リセット (新潮文庫)

- 新潮社 価格 ¥ 620
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リセット (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 620 円 / 1 円 より
発売日: (2003-06) アマゾン売上ランキング: 39506 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 38件

時を超える愛
≪時と人≫シリーズ第3弾。
時をテーマにいろいろな描き方に挑戦しているので、シリーズ間の関連は無いので、
「スキップ」「ターン」「リセット」どの作品から読んでも大丈夫。
実際私も「リセット」を一番最初に読みました。

「リセット」は、輪廻転生しても相手を想い続けるピュアなラブストーリーです。

スキップが無情に時が飛ばされてしまう、図でいえば時が一方的に直線的に流れる話で、
ターンがひたすらその場でくるくる輪を描いている話とするなら、リセットは過去と繋がりながら
記憶という輪を描きながら先へ進むようなお話です。
スキップとターンを経た作者がたどり着いたひとつの形なんだろうなと思いました。

北村薫らしい優しくて繊細な静かに時間が流れているような奇麗なお話でした。
詩情溢れる戦前の女学生の描写 北村薫の見事な文才
「時と人」シリーズの第3弾ですが、『スキップ』や『ターン』のような緊張感や切迫感はなく、実にゆったりとした時間が流れている小説でした。戦前の芦屋に住んでいたお嬢さまの日常のように優雅な展開で、時にはまどろっこしく思う場面もあるでしょうが、これほど丁寧に戦前の女学生の心情を綴った小説は他にないと思います。

巻末に参考文献が列挙されていますが、丁寧な取材による描写がこの『リセット』の深い味わいをもたらしています。まるでその時代を生きた女学生がその時代を思い出して書いたかのような文章が北村薫の才能の表出でしょう。

戦前のドイツ映画「会議は踊る」の主題歌の♪denn jeder Fruhling hat nur einen Mai♪が通奏低音のように本編を貫いています。「だって、春に5月は一度しか来ないだろう」は第1部でも、第2部でも、そして第3部でも重要な場面で歌われます。実にキーワードのような歌でした。そしてこの曲によってそれぞれの記憶の渕からその繋がりを光明の様に見出すのです。

ザッパーの『愛の一家』にも登場し、本書でも重要な役割を果たす33年周期で見られる獅子座流星群もまた縦糸のように本書を貫いています。歯磨きも「まあちゃん」もフライ返しも東京オリンピックもまたすべて「リセット」に必要な狂言廻しのような存在です。このあたりの組み立てが実に見事で、ミステリー好きを唸らせる箇所でした。
愛の尊さを伝えた「彼のうちに、わたしも生きているのです」という言葉は泣かせます。

北村薫の「時と人」シリーズの3部作は見事な完成度を誇る作品群ですので、このシリーズの続編を望みたいものです。
悲劇的、かつ幸福
運命というものは、変えられないものなのか?
人の一生が、不完全にリセットされ、次にバトンが渡されるが、輪廻と転生とは、少し意味が異なる。

三部構成のこの作品は、様々な時代を映す。
第一部は、一人の女学生の眼から見た、戦前と戦中だ。
その表現は、驚く程冷静で、例えば、昭和20年6月の大阪大空襲ですら、さらりと描く。
凄まじい状況が、こんなに淡々と描かれているところが、かえってリアルだ。

興味深いのは、第二部の男子小学生の行動だ。
昭和30年代の物語だが、第一部と絶妙にリンクしている。
蜂の巣に、2B弾をぶち込むという下りは、特に面白く、おばさんに対する感情の露土は、良い場面だ。

第三部は、現代を舞台とした総括だ。
ここを読む限り、本作品は、あまり悲劇的には見えない。
フィクションではあるものの、生命の繋がりという、壮大な時間と空間を感じさせる。

微妙な感情の機微を交えて、繰り返される生命が描かれる。
故意に宗教色を排除しているとも考えられ、作品の中立性が保たれている。

不思議な読後感が後遺する。
愛は時を越える?
「時」をテーマにした「スキップ」、「ターン」に続く最終作品です。

「修一」と「真澄」が、どんな状況下で、どんな出会いをし、どんな生き方をしていたのか、特に戦時下という特殊な状況を作者は書いておきたったのでしょう。
非常に丁寧な描写がされています。

従って、第一部は、やや冗漫な印象を与えますが、読み終えてみると第二部、第三部と読者の気持ちを盛り上げていく為の構成であることが分かりました。

生まれ変わっても、尚愛し続ける、しかも生まれ変わったその相手が分かる...。

主人公と共に貴重な時の流れを経験できる一冊です。
しかも、色々と夢のある方向に思いを巡らせるきっかけを与えてくれます。

お互いに気が付いていなくとも前世も愛し合っていたカップルっているんでしょうね。

時を越えても愛し合える人を見つけた人って、どの位いるのかな?
みずみずしい青春
この作者の文章は本当に5月の青葉が日に透けるみずみずしさを感じさせる。作中にあるレコード一節が若い青春と時代の過酷さを上手く表現していると思う。時は廻り人は出逢う、でも春は一度きりなのだろうと切なくなった。