布図」を、とくとご覧下さい。そして、興奮を抑えながら本文をお読み下さい。題名が「タワケ」た題名でも、中身が知的好奇心を刺激する読み物であることを必ずや実感できます。日本文学、日本語学を学んでいる人ならば、必ず一度は手にとってもらいたい、読んでもらいたい一冊です。










知的エンターテイメントの良書
本書はテレビ番組、探偵ナイトスクープの企画から始められた。
全国のアホ・バカといった人を貶す表現の境界線を探るところから始まった奥深い研究の成果である。
ハッキリ言って、無駄な内容だ。
そういった、一見無駄なものに情熱と労力を掛け、
知的研究へ発展させた著者に漢を感じる。
本書のような無駄で男気を感じる研究を見ることが出来、
私はほんの少し幸せもらうことができました。

本書は、柳田国男氏の「蝸牛考」まで出てくる、非常に知的で重厚な
内容であるにも関わらず、読みやすい。
これはひとえに、著者のエンターテイナーとしての才に負うところが大きい。
メディアのプロデューサーとして、非常に優秀なのだろう。
見るもの(読者)を意識した構成をなし、本書には索引まで付けている。

著者の活力には脱帽する。
非常に多くの文献を調べられ、深い知的探索を行い、
多くの示唆を得ている。まして学会に発表まで行っているのである。

ただし、どうしても残念な点が一つ。
沖縄の「フリムン」という表現の語源について解読する美談があるが、
この中で、次のような考えを語っている。

「フリムン」が差別用語を語源とするようであれば、放送を取りやめたい。

実際は著者の調査により差別用語とは異なることが判明するのであるが、
メディアの天才がこのような考え方であれば、非常に残念である。
まさに「臭い物には蓋」という考え方である。
影響力の大きい、メディアの制作トップとなる方が
このように考えられて、番組を制作している点が残念でならない。
真実を真実のまま放送することに良心を感じていないのであろう。
一般論として言われていた「都合の悪いことは放送しない」という
メディアの考え方をはっきり記載している。
やっぱりそうか、と思う反面、口惜しい。

そういった胡散臭さ、出来過ぎを感じるが、
総じて本書は読みやすく、素晴らしい完成度を誇っている。
電車の中で読み始めたら、止まらないかもしれない。

これこそ知的エンタティナメント!
探偵ナイトスクープという関西の長寿番組での、視聴者のちょっとした疑問。「バカとアホの区分ってどこからなの??」
それがここまで深遠な「日本語の言葉の分布と多様性」を知らしめることになろうとは!
初めてこの本を読んだときは、興奮して眠れませんでした。とにかく途中から、もう先が読みたくて読みたくて一気に読み続けてしまいます。
ある意味ミステリ。ある意味サイエンス。そしてエンタティナメント!
最終的に質問を受け付けていた教授から、学会で発表しませんか、とまで言われることになるという、その企画のころがり具合もおもしろいですし、さまざまな事実を膨大なデータから推測し、推理し、実証する、という学問の方法についても知ることが出来る本です。
一冊で何度もおいしいし、どんな本としても読める。その上、人様に薀蓄を垂れることも出来る。
関東から出たことがなく、関西に文化的劣等感を抱いている身としては、いろいろ目から鱗な内容でした。なぜか沖縄と東北に行きたくなります(笑)。
この本はズバリ「笑える柳田國男」だ!是非、読むべし!
数年前によんだのですが、実に面白かった!
以来、人に「何か面白いノンフィクションない?」と聞かれたときに
薦める本の一つになっています。先のレビューも書かれておられるよ
うに、モチーフは「アホとバカの方言の境界線を調べる」というもの
なのですが、その結果たるや実に深いものを含んでいたのです。
あまりの面白さにちゃんとした学会で報告するハメになるのですから、
単なるオチャラケ本ではありません。これぞ、エンターテイメントと
いえるのではないかと思います。よみ終える頃には、必ず柳田國男の
『蝸牛考』が読みたくなる筈です。勉強ってこんな風にあるべきだよ
なあ、これぞ知の快楽だよなあ、そう思える楽しい本です。