流転の王妃の昭和史 (新朝文庫)

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流転の王妃の昭和史 (新朝文庫)


新潮社

価格(new/used): 500 円 / 1 円 より
発売日: (1992-03) アマゾン売上ランキング: 93060 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.5 / 総数: 18件

時代に翻弄された流転の人生
関東軍の策略により、満州国皇帝の弟と政略結婚した浩さんの波乱万丈の半生が
綴られた自伝。平和な世の中に平々凡々と暮らしているわが身には計り知れない
辛酸を舐めてきた浩さんから発せられる言葉は、どんな小説の主人公よりも
重い響きを持つように感じた。

家族や友人もいない全くの異郷の地、満州に渡った彼女の心細さはいかほどだっただろう。
そして、戦後の逃避行の日々、夫の安否不詳、収容所送り、最愛の長女の死、
長い月日を経てようやくめぐってきた夫との再会の果てに待っていた文革の嵐。

この自伝を読んでいると、日中二つの国家の狭間で翻弄され続けた中国の残留孤児を
扱った山崎豊子氏の小説『大地の子』を思い出す。
浩さんも日本人であり、傀儡皇帝の弟妃であるために中国で大変な逆風と迫害に
耐えてこられたのだが、もっと貧しい身分の日本人孤児のたどった運命はさらに悲惨
なものだった。

戦後まもない中国は、日本人にとっては大変苦しい逆風・迫害の時代だった。
しかし、浩さんの自伝にも出てくるように、少数派でも、なかには日本人に救いの手
を差し伸べたり、国籍にとらわれず一人の人間として扱ってくれる中国人たちも
いたということは特筆すべきことかもしれない。

また、満州国宮廷での生活の様子や当時の日中相互の権力関係に興味が
おありの方は、最後の皇帝「溥儀」や后の自伝なども合わせて読むと、その
当時の時代背景がもっと際立って、見えてくるのではないかと思う。
流転の人生
8月になると何十年前のことだが戦争と運命について思うところがある。今の世にあって本当に良いときに生まれたと実感できるのは、こういう本を読んだときである、名家に生まれ何不自由ない生活のお嬢さんが異国で傀儡の王妃としての生活。そして、戦争末期の逃亡記。
まさによくぞ生き延びたというか運の強い人でもあるのだろう。

ただ、下世話な話であるが、皇帝の傅傑さんには4人の妾がいた。
浩さんの旦那にはそのようなことはなかったのであろうか。
第一婦人からした当時のこの風潮にあっての機微のようなものを
知りたいのだが。
・・・けっして失われない品の良さ
この手の自叙伝には作り話や自身の好都合の様な本が多いが、本当に浩さんのお幾つになられても、どんな状況下でも失われない素直さ、品の良さが出ている様に感じます。戦時下の略奪、強姦・・等々の話、娘さんの不幸な話が出てくるにも関わらず。

考えてみるに付け、政略結婚にも関わらず、溥傑さん、浩さんのお二人の愛が育まれた訳で、そういうお二人の御人柄を感じながら読むのが良い様な気がします。
お嬢様の目線の強さ
 愛新覚羅浩さんの自叙伝。映画化もドラマ化もされています。
 政略結婚で結ばれた溥傑さんと愛し合い、強い絆で結ばれた浩さん。満州国の消滅で中国大陸を逃げ回ることになりますが、そのあたりをお嬢様育ちの浩さんが結構シニカルな引いた目線で描写しているところが一番の見所。見たくないものも見ざるを得ず、書かずにいられない、というような迫力に満ちています。ところが無事に日本に着いた後は、浩さん自体が落ち着いてしまったのか、いきなりトーンダウン。長女の方の心中事件とか次女の方が中国で生活したがらないところとか、歴史と過酷な運命、国家と個人などを結構突き放して見られる浩さんが自分自身と家族に関しては、同じ切れ味の目線を向けられていないように感じました。ちょっと残念。
夫婦の愛情の深さに、涙が止まりませんでした。
旧満州国皇弟と政略結婚で嫁ぎながらも、夫婦間の愛情を貫いていく二人の生き方に感動しました。中国と友好交流をしている関係で、中国をよく訪問します。今の中国でも、愛新覚羅家は一目置かれる文人家系なのですが、その背景を知りたくて読んでみました。政略結婚といわれながら、暖かい家庭を作っていく二人。終戦直後の中国国内の混乱期、血統を隠しながら帰国。かつて映画やテレビでも拝見しましたが、娘慧生さんの事件などは、母としての気持ちを察しながら読むことができました。天城山中での心中の真相も、浩さんが語る事実から追っていくと、本当にお気の毒な気がします。夫・溥傑さんとの再会では、涙が止まりませんでした。沈着冷静な溥傑さんの生き様を通して、周恩来先生が配慮された理由や、国内で尊敬されている愛新覚羅家の格を感じることができました。現在でも、愛新覚羅家の方々は、文化活動などで大きく貢献されています。これは、夫婦の昭和史というよりは、中日両国の歴史を綴った貴重な書です。