閉鎖病棟 (新潮文庫)

- 新潮社 価格 ¥ 580
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閉鎖病棟 (新潮文庫)


新潮社

価格(new/used): 580 円 / 1 円 より
発売日: (1997-05) アマゾン売上ランキング: 3396 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 33件

無垢な人々の優しさと切なさが
もう発売されたの14年も前ですが、本屋の店員さんオススメコーナーにあったので(^^;)
私、店員さんの書くポップとかに弱いんです・・・

原作者さんは今はどうか知りませんが現役の精神科医だそうです。
そしてこの小説の舞台も題名でも分かるように精神科病棟です。
最初はミステリーかと思って読み始めたのですが、病院に入院する人々や通院する人々の半生を描く群像劇でもあるしサスペンス的要素もありますが、全体的に無垢な人々の優しさと切なさが出ていて、胸を打たれるものがありました。

実際の現場はどんなものか分からないのだけど、一言に精神病といっても色々なものがあって、ほとんどが無垢な人々ではないかと思いました。
温かな人間ドラマ
とても丹念に描かれた「人間」ドラマです。
精神科病棟に入院する患者たち、その家族など周りの人間たちの過去や日常が、
ある意味とても素直に、偏見なく描かれています。
著者が精神科医ということもあるのでしょう。
この手のテーマの場合、患者に対して過剰に同情的になってしまったり、
必要以上に悲劇的に描き、センセーショナルにしてしまう傾向を感じたりするのですが、過剰さのない、淡々とした静かな展開に、
著者の人間を見る目の温かさを感じました。
もちろんもっと厳しい現実があるのかも知れませんが、
登場人物たちのそれぞれに降りかかる困難から逃げない力強さに、勇気づけられもしました。
読後、心に温かいものが残った気がします。
登場人物が使い捨てられてない!
どうしてこんなにやわらかい読後感が生じたのか、考えてみた。
得られた結論は、
「登場人物が多いのに、一人として、使い捨てられていないから」
というものだった。
登場人物が筋を進行させるためのロボットのように扱われている作品を読むと、読後感がすっきりしないときがある。えっ、このヒトの出番これだけ?このヒトにも自身のもっている過去や趣味嗜好、社会的地位や立場など、何かしらあるはずなのに。
この小説ではいっさいそれがなかった。登場する人には全員に何かしらの役割が与えられており、それが著者の、ひとりひとりの患者を大事に扱っている医師としての面を垣間見せる感じがして、じんわりと幸せな気分になった。
人間への公正な慈しみ
作者の優しい眼差しが至るところに現れています。もちろんそれは、弱者に対する無条件の甘い感傷ではなく、人間への公正な慈しみです。
慌しいストーリー、声高に叫ばれるメッセージ、そういうエンターテインメントではありません。作者の思いが、登場人物の日々の生活の中で暖かく描かれている、大変上質な大人の小説でした。だからこそ、かえって作者の思いが、じんわりと重く響いてきます。
・自ら精神科医であるからこそ抱ける問題意識の確かさ
・それを小説的表現とストーリーの中にくるみこむことの出来る作家としての力量
・人間を見る目の深さ、暖かさ
三拍子そろったすばらしい小説でした。
痛々しく優しい
タイトルから『白い巨塔』のようなドロドロの院内愛憎劇か『チーム・バチスタの栄光』のような医療サスペンスを想像し、裏表紙のあらすじを読んでなおその第一印象をガンコに抱いたまま、半ばそういうものを期待しつつ、読んだ。
最高の形で裏切られた。勝手な想像とは全く別物の、安易な想像をしてゴメンナサイと謝りたくなるような品位ある作品だった。奥付を見れば初版は平成9年、つまり11年間もこの名作を、存在を知りながら読まずにいたことになる。悔しすぎる。
主たる登場人物たちは皆「患者」であり、それぞれがそれぞれの物語を抱えながらも、「今」現在を生きている。その「今」は季節の移ろいや奇妙な生活習慣の中でやわらかい光と共に描かれている印象だ。もちろん問題や不安要素がないわけではない。光の中に、時にじわりと過去の影や、病気の闇、病院の抱える歪みが黒々と滲み出す。
患者たちは世間に見捨てられ、病院に押し込められたのだが、一方で患者自身が病院から外へ出ることを恐れてもいる。一歩病院を出れば、そこは彼らにとって光ある世界ではない。
事件は少女を救ったと同時に、チュウさんが自身で作り出した心の中の閉鎖病棟を開け放つ後押しをすることにもなる。
裁判の最後でチュウさんが秀丸さんに向かって叫ぶ言葉が胸に迫る。
魂と魂が触れ合うような、痛々しく、だが希望に満ちた優しい小説だ。