ロートレック荘事件

- 新潮社 価格 ¥ 460
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ロートレック荘事件


新潮社

価格(new/used): 460 円 / 1 円 より
発売日: (1995-01) アマゾン売上ランキング: 14458 位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 18件

緻密に計算された文章こそがトリック
筒井氏によるこの作品は、ミステリーとしてカテゴライズされる。
しかしながら、この場合は懐疑的な姿勢より文学を耽読するような姿勢で臨まれることを推奨する。

総てを理解した後、再び最初から最後まで懐疑的に読むことは非常に有意味な作業だが、まずは素直にゆっくりと読み進めてほしい。

私は当初、本作をミステリーを読む姿勢で臨んだのだが、真相が明らかになるにつれてトリックや謎についてはどうでもよくなってしまった。

心情の機微がひしひしと伝わってくるのだ。特に、典子と二人きりで語りあうシーンは作中最も秀逸なシーンであり切なさに心が痛む。総てを了解した後では一層……

一字一句がトリックでもあり、文学でもある。この素晴らしさを読んで感じてほしい。
作者の自己満足
確かに凄いかもしれないが、面白くはないよね、これ

あぁ、筒井さん頑張ったんだな、書くの大変だったろうな、とは思うが、それ以上の感想はなかったです。

いちいち読み返して一文一文チェックして「おぉ!確かに矛盾してない!」って楽しむんですかね?

まぁでも皆さん感動してらっしゃるようなので僕が変なだけかもしれませんね
衒い
 「おれ、筒井康隆がミステリを書いてやろうではないか」という衒いが鈍い輝きを帯びて文章から伝わってくる。「おれがやるからには、普通のものを書いてはつまらない」との声が聞こえてくるような、まあ奇を衒ったトリックを仕掛ける。しかしながら、叙述トリック自体は古くからよくある手法で、さして新しいものではない。この作品に価値を与えるならば、SF畑の人がここまで完成されたミステリを仕上げてしまった(しかも真っ直ぐにミステリの設定で)という点にあるだろう。照れ衒い嘲笑がそこかしこから窺い知れる(そこが筒井の一番の魅力でもあるのだが)。作品を作者から切り離してみれば至って凡庸、取り立てて称揚するほどのことは無い。だが、筒井康隆に帰着して考えれば、その懐の深さに舌を巻いてしまうのも、また事実である。
絶対に2度読み返す作品
 ロートレック(その作品のいくつかは本書にカラーで収められている)は,13歳のときに左の大腿骨を,14歳の時に右の大腿骨をそれぞれ骨折したために脚の発育が停止し,成人した時の身長は140センチに過ぎなかった,という。酒に溺れ,36歳で死んだ。

 重樹も,8歳のころ滑り台から落ちて,下半身の成長が止まり,車椅子生活を余儀なくされた。その重樹が,友人らとともに招かれた通称「ロートレック荘」で,美女が次々と殺される・・・。
 初読時と再読時とでまったく違うストーリーが見えてくる(だからメタ・ミステリーか),騙され方が気持ちいい作品であった。是非一読(と再読)を勧めたい。
あっぱれ!筒井トリック
 
読んでいるあいだ中ずっと、モヤモヤを感じていた。
すべてを読み終えてもまだこの感覚は続いた。
理解できないわけではないが、スッキリとしないのだ。
更に解説まで読んで初めて「とんでもない事を読み落としていたのではないか」と気付き、最初から読み返す羽目となった。

不明瞭な点を確認するために作品を読み返すのは珍しい事ではない。
大抵はパラパラとページをめくり、ストーリーを思い出しながら重要な点を深く掘り下げて読む。
ところがこの作品では、一言一句たりとも疎かにできないのだ。
細心の注意を払いながら読み返していくと、出るわ出るわ、随所に散りばめられた筒井氏のトリック。
最初に読んだ時は、まったく気付かなかったのに...

こうして読んで気付くのは、気が遠くなるほどの推敲を繰り返し、最初から最後まで一句たりとも矛盾の無いストーリーを創り上げた筒井氏の執念深さである。
これほどまでに計算し尽くされた完成度の高い作品を、私は他に思い浮かべることができない。
翻訳して海外に紹介されても、必ずやこのトリックは絶賛されることであろう。
私は常々筒井氏を天才だと思っていたが、その天才のレベルの高さを再認識させられた。
多作の著者にあっても、屈指の傑作であると言いたい。

また、巻末の解説についても書き加えたい。
解説と言えば、作品そっちのけで自分の知識ばかりひけらかそうとする鬱陶しい物が多いが、この解説は素晴らしい。
トリックに気付くための鍵を示しながら、決して必要以上の謎解きをしない。
必要最少限をわきまえた節度ある解説に好感を覚えた。
この解説が無ければ、あれほどまで仔細に読み返さなかったであろうし、仔細に読み返さなければ、この作品の本当の価値を見出せなかったであろう。

蛇足ではあるが、いわゆる「差別用語」が多用されている点については、後の「断筆宣言」の背景を理解していただければ、著者の意図を読み取ることができると思われる。